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877 ようこそ、ミズホ国へ『ジェダイトシティ・前編』

「ようこそ、ここから先が本当のミズホ国ですよ」


 門衛の言葉に女子組一同が目を瞬かせた。

 その様子に門衛たちが微笑ましい感じの笑みを向けている。

 微妙にドヤ感もあるようだ。


 思わず溜め息が漏れそうになった。


『しょうがないなぁ』


 気持ちは分からなくもない。

 内壁の内と外では色々と明確に違うからな。


「中に入れば分かることだ」


 俺はそう言い置いて開かれた門扉の中に入っていく。

 皆もついて来た。

 短い通路になっていて、すぐに行き止まりとなる。

 目の前には先程と同じ形の門扉があった。


 ただし、明確な違いもある。

 それを初見で見抜けるなら大したものだが、誰も気付いていないようだ。


「もひとつ扉があるっすよ」


「閉まってるっすね」


「厳重っす」


 3人娘は台詞とは裏腹に楽しげだ。

 ワクワクしているといったところか。

 国民となって初めて潜ろうというのだから期待するのは当然か。


「この扉はどうやったら開くのですか?」


 フィズが聞いてきた。

 通路の中に門衛はいないからな。

 疑問に思うのも無理はない。


 が、俺が答える前に背後で門が閉まり始めた。


「うわっ、こっちの門が閉まるっすよ」


 ローヌが慌てた様子を見せていた。

 閉じ込められることを懸念したのだろう。


「暗くならないっす」


 ナーエがソワソワした感じで周囲を見渡した。


「照明の魔道具があるっすよ」


 ライネが通路の天井を指差した。


「ホントだ」


「凄いね」


「こんな場所で高価な魔道具を使うなんて……」


 女子冒険者たちも天井に設置された照明を見上げて呆気にとられている。

 そうこうするうちに背後の門扉が完全に閉じられた。


「閉まったっす」


「どうなるっすか?」


「前の扉が開くんすかね?」


 3人娘たちも落ち着きを失っていた。

 感覚的には閉じ込められたようなものだからな。

 取り乱すというほどではなかったが。


 他の面々も似たようなものだ。

 平気そうにしていたのはフィズ、ジニア、ウィスの3人のみである。

 次の瞬間、前の門扉が両サイドに開かれていく。


「「「「「ああっ!」」」」」


 想定外の開き方だったせいか、全員が驚き固まっていた。

 まるで石化の魔眼を持つ魔物に睨まれたかのようだ。

 それほどのインパクトがあるとは俺にも想定外だったが。

 デザインが同じ扉なのに開き方が変わると違和感を強く感じるというのもあるだろう。


 今までの国民は、色々な知識を持った状態でこの門扉を見ているからな。

 知識のあるなしで違和感の程度も変わるようだ。


 結局、門扉が開ききるまで誰も言葉を発せずにいた。

 開ききってもと言うべきだな。

 俺が門を潜ると、ついて来たのはウィスだけだった。


『そんなに?』


 そこまで衝撃を受けていることに不安が湧いてくる。


「まさか、まだ土下座するんじゃないだろうな?」


「そこまでではないと思う」


「いや、まだ本番じゃないんだよ」


「そんなに凄いのがある?」


「ここじゃないけどな」


「もっと奥に?」


「いや、王都だ」


「おー」


 感動したと言わんばかりに目を見開くウィス。

 無表情系なので、そんなに大きく見開いている訳じゃないけど珍しい表情だと言える。


「楽しみ」


 未知のものをそう言えるとは大物である。


「そう言ってくれるのは嬉しいが、明日以降にした方が良さそうだ」


 俺がそう言うとウィスが首を傾げた。


「そんなに近い場所に王都が?」


「近くはないぞ。

 遠くの果てにある島だからな」


「島……」


 ウィスの目が右に左にと揺らめくように動いた。

 己の記憶を掘り下げているらしい。


「っ!!」


 そして思い至った結論に先程とは比べようもないほど目を見開く。

 いつもの倍以上の大きさになったのではと思わせる瞳がショックの程を感じさせた。


「魔人の島」


 情報収集が得意なウィスらしく知っていたようだ。

 彼女の様子からすると魔族が跳梁跋扈していたことも掴んでいると見ていいだろう。


「そっちは王都じゃないな」


 否定するとウィスが珍しく嘆息した。


『安堵したところ悪いんだがな』


「そっちは2番目に領地とした場所だ」


 事実は告げねばならない訳で。


「─────っ!!」


 声にはならなかったが、卒倒しそうなほどウィスが驚いている。


