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882 昼食時の話題が3人娘を追い詰める?

 昼食は予告したように弁当だ。

 とはいえ和風ではなく洋風だったけどね。


 俺は米推しだけど絶対って訳じゃない。

 今回は手早く済ませられることを重視してサンドイッチにした。


「パンが柔らかいっすぅ」


 とろけそうな表情でローヌが最初の一口を噛みしめている。


「ローヌっち、それはもう分かったって」


 ナーエが聞き飽きたと言わんばかりにツッコミを入れた。


「いやいや、何度でも言いたくなるのだよ」


 反論するローヌ。

 夢見心地な表情はそのままだ。


「ナーエっちもそう思わない?」


 それに賛同するように問いかけるライネ。

 ローヌに負けず劣らずのウットリ状態である。


「気持ちは分かるけどさー。

 柔らかいだけじゃないでしょーが」


 フンスと鼻息荒く言い返している。

 ただし、ナーエもにやけた顔をしているので迫力はない。


「もちろん中の具材も旨いっすよ。

 体の底から力が湧いてきそうな感じだもんね」


「だよねー」


 ローヌの言葉に頷くライネ。


「3姉妹の食堂も美味しかったけどぉ……」


「これを食べると何か違うって思うよね」


「あー、それは私も思う思う」


 2人の言葉にナーエも頷いて応じた。

 大事なことだからの法則を知っている訳でもないだろうに「思う」を繰り返している。

 よほど気に入ってくれたようだ。


「3人とも単純比較してはいけない」


 ウィスが3人娘の会話に割り込んできた。


「「「どういうことっすか?」」」


「なによー、3人とも分からないのぉ?」


 ジニアも入ってくる。


「そんなに難しいことじゃないぞ」


 フィズもだ。


「ううっ、劣勢っすよ」


「自分たちだけが分からないってことっすかー」


「単純比較って言われてもー」


 泣き言を言いながらも食べる手は止まらない。


「食堂は味付けがシンプルだった」


 ウィスの言葉に3人の手が止まる。

 一瞬だけだったが。

 すぐにムシャムシャと手にしたサンドイッチを食べていく。


「言われてみれば色んな味が絡み合った感じがするっすね」


 咀嚼しながら食べかけのエビフライサンドを見るローヌ。


「食堂はザ・塩って感じだったっすよ」


 その点については絞りすぎだと思う。


「こっちは色んな調味料が使われてるっすよ」


 具材によって使い分けているからな。


 今3人が食べているエビフライはタルタルソース。


 ツナにはマヨネーズ。

 俗に言うツナマヨだ。


 サラダ系にはサウザンドアイランドソース。

 トマトとレタスの野菜サンド。

 ハムとレタスのハムサラダ。

 タマネギとレタスのオニオンサラダ。

 他にもいくつかバリエーションがある。


 トンカツには専用ソース。

 コロッケには中濃ソース。

 メンチカツにはウスターソース。


 中には調味料ごとの味が楽しめる具材もある。


 唐揚げだと塩と、だし醤油。

 卵は塩とケチャップとサウザンドアイランドソース。

 こんな具合だ。


 差があって当然である。

 3人娘も今更ながらに気付かされたようだ。


「それで、あの味は凄いのでは?」


「塩味だけで本当に旨かったっすからね」


「あの食堂の料理人さん、凄かったんだ……」


 しみじみした感じになっていた。

 それでも食べ続けてはいたけど。


「それだけじゃないわよ」


「「「えっ!?」」」


 フィズの言葉にようやく3人娘の手が止まる。


「まだ何かあると?」


「分かる?」


 ナーエが自信なさげにローヌとライネに問う。

 こんな聞き方をするのだ。

 気付いてはいないだろう。


 そして、それは問いかけられた2人にしても同じだった。

 3人で顔を見合わせ首を傾げながら肩をすくめる。


「使われている食材だよ」


 フィズはあっさりとネタバレした。

 まあ、クイズ番組ではないからな。

 勿体ぶる意味がない。


「弁当のは選別されたものが使われている」


「食堂のはありふれたものを中心に使っていたからな」


 ウィスやジニアも気付いていたようだ。


『意外にグルメなのが多いな』


 何処で舌を鍛えたのか謎である。

 生まれつきという線もあるだろうがな。

 ただ、同じパーティに3人もいるのは多い気がする。


「確かに肉なんかは噛み応えが違うっすよ」


「野菜の味なんかも違う気がするっす」


「気がするんじゃなくて確実に違うっすよ」


 呆然とした様子の3人娘にフィズが苦笑する。


「単純比較しちゃダメって分かった?」


