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844 あれこれ質問された

「それで仕事の内容なんだが……」


「聞いてない人たちがいますよ」


 ベルに指摘されるまでもなく妻組が全滅状態である。

 妻組がキスの話題で盛り上がっているせいだ。


 20人もいれば姦しいなんてものじゃない。

 諺の6倍を超えている。

 後1人で7倍だ。

 妻が増える予定はないけどね。


 誰だ? 予定は未定とか言ってるのは?

 否定はしないけどさ。

 何となくだけど増えそうな気がするんだよね。


「このままだと、しばらく無理なんじゃないでしょうか」


 ナタリーが少し呆れ気味である。


「なぁに、話を聞かせる方法は簡単だ」


「「どうするんです?」」


 俺は聞いてきた婆孫コンビをチラリと見やった後、妻組に呼びかけた。


「俺の話を聞かないならチューは無しな」


 一瞬で静まり返った。


「凄いですね」


「まさか、これ程とは……」


 婆孫コンビが驚いていた。

 ベルは楽しげだが。

 ナタリーは目を見開いて呆気にとられている。


 そして、やおら俺の方を見ると──


「「愛されているのですね」」


 ピッタリとハモりながら言われてしまった。


「でなきゃ結婚なんかしないって」


 お互いに好きだから結婚した。

 約1名は婚約状態でまだ結婚するには至っていないが。

 まあ、それは年齢的な問題でしかない。


 どちらかの片思いであるなら俺は結婚しない。

 無理強いはしたくないし、されたくもないからな。


 だからこそ現在の状態は予想外だったんだけどね。

 この人数に好かれるとは思ってなかったし。


「とにかく、だ」


 俺は強引に話の流れを元に戻す。


「皆には、これらの魔道具をダンジョン内に設置してもらう」


 スッと手が上がった。


「リーシャか、どうした?」


「質問があります」


「何かな?」


「学生にも仕事を割り振らないのですか?」


 浅い階層なら対応可能な者たちもいる。

 ベルやナタリーのようにな。


 ただし、この2人は俺の監視下でのみ作業をすることになる。

 ベルの暴走を防ぐのがメインの目的だからね。


 それ以外の学生を今回の仕事に従事させるつもりはない。

 なぜなら──


「国民以外の冒険者に設置するところを見せたくないからだ」


 レベル2桁の学生だと、その辺に不安がある。


「何故ですか~?」


 ダニエラが首を傾げながら聞いてきた。

 それだけで、ゆさりと揺れるのは反則だ。

 別に露出の高い服を着ているわけじゃないんだが。

 自由時間なら眼福なんだが、仕事中は目の毒でしかない。


 え? 何が揺れるかだって?

