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948 厄介で迷惑な状況

「こりゃあ、尋常じゃないな」


 男性陣は軒並みガクブル状態。

 爺さん執事などは失神するほど恐怖を感じていたというのに原因は不明。

 だってギガクイーンクラブは既に死んでいるんだぜ。


『死んでるぞ、死んでるぞ、死んでるのに殺気立つのかよぉー?』


 変な節をつけたオリジナルソングが頭の中でリフレイン。

 訳が分からなくて、おかしなテンションになっている。


 そんなことより原因を探して取り除かないといけない。


「「「「「陛下ー」」」」」


 トテテと駆け寄ってくる子供組。


「やっつけたニャー」


「討伐完了なの」


「終わったですよ?」


「「倒したの」」


 実に可愛らしい報告ぶりだ。


「おー、御苦労さま」


 おざなりにならぬよう全員の頭を撫でると御満悦である。

 とろけた表情で照れくさそうに笑っていた。


『なに、この可愛い幼女たち』


 YLNTな紳士たちでなくても「YesロリータNoタッチ!」と叫びそうである。

 いや、叫ばんけど。

 既に触れているし。


 そして、ずっとかまけている訳にもいかない。

 オッサン組をどうにか落ち着かせないとホストとしての沽券に関わる。


「どうしたのー?」


 俺がすぐに考え込み始めたのを見てルーシーが覗き込んでくる。


「んー?