「今は魔人の島じゃなくてヤクモだからな」


 新しい地名を言ったところで、その衝撃が消え去るものでもない。


『ウィスでこれなのか』


 他の面子に聞かれなかったのは幸いと言うべきだろう。


「いや、驚かせてすまんな。

 事情があって魔人の島は無人の島になってたんだよ」


 疑いの視線こそ向けられなかったが、ウィスの中から衝撃が抜けたようには見えない。


「心配しなくてもいい。

 神に誓って絶対に魔人は戻って来ることはないから」


 驚きを露わにした目で見られてしまう。


『これで女神が俺の母親だって言ったらどうなるんだろうな』


 それを考えて気が付いた。

 近いうちに土下座を見ることになりそうだと。

 秋祭りで顔を合わせることになるのは間違いないから。


 矛先を向けられるのが自分でないお陰で多少は気が楽なんだが。

 それでも相手は母親である。

 見ていて気分のいいものでもない。

 ベリルママたちの困った顔を見ることになるのはね。


「神に誓って?」


 ウィスが聞き返してきた。


「そうだよ」


 俺は間違いないということを示すために大きく頷いた。


『西方とは違う神様だけどね』


 そのあたりを説明し始めると時間がかかってしまうので、とりあえずパスした。

 この判断が功を奏したようで、どうにかウィスが落ち着きを見せる。


「じゃあ、行こうかね」


「皆は?」


 未だに固まったままの一同を見るウィス。

 俺は効果の切れたバフを掛け直し──


「早くしないと門扉が閉じるぞ」


 そう呼びかけた。

 このコンボはさすがに効き目があった。

 閉じ込められることになるからな。

 ワーキャー言いながら飛び出してきた。


「脅かさないでくださいっす」


「閉じ込められるのは勘弁してほしいっす」


 ローヌやナーエが抗議してきた。

 が、自業自得だと思う。


「危なかったっす」


 ライネが安堵の溜め息を漏らした。

 門扉が閉じるのを目の当たりにしたからなのは言うまでもない。

 通常は人が残っている状態で閉じたりはしないのだが。


『言うのはやめとこう』


 同じようなことが続くのは面倒だからな。


「さて、じゃあ集まって」


 皆に声を掛けるとバラバラな場所に立って辺りを見回していた面々が集まってきた。

 整列という感じはしないが、そのあたりは訓練した訳じゃない。

 同郷出身とはいえバラバラのパーティだしな。


「次は何処に行くっすか?」


「何をするっすか?」


「あそこに見えている城には行かないっすよね?」


 3人娘の好奇心はつきないようだ。


「次に行く場所は食堂だな。

 そろそろ昼食の時間だろう」


 俺の言葉に皆の瞳の輝きが大いに増した。

 バスの中であれこれと食事の話をしたからだろう。

 まだ見ぬ道の料理に期待している訳だ。


「ちなみに昼食の後は城に行くぞ」


「「「「「ええーっ!?」」」」」


「そこで宿泊して明日は王都ミズホシティに行くからな」


「どどどどうして私らが城で宿泊するんすかっ!?」


「「そうっすよっ」」


 ローヌの言い分にナーエやライネが同意して激しく頷く。


「だって内壁の内側に宿屋なんてないぞ」


 無いものは無い。

 身も蓋もないが事実である。


「大勢で寝泊まりできる施設なんて城にしかないから」


 皆も納得せざるを得ない。


「「「じゃあ、しょうがないっす」」」


「切り替え早っ!」


 3人娘は納得しているが、女子冒険者たちは戸惑い気味だ。


「いやー、お城なんて一生縁がないと思ってたっすよ」


「楽しみっす」


「ワクワクするっす」


「軽っ!」


 俺のツッコミなど聞こえていないかのごとく3人娘は盛り上がっている。


「昨日の宿屋よりも凄いんだろーなぁ」


「なに言ってんの、ローヌ。

 宿屋と比べる方が間違ってるって」


「そうだよ、ローヌ。

 お城なんだよ、お・し・ろっ」


「しょうがないじゃなーい。

 お城なんて、こんな間近で見たのすら初めてなんだからー」


「言えてるぅ」


「確かにー」


 他の女子組はこのノリについて行けない様子である。


「いつものことです」


「前向きだと思ってください」


 フィズとジニアが申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。

 女子冒険者たちもそれに続く。


「いや、謝ることはないと思うぞ」


 端で見ていると疲れるけどな。


読んでくれてありがとう。

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