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949 解決したけど解決してない

 オッサン組がどうにか落ち着いた。

 ギガクイーンクラブを倉に隔離しただけの簡単なことで。


 それ自体は良かったのだが、原因が判明した訳ではないのは問題だ。

 隔離しただけでは解決したとは言わないからな。


『一体、何だったんだ?』


 あれこれ考えてみたが見当がつけられなかった。

 が、いつまでもこれに固執している訳にもいかない。

 そろそろ入港するしな。


 俺は【天眼・鑑定】スキルで確認してみることにした。


『答え合わせといこうか』


 何かありそうという、あやふやな解答しかしていないがね。


『……………』


 原因はすぐに判明。

 その瞬間に脱力しそうになったさ。


『あー……

 そういうことだったのか』


 こんなことなら、先に鑑定しておけば良かったと思うくらい単純である。

 カニの腹の中に古代のアーティファクトが収まっていたのだ。


[分類:古代アーティファクト]


 鑑定結果でそう出ているものだから間違いない。


 で、これにカニの体内を循環している魔力が勝手に流れ込んで起動したらしい。

 意図せず効果を発揮した魔道具でオッサン組は震え上がっていたことになる。


[アイテム名:姫将軍の護符]


 いかにもな名前のアイテムである。

 厨二心がくすぐられそうな感じ。


『どれ、効果のほどはどんなものかな?』


 鑑定結果の表示を読んでいく。


[効果:魔力を流すと一定条件下の男に恐怖を感じさせる]


『……………』


 効果の1行目がこれだからな。

 これを見た瞬間、腑に落ちたさ。


 女性陣が平気だった訳だ。

 効果対象が限られているなら当然である。


 すべての男となっていないので俺は該当しなかったのだろう。

 でなければレジストして気付いていたはずである。


 確認のために続きを読む。


[条件はレベル50未満であること]


 うちの国民は対象外だ。

 一安心でホッと胸をなで下ろす思いである。

 もっと条件のレベルが上だったらと思うと冷やっとしたのでね。

 タイミング次第では国民に被害が出ていた恐れもある訳だしな。


 そういう意味ではクラウドやカーターは不運で可哀相ではあるが。

 同情を禁じ得ない。


 ただ、あまり申し訳ないとは思わない。

 これが男女逆の効果を発揮する代物であったなら話は別だったが。


[効果範囲と強度は使用者の魔力に依存。

 なお、範囲内であっても強度に差がある。

 離れるほどに強度は落ちていく]


 納得の内容だ。

 先程までのオッサン組の様子に合致する。


[なお、レベル50ではレジスト不可]


『鬼畜だな』


 範囲内に入ったら必ず効果を発揮するなんてさ。

 いや、範囲ギリギリなら脱出はできるのか。

 姫将軍の護符のことを知っていて誰が使ったかを把握していればだが。


 そこで、ふと気付いた。


『レベル50未満の縛りってそういうことか』


 少しでもレジストする可能性のある相手に察知されないための対策だろう。

 レジストすると何かがあることに気付いてしまうからな。


 警戒されてしまえば原因は不明でも対応が不可能な訳ではない。

 広域魔法でいきなり攻撃なんてこともあり得る訳だし。


 それならば効果対象を絞り込んで気付かれにくくしようという発想のようだ。


『なかなか合理的だな』


 俺も鑑定になるべく頼らないようにしていたら、この様だったし。

 おまけにレベル50を超える西方人なんて多くはない。

 これは古代においても同じだったのだろう。


 ミズホ国の現状は例外中の例外だと思う。

 なんにせよ、これは大人数を対象にするアーティファクトな訳だ。


『戦争向きだよな、これ』


 戦場に出てくる女性は決して多くはない。

 が、女性だけの精鋭部隊がいたらどうだろう。

 アイテム名に姫将軍なんて入れるくらいだ。

 無いとは言い切れないだろう。


 むしろ最初から想定しているとも考えられる。

 そして戦場で使えばどうなるか?