 ウンウンと首を縦に振る3人娘。


「これは大変っすよ」


「何がよ、ローヌっち?」


 ナーエが何を言っているのか分からないと問いかける。


「外に出た時のことじゃないかな」


 ライネが推理したことを口にする。


「外?」


 怪訝な表情を浮かべたナーエが次の瞬間には何かに気付いたような表情になっていた。

 ローヌとライネがそれを見て頷く。


「これだけ食事に格差があるとねー」


「そうそう」


「あー、そっかー」


 2人の言葉を受けてナーエも気付いたのだろう。

 上を仰ぎ見るようにして溜め息をついた。


「この国の食事に慣れちゃうと後が怖いのね」


「「そーゆーこと」」


 2人の返事にナーエが肩を落として落胆した。


「外国の食事が食べられなくなりそうだわ」


 ナーエが弱音を吐いた。


「御飯が美味しいのも考え物よー」


 ローヌが追随する。


「絶対に空間魔法をマスターするっすよ!」


 拳を握りしめてライネが力強く語る。

 その姿を見てローヌもナーエも首を傾げる。


「どうしたのさ、ライネっち」


「今はとにかく制御力の向上が課題だって言われたじゃないのさ」


 怪訝な表情を浮かべる2人にライネがビシッと指を突き付けた。


「美味しいものを亜空間倉庫に常備しておけばいいんすよ!」


 ドヤ顔で自説を披露するライネ。


「「おおっ!」」


 2人は仰け反るように驚きながらも感心している。


「それはナイスアイデアっすよ!」


「是非とも習得するっす!」


 妙なところでモチベーションをアップさせた3人娘であった。


 些か動機が不純な気がしないでもない。

 まあ、目くじら立てることでもないだろう。

 俺としては、こんなことで早く成長してくれるなら大歓迎である。


 しかし……


「何がナイスアイデアよ。

 その意気込みを他のことにも向けなさい」


 パーティのリーダーであるフィズは注意したくなるようだ。


「少しは料理くらいできるようになりなさいな」


 フィズの発言に頷くジニアとウィス。

 もっともだと言わんばかりである。


 この様子だと、彼女らはそれなりに料理ができるようだ。

 それもあっての先程の指摘なのかもしれない。


「「「えーっ」」」


 母親に小言を言われたような顔をする3人娘。


「亜空間倉庫に常備するにしても限度があるでしょ。

 長期間、補給できない状況が続いたらどうするつもりよ」


 もっともな指摘である。


「「「うっ」」」


 たまらずといった様子で3人娘はたじろいだ。


「そういう時に材料を現地調達して自分で美味しいものが作れたら、いいと思わない?」


「それはぁ……」


「そうだとぉ……」


「思うけどぉ……」


 3人娘が唇を尖らせ気味にして抗弁しようとする。

 その姿を見ていると小学生くらいの子供のように思えてきた。

 もちろん、3人とも成人済みなんだが。


「言い訳しないの」


「そうだぞ、料理ができて損はないからな」


「むしろ得」


 フィズ、ジニア、ウィスの3連コンボが決まった。


「「「へーい」」」


 渋々ながらも3人が了承した。


「それじゃあ、さっそく今晩から頑張ってもらいましょうか」


 フィズがニッコリと微笑んだ。


「「「え─────っ!?」」」


 大きな声で驚く3人娘。

 周囲の皆が何事かと振り返った。


「あ、なんでもないっす……」


「すんませーん……」


「お騒がせしましたっす……」


 注目を浴びた張本人たちは謝りながらしおしおと小さくなっていく。

 明らかに自滅なので誰にも文句は言えない。

 逆に責められてもおかしくはないのだ。

 誰も咎めるようなことは言わなかったがね。


 何だろうという感じで首を捻りつつも食事に戻る一同。

 視線が外れはしたものの、3人娘たちはしばらく縮こまったままだった。

 顔を真っ赤にして身悶えている。


 そこから復帰するために落ち着きなく周囲へ視線を彷徨わせていた。

 まさにキョドっている状態。

 その確認が終わると、ようやくオドオドした感じが無くなった。

 大きく安堵の溜め息を漏らす3人。


「「「ううっ、はずかしかったー」」」


「自業自得」


 すかさずボソッとウィスが呟いた。


「それだと足りないわね」


 フィズが不服そうに言う。


「そうそう、こっちまで被害を受けたんだし」


 ジニアも3人娘をジロリと睨んだ。


「手厳しいっす」


「的確すぎっす」


「返す言葉もないっすよ」


 ショボンと肩を落とすしかできない3人娘であった。


読んでくれてありがとう。

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