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魂を半分喰われたら女神様に同情された? 作者:柚月 雪芳
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960 テンパると見落とすことがある

『ん?』

 今頃になって気付いたんだが。

『神官ちゃんが土下座してるぅ─────っ!』

 本当に今更である。
 ずっとこの状態だったのは想像に難くない。
 神官ちゃんといえども土下座を回避することはできなかった訳だ。

 間近であるにも関わらず今まで気付かなかったのが不思議なくらいである。
 それだけ俺がテンパった状態だったからなんだろうが。

『どうしてこうなった』

 今も確実にテンパっている。
 別件ではあるがな。

 お陰で感覚が麻痺しているのか罪悪感ゲージが上がってこない。
 ゼロじゃないんだが、いつもと違う。
 そのことが逆に情けなさを際立たせてくれたさ。

 灯台もと暗しという言葉では片付けられないからな。
 なんたって大事なゲストなのだ。
 放置するとかあり得ないだろう。

『皆、友達宣言しておいて薄情だぞ』

 そうは思ったが、皆の視線は俺に釘付けである。
 まるで俺が悪者になってしまったかのようだ。

 いや、放置状態に追いやったことを考えると他人事のように言うのは良くない。

『少なくとも責任の一端はあるよな』

 ならば手を打たねば。

 が、身動きが取れない俺にどうしろと?
 思考を鈍らせる羞恥心をどうにか押し退けつつ考える。

 結論はすぐに出た。
 両手は塞がってなかったからな。

 なるべく体の軸は動かさずに肩から先だけを大きく使って下を指差す。

「「「「「ん───っ?」」」」」

 上下する俺の指先に皆の視線が集まる。
 そうなれば地面の方にも目が行く訳で……

「「「「「あ─────っ!」」」」」

 ようやく気付いてくれたようだ。
 俺も人のことは言えないけどさ。

 ひれ伏したままピクリとも動かぬシーニュ。

「おーい」

 レイナが呼びかけるが返事はない。

「もしもーし。
 聞こえてへんのぉ?」

 アニスも呼びかけるが、やはり返事はなかった。
 普通に呼びかけたぐらいでは反応ひとつ見られない。

『ベリルママたちなら何か動きはあるんだろうけど』

 ただし、それが良い方に動くとは限らない。
 今よりも畏縮して酷いことになる恐れがある。
 神官ちゃんが主神だと思っていたラソル様より格の高いベリルママが来ているからね。