 ギガクイーンクラブが意識せずに放っている魔力が流れただけでも、あの威力なのだ。

 本職の魔導師が使えば向かうところ敵なしとなるだろう。

 実際にそういう使われ方をしたかは不明だが。


[男は使用できない]


『そう来たか』


 護符の名前が[姫将軍の護符]というだけはある。

 俺の中にあるイメージ通りだ。

 弱い男が嫌いな女将軍って感じでさ。


[男がこれに触れた場合は魔力を吸い上げられる]


 まるでサキュバスだと思った。

 サキュバスが吸うのは魔力じゃなくて精気なんだろうけど。

 そのせいか姫将軍のイメージから離れるような気がした。


[また、同時に生命力へダメージを受ける]


 魔力の吸い上げなどより遥かに怖い説明文だ。


[傷を負う訳ではないので回復は困難]


 なんて文言があるからな。


[自然治癒はしない]


 魔法のみ有効ということのようだ。

 それだけならまだしも──


[一定以上のダメージを負うと衰弱死する]


 というのだから凶悪だ。


『ライフドレインで攻撃か』


 今度はヴァンパイアかと思ったさ。

 まるでノーライフキングのような護符である。


 そう考えると姫将軍のイメージも崩れはしないような気がする。

 ヴァンパイアのお姫様がライフドレインのついでに魔力も吸い上げるって訳だ。

 特撮なんかに出てくる悪の幹部っぽい。


[接触を続ける場合、このペナルティは継続する]


 しかも容赦がない。

 ますます悪役な感じがする。


 そこまで徹底している割に知能の低い魔物が使ってしまえるのはどうなのだろう。

 これの制作者は天才肌ではあるが詰めが甘いようだ。

 ぶっちゃけ、ウッカリな人物だと言わざるを得ない。


『まったく……

 迷惑なものを作り出してくれたもんだぜ』


 迂闊に倉から出すこともできやしない。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 結局、姫将軍の護符とかいうお騒がせアミュレットは魔法で分解した。

 流出の危険はなかったが気分の問題である。


『イベント最後の夕食にケチをつけてくれたからな』


 八つ当たりとも言う。

 ギガクイーンクラブの方は予定通りに解体。


 一部はお土産の食材としておいた。

 変なことに巻き込んだ詫びという名目だ。

 迷惑アイテムのことは説明できないしな。

 こんなのは公にするべきではないだろう。


「気にすることはないのだ」


「そうだよ、ハルト殿」


 2人の王はそんなことを言ってくれたがね。

 クラウドのオッサンが食べ物を前にして、そんなことを言うとは……


 唖然とさせられてしまったが【千両役者】で誤魔化した。

 その甲斐もあってか誰も俺の失態だとかは言ってこなかった。

 不可抗力だとは思うが、原因不明でよく納得したものだと思う。


 故に詫びの形にしておいた方が、お互いに気を遣わずにすむ部分もあるだろう。

 土産物が増えるということで恐縮されてしまったが。


「そういうことにしておいてくれ」


 俺がそう言うと苦笑されてしまった。


「せっかく珍しい魔物の肉が手に入ったんだ。

 なのに味わう機会が無かったからな。

 せめて土産にしないと持て成す側として失格になってしまう」


「そんなに旨いのか?」


 食いついてくるのは、やはりクラウドのオッサンである。

 苦笑を禁じ得ない。


「好みの分かれるところだが、これを嫌いだという人間は少ないぞ」


「ほほう!」


 ますます興味をそそられたらしく身を乗り出すようにして相槌を打ってきた。


「帰ってから味わってくれ。

 調理したものも渡すから」


 カニ玉と茶碗蒸しは外せないだろう。

 もちろん湯がいた肉をそのままというのも捨てがたい。

 カニだけでフルコースができそうだ。

 というか出来る。


 それだけしても1匹分を使い切れないからな。

 逆に1匹まるまるだと持て余すと思う。


 重箱の方の土産もあるから程々にしないといけない。

 それに土産が多すぎると気を遣わせてしまう恐れもある。

 難しいところだ。


「うむ、かたじけない」


 重々しく頷くクラウド。

 だが、ニヤケ面は隠せていない。


 隠すつもりがないのだろうか。

 食べ物がらみではポンコツになるオッサンなので何とも言えない。

 気付いていないとも考えられるくらいだ。


 それでも裏表がないせいか嫌な感じはしない。

 これも人徳と言えるのだろうか。


『単に食いしん坊なだけだろ』


「何から何まで済まないね」


 カーターは少し恐縮気味である。


「気にすんなって」


「いや、しかし……」


 この調子だと返せるものがないとか言い出しそうだ。


「野暮なことは言うなよ」


 釘は早めに刺しておく。


「友達を持て成したいと思った。

 それだけなんだからな」


「ハルト殿……」


 カーターが涙ぐむ。

 感極まったらしい。


『おいおい』


 いくら何でも大袈裟だ。


「できる範囲で、できることしかしていない。

 無理なんかしていないから気にしなくていいんだ」


 カーターの涙腺崩壊を阻止しようと言ってみたのだが……


「いいやっ、気にする」


 カーターが笑いながら泣き出してしまった。


「友達だからねっ」


 泣きながらドヤ顔されてしまったよ。


読んでくれてありがとう。

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