 そこは察してくれ……


「今は試作の段階だからな。

 試験運用中に設置方法が変わる可能性もある」


「変わっても問題ないのでは?」


 今度はルーリアだ。


「できるだけ余分な情報は与えたくない。

 試験運用終了後は冒険者ギルドに売ることになるからな」


「「設置には関与しないってことですか?」」


 メリーとリリーが聞いてきた。


「それはしない方が無難。

 未だに訪れていない国の方が多い現状では特に」


 俺が答える前にノエルがボソッと呟いた。


「ノエルの言う通りだな。

 すべての国が友好国になるとは思っていない。

 友好国以外と設置のために交渉するとかシャレにならんぞ。

 だったら国とは中立の立場にある冒険者ギルドに任せた方がいい」


「おおー、なるほどです。

 その方が遥かに効率的です」


「冒険者ギルドなら労働力の確保にも困りませんし」


 双子も馬鹿ではない。

 思考のための材料を与えれば考える。


「なにより西方のすべてのダンジョンに設置しに行くのは大変です」


 メリーがそう結論を出した。

 リリーもうんうんと頷いて同意している。


「他に質問は?」


 アンネが手を挙げた。


「これらの仕様を聞いていません」


「見たところ2種類あるようですが」


 アンネの発言にベリーが補足している。


「片方はダンジョン内を照らすライトだ」


 言うと同時に幻影魔法で設置後の作動状態のシミュレーション映像を流した。

 言葉だけではイメージが伝わりにくいだろうからな。


「「「「「おおーっ」」」」」


 割と驚かれるみたい。

 俺としては、そこまで驚くようなことかと思ったんだけどね。


 日本人組も驚いていない。

 このあたりはゲームなんかで暗くないダンジョンに慣れているからだろうか。

 そうでない皆にはダンジョン内が見渡せるほど照らされるのは相当ショックらしい。


「まるで高速道路のトンネルの中みたいだね」


 そんな感想を漏らしたのはミズキだ。

 このあたりは日本人的感覚だなと思う。


「明るさが違うみたいだけど?」


 目敏く違いに気付いたマイカがどういうことかと目を向けてきた。


「それは深い階層に行くほど暗くする仕様にしているからな」


「ああ、そういうこと」


 フンフンとミズキは頷いた。


「確かにすべてのダンジョンの全階層にライトを設置するのは無理があるわね」


 最後まで説明しなくても分かってくれたようで何よりである。


「もう片方の魔道具もダンジョン内で使うんですよね?」


 フェルトが聞いてきた。


「それはダンジョン内でのみ有効となる転送機だ」


「「「「「ええ─────っ!?」」」」」


 ライトの時よりも驚きの度合いが強い。

 今度は日本人組も驚いている。


「ハルトはん、ええんかいな!?」


「こんなの広めたら大騒ぎよっ」


 アニスとレイナが前のめりでツッコミを入れてくる。

 それこそドサクサ紛れにチューでもしてくるのかってくらいドアップで迫ってきた。


「はいはい、仕事中だからねー」


 2人の顔を両手で押し退ける。

 同時にリーシャとダニエラに羽交い締めにされていた。


 ダニエラに羽交い締めにされたレイナが羨ま……

 いや、何でもない。


『色即是空空即是色、煩悩退散だっ!』


「皆が驚くのも無理はない。

 だが、冒険者の死亡率を下げる方法を模索した結果だ」


 俺がそう言うと皆は静まり返ってしまった。


「トラブルがあるなら、それに応じて対応を考える。

 もちろん、状況によっては即時撤去もありえるだろう」


「もしそうなったら不評どころの騒ぎじゃなくなるわよ」


 マイカが不機嫌な表情を隠そうともせずに忠告してくる。

 とはいえ、それくらいは俺も想定済みだ。


「確かに最悪の状態だろうな。

 けど、誰が設置したか分からなきゃ矛先はこちらには向かないぞ」


 それもあって腕利きに招集をかけたつもりだ。


「片手間って言ってた割に責任重大じゃないのっ」


 マイカさんがブリブリ怒ってらっしゃいます。


「待って、マイカちゃん」


 歯をむき出しにして犬のように威嚇してくるマイカを制するミズキ。

 さすがは幼馴染みどうしと言うべきか。

 マイカの猪突猛進な文句アタックが止まった。

 内心では不服を抱えているだろうがね。


「それよりも冒険者ギルドに矛先が向かうんじゃないかしら」


 ミズキの言う通りである。

 それが狙いなんだけどね。


「向けたとしても、そういう連中は一握りだ」


 冒険者ギルドなしに冒険者が活動を続けることなどできない。

 暴力的に営業妨害するなら冒険者の資格を失効して永久追放となるだろう。

 それが分かる冒険者なら端っから文句など言わないはずだ。


「そっかー……

 私らが矢面に立つよりマシなようね」


「そういうことだ」


「はいはーい、質問質問」


 何故かは不明だが、やたらとノリノリなトモさんが次の質問者となった。


「何かな? トモさん」


「ライトとか誰が設置したかバレバレだよね?」


 設置直後から光るのは製品版の仕様である。


「試作品はロックしてあるから、設置しただけじゃ光らないよ」


「なんとぉーっ」


「解除は時限式にしてある」


「では何時間かたてば動くわけだね」


「そういうこと。

 ちなみに60時間後だ」


「長っ」


 短いツッコミだが、皆も同じように思っているようだ。

 一斉に頷かれてしまった。


「あと、半端な時間に動き始めるわね。

 動作開始は真夜中になるじゃないの」


 長いツッコミはマイカである。


「細かな仕様や設置ポイントなどについてはメールで送っておいた。

 各自の割り当てなどもあるから目を通して把握しておくように」


「無視すんなっ!」


 スルーしたら怒られた。

 まあ、当然だと思う。


「えー? 説明するほどの理由じゃないぞ」


 それで納得するようなマイカではない。

 犬のように唸りながら説明を要求されてしまった。


「長いのは俺らの行動が怪しまれないか様子を見るためだし」


 マイカの唸り声が止まった。

 だが、目はまだ先を促している。


「夜中に稼働を始めるのは俺たちと関連づけされにくいようにって考えただけだ」


「それだけ?」


「ああ、それだけだぞ。

 狙い通りに行くかどうかはわからんがな」


「じゃあ、何か変だったと噂されたらどうするつもりよ?」


 マイカにしては慎重な意見である。

 それだけ心配してくれているのだろう。


「噂が消えるまでタイマーを止める」


「ぎゃふん」


 何故か古典的な台詞で撃沈するマイカであった。


読んでくれてありがとう。

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