 オジさんたちが怖がってるんだよ。

 それをどうにかしないといけないよね」


「そうなのー?」


 言いながら、今度は男性陣の方を見る。


「ホントだニャー。

 ガタガタなのニャー」


 ミーニャさんや。

 それだと足腰が弱っているように聞こえるぞ。


「みんな震えているね?」


 シェリーが不思議そうにオッサンたちを見ている。


「「緊急事態?」」


 状況によってはハッピーとチーの言う通りである。

 少なくとも異常事態ではあるのだ。

 もはや夕食どころではない。


「この付近の海に何かあるのニャ?」


 首を傾げるミーニャ。


「それはおかしいよ?」


 シェリーが同じように首を傾げつつも否定する。


「だって震えているのは男の人だけだもん」


「でも、何かあるのは間違いなさそうなの」


 ルーシーが逆に否定し直す。


『そこなんだよなぁ』


 何か原因があるのは確定的なんだが。

 とにかく動かねば原因は特定できまい。


 俺は自動人形たちに命じて引き上げ準備にかかった。

 重箱の回収がなされ、その間にカニの出現ポイントから船を離脱させる。


 それでオッサン組のビビりを解消できるかは怪しいところだ。

 が、それで解消できるならラッキーだ。


 できなくても原因特定のための判断材料になる。

 追加で魔物が来れば対処しなければならんし安全確保は基本だろう。


 それと期せずしてクラウドの食いしん坊モードをキャンセルできたが……

 どうやら素直に喜ぶ訳にはいかないようだ。

 現場から離れて行くにもかかわらず男性陣の症状は改善しなかった。


『場所が原因じゃない?』


 だとするとカニそのものが原因ということになる。


 が、奴らは既に死んでいるのだ。

 蘇生したということもない。


 拡張現実の表示をオンにして確かめた。

 HPバーは1ポイントだって残っていない。


『奴らのライフはもうゼロよってな』


 訳の分からない状況に苛立ちが募るせいかテンションはおかしなままだ。

 落ち着こう。

 カニは死んでいるのは間違いないのだ。


 ならばアンデッド化したのか。

 そういうことであれば恐怖を感じても不思議ではない。


 ただし、その場合は女性陣も同じように恐れを抱いているはずだ。

 生憎と微塵もその気配はないが。


『どうなってる?』


 混乱しそうになったが自分に落ち着けと内心で言い聞かせる。

 原因は場所ではない。


 食中毒ってこともない。

 それなら食事をした全員が症状を訴えるはずである。

 少なくとも女性だけを外すなんて芸当はできる訳がないからな。


 男だけに感染する食中毒菌があれば話は別だが。

 俺が除外されているのは並外れたステータスによる耐性があるとしてもね。


 それ以前にうちで用意したものは徹底した衛生管理がされている。

 そもそも食中毒になるはずがないのだ。


『ん? 男だけか……』


 妙な引っ掛かりを感じた。

 やはり原因はカニかもしれない。

 現時点でこれと断言できるものは何もないが。

 現物を見て確かめてみるべきだろう。


「ちょっと外に出てくる」


 俺はそう言い残して外へと向かった。

 足早にラウンジを抜けドアを開けて甲板上に出る。

 子供組だけが俺の後ろを並んでゾロゾロとついてきた。


 ゲストの女性陣が残ったのはありがたい。

 何かあった場合に対処できるとは思えないし。

 逆に俺たちの手間が増えることも考えられる。


 男性陣だけを残していくのも不安があるので丁度いい。

 一応、自動人形に対応を任せるからパニックを起こしても大丈夫だとは思うけどさ。

 安心感なんかは見ず知らずのメイドより、よく知る相手の方が上だしな。


『適材適所ってことだ』



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 甲板上に積み上げられたギガクイーンクラブが目の前にある。

 サイズがサイズだけに小山のようだ。

 ただ、特に感じるものがない。


『デカいな』


 それだけだ。

 オッサン組が震え上がるような危険物とは思えない。

 俺の感覚が鈍いのだろうか。


「さて、諸君」


 子供組に呼びかける。


「何か感じるかな?」


 全員が首を傾げる。


「妙な気配とか」


 フルフルと一斉に頭が振られた。


「嫌な予感がするとか」


 やはり頭が振られる。


『やっぱ、そうだよなぁ』


 俺の感覚が鈍いという訳でもなさそうだ。


「違和感とかは感じるか?」


 しばし考え込む子供組の一同。

 皆が考えている間に俺もチェックしてみる。


 俺たち以外の気配は感じない。

 嫌な予感はしないが、何かあるような気はする。

 何であるかは今のところ不明ではあるが。

 喫茶コーナーにいた時とは明らかに違うので気のせいではないだろう。


「違和感はあるようニャ無いようニャー」


 ミーニャは困り顔でそう言ってきた。


「何かあるような気はするのー」


 ルーシーがフォローするように言うと──


「そんな感じなのニャー」


 しきりに頷きながら言った。


「微妙な感じがするかなぁ。

 何だろう?

 分からないけど何かありそう」


 シェリーは顎に手を当てて思案顔である。


 そんな中でハッピーとチーは顔をつきあわせて何やら話し合っている。

 ただ、2人とも声を発していない。

 唇が動いているだけである。


 互いに読唇術を駆使して会話しているようだ。

 こんな時にも忍者であることを忘れていないようで……


 それはそれとして何か思い当たる節でもありそうな様子。


『それとも情報を整理しているのか?』


 少し待ってみることにした。


 が、すぐに俺の視線に気付いてこちらに向き直る。

 何故かビシッと直立の姿勢になって敬礼してくる2人。

 答礼すると手を下ろし口を開いた。


「「推理してみたです」」


「そうなんだ」


「「このカニが原因なのは疑いようがないです」」


「だろうな。

 コイツらが近づくにつれ症状が悪化してたから」


「だから提案するです」


 ハッピーがそんなことを言い出した。


「提案だって?」


「亜空間に収納するです」


 チーが答えた。


「なるほどな。

 それで症状が治まる可能性はあるか」


 さっそく試してみる。

 【天眼・遠見】で喫茶コーナーに残っている面々を見ながらだ。


「じゃあ、行くぞ」


 予告してから行動に移す。

 ギガクイーンクラブがまとめて目の前から消えた。


 中の面々からは見られていないはずだ。

 壁やドアによって隔たりがあるし。

 壁面モニターの映像は既にカットしているからな。


 そんな訳で亜空間への収納もササッと終わらせる。

 光魔法を使った演出みたいな必要もないので気を遣わずに済んで楽だ。


 とりあえずカニは倉の方へ入れてみた。

 これで男性陣が落ち着くなら手作業で解体してみるつもりである。


「ふむ」


 中の様子をスキルで確認しているとヴァンが最初に反応した。

 震えが止まり大きく息を吐き出している。

 他の面子も呆然としながらも震えはどうにか止まったようだ。


『どうやらビンゴだな』


 それを子供組にも伝える。


「当たりだぞ。

 症状が出なくなった」


「「「「「やったー!」」」」」


 全員でハイタッチしていく。

 もちろん俺も参加したさ。


『YesロリータHighタッチ! なんてな』


読んでくれてありがとう。

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