「いやー、大変だねぇ」

 他人事のように暖気なことを言ってくれる筆頭亜神様がいらっしゃる。
 俺がイラッとしたところで──

「ぐわあぁぁぁっ!」

 ラソル様が絶叫し始めた。

「ギブギブギブギィブゥ─────ッ!!」

 ルディア様にアイアンクローをお見舞いされたらしい。

「ギブだって─────っ!」

 全力で泣きを入れているがルディア様は無表情かつ無言である。
 ギブアップ宣言はスルーされてしまうようだ。

「ルディアちゃん、許し────────っ!!」

 馴れ馴れしい呼び方で許しを請おうとして失敗。
 許してと言いかけたところでメキッという音が聞こえた気がした。

 幻聴だと思いたい。
 音にグロさを感じるなんて夢にも思わなかったさ。

『メキメキなんて聞こえない。
 聞こえないったら聞こえない』

 現実逃避だろうが何だろうが、とにかく回避だ。
 こっちの頭まで痛くなりそうだからな。

 そんなことより神官ちゃんだ。
 これだけ大騒ぎしているのに面は伏せたまま。
 絶叫のたびにビクッと体を震わせはしていたんだけどね。

『こいつは重症だぞ』

 どうしたものかと思っていたら──

「アナタたち、ここが地上だということを忘れているわよ」

 ベリルママが亜神トリオたちに向かって注意をした。

「あ、すみません」

「申し訳ありません」

「やっちゃった」

 リオス様、フェム様、アフさんが気配を絞り込んでいく。
 それだけでガチガチに固まっていたシーニュの体から力が抜けていくのが分かった。

『そういうことだったのかー』

 ここにいるのは慣れている面々だけだから気付くのが遅れてしまった。

「さてと」

 ベリルママが動く。

「ぷはっ」

 俺もようやく解放された。
 【天眼・遠見】で確認するが、赤い顔をしている。
 窒息状態だったからということではなく、羞恥心によるものだ。

 幸いにして皆の視線は神官ちゃんに集まっている。
 今のうちに落ち着けば、気付く者も少ないだろう。

「シーニュ・ヴォレと言いましたね」

 ベリルママが呼びかけるとシーニュはビクッと震えた。

『まだダメか?』

 少しはリラックスできたかと思ったのだが。

「そう緊張しなくていいのよ。
 お話がしたいのだけど顔を見せてくれるかしら」

「……………」

 沈黙の間が続く。
 待つことしばし。
 恐る恐るシーニュが顔だけを覗かせた。

 肩をすくめ上目遣いだけどな。
 まるで雷か地震に怯える犬のように見えてしまう。

「大丈夫」

 フワッと笑みを浮かべるベリルママ。
 それを見たシーニュは呆気にとられたような表情になった。

 何をどう感じたのかは俺には分からない。
 だが、肩の力が抜けていた。

「そろそろ立ちましょうか。
 ここで座り込んでいるのはアナタだけよ」

 ハッとした表情を見せたシーニュがバババッと立ち上がる。
 顔を上げるときは何だったのかというくらい素早い動作だ。

「神様……ですか?」

「そうですよ。
 私の名前はベリルベル。
 この世界を管理することを任された管理神です」

「はい」

 返事はするものの、理解が追いついていないのは表情を見れば明らかだ。

「アナタが主神だと思っているのは私の筆頭眷属で亜神なの」

「え……?」

 シーニュにとっては驚愕の事実だったらしい。
 彫像かというくらい見事にビキッと固まってしまった。

『まあ、無理もないか』

 西方じゃ主神は太陽神だからな。
 それが管理神の眷属で神様一歩手前の亜神と言われてはね。
 お告げも何度か受けているのだし。

 おそらくショックは他の誰よりも大きいだろう。

「あそこで頭を掴まれてグッタリしているのがそうよ」

 ベリルママが見た先には持ち上げられダランと垂れ下がったラソル様がいた。
 促されるようにしてシーニュもそちらを見る。

「─────っ!?」

 声すら満足に発することができずに驚愕している。
 大きく見開かれた目が更に開かんとしていた。

 亜神として紹介された相手の情けない姿を見てしまうと更に衝撃的なようだ。

 ルディア様がここでようやくラソル様を解き放つ。
 どうにかといった感じでラソル様が地に足をつけた。
 そしてフラフラと酔っ払いのような足取りで振り返る。

「やはー、こうして会うのは初めてだねー」

 ラソル様が青い顔をしてヒラヒラと力なく手を振る。
 でもイケメンスマイルは健在だ。
 酷い二日酔いで無理をしているように見えるんだけどね。

「僕が君たちの言う太陽神。
 名前はラソルトーイだ。
 よろしくねー」

 相変わらずノリが軽い。
 本来なら爽やかに見えるところなんだが……

『どう見たって痛々しいよなぁ』

 俺がそう感じるということはシーニュも同様ってことだ。
 見れば、シーニュは普通に引いていた。

 ドン引きでないだけマシとは言えそうだが。

「すまんな」

 シーニュの引きっぷりを見てルディア様が詫びた。

「我が兄がふざけた態度をしたので罰を与えたのだ」

 ルディア様から説明を受けて、どうにか頷くシーニュ。

「兄……」

 そして呟いたのが、この一言だ。

『そっちに反応するかー』

「そう言えば名乗っていなかったな。
 我はルディアネーナ。
 汝らが月の女神と呼ぶ存在だ」

「っ!?」

 シーニュが息をのむ。
 インパクトはラソル様の時ほどではないが充分に驚愕しているようだ。

「実際は兄と共にベリル様の筆頭亜神だがな」

 ルディア様の補足を聞いても反応できないくらいには驚いている。

「あー、わてもよろしいでっか」

 そこに割り込んでくるエヴェさん。

「わてはエーヴェルトいうもんですわ」

「っ!?」

 シーニュがギョッとした表情になった。
 意外なことを知ってしまったと顔に書いている。

 正体に気付いてイメージとのギャップを感じてしまったというところか。
 狩猟神だと思っていた相手が、ちょいポチャ体型だとね。

「ハッハッハ、その調子やと気付いたみたいですな。
 あんさんが察した通りですわ。
 こんな身形してますけど西方じゃ狩猟神て言われてますねん」

「─────っ!?」

 更に目を剥いた表情になった。
 確証のなかった推測を肯定されたのがショックだったようだ。

「もちろん、神様やのうて亜神でっせ。
 わてもベリルベル様の眷属ですさかい」

 そしてシーニュが余裕を取り戻す間もなく亜神トリオが前に出てくる。

「ベリル様の眷属、亜神アフェールだよ。
 何か商売の神様って思われてるみたいだけどね」

「フェマージュ。
 魔法の神とされているが亜神にしてベリル様の眷属だ」

「私は亜神リオステリアです。
 豊穣の神なんて言われてますが、私もベリル様の眷属ですよ」

「…………………………」

 シーニュがフリーズしてしまっていた。
 一気に畳み掛けられたようになってしまったせいだろう。
読んでくれてありがとう。

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