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743 称号で考えている間に爺さんは登城するべく動いていたようだ

すみません。

少し遅れました。

 称号の確認をするのが辛い。

 俺の予想では増加は3個以内だったのに。


『6個も増えるとか神のシステムは鬼かっ!』


 小1時間は問い詰めたいのが今の心境だ。

 え? 誰を、だって?

 そんなの決まってる。

 システム管理者、要するに責任者だ。


『まあ、間違ってもそんなこと言えないがな』


 本当に出てこられても困る。

 それにジジイが王城に来るようだから悠長にはしていられない。

 嫌でも確認はしなければならんという訳だ。


『せめて前回の[完封超人]みたいなのじゃありませんように』


 そう願わずにはいられない。


「……………」


 覚悟を決めて詳細を確認する。

 まずは[ドルフィーネの友]だ。

 普通である。

 これは俺もあるだろうと思っていたから特に思うことはない。

 もちろんメンタルダメージもない。


 次は[人竜族の友]だ。

 これも[ドルフィーネの友]に同じ。

 思うことは「割と大変だったな」くらいだろうか。

 魔神が封印されていたり竜が出たりした訳だからな。


『まあ、西方人だと滅亡コースか』


 我々が対応できたのは運が良かったと言えるだろう。


『特に魔神の時は古参組の大幅な底上げができたしな』


 故にこれらの称号には悪い印象を抱くということはない。

 元々から[○○の友]系の称号には忌避感を抱くどころか愛着もある訳だし。

 問題は先に挙げた[完封超人]のような人のことを人外扱いするような称号だ。

 あと、俺のことをからかうか弄るかするような称号も。


『次以降がそういうのじゃありませんように』


 内心では、ひたすら祈り願うほどだ。

 が、得てして必死に思いを込めるほど流れは好まざる方向へと流れ出す訳で。


 次に確認した称号は[ハーレムの主]だった。


『よりにもよって、それかよぉ────────っ!』


 婚約者含む妻が20人以上いることというのが条件のようだが……


『これじゃあ、まるで俺が節操なしみたいじゃねえかっ!?』


 内心で吠えた。

 本当は声の限りに絶叫したいところだったが堪えた。


 ただでさえ全身黒ずくめで怪しさ満載なのだ。

 あんなこと大声で叫んだら変態認定されてしまう。

 人は居ないが俺が俺自身を認定するだろう。


『吠えたが最後、黒歴史だ』


 俺はただ主張したかっただけである。

 自分は節操なしじゃないと。


 だが、いくら否定しても現実は非常だ。

 すでに称号がついてしまっている。


 そして俺自身が客観的な目で見た場合に「そんなことはない」と断言できない。

 違うと否定するのは感情だけだ。

 事実を積み重ねて考察すればするほど否定できなかった。


『なんてこったい!?』


 現実を前に俺は打ちのめされる。

 リアルはどうにか踏ん張ったけどな。

 内心じゃ両手と膝をついて項垂れるしかなかったよ?


 せめて鬼畜夫とか言われないようにしたいものである。


『次だ、次……』


 これ以上、ショックが重なったりしないことを願いつつ恐る恐る次の称号を見た。


[花火師]


『こんなのが付くとはな』


 実に平和的でホッとした。

 オオトリでたった一晩楽しんだだけのものがと思ってしまう。

 おそらく皆が楽しんでくれたからこそ、この称号がついたのだろう。

 そう思うことにした。


[遊びの鉄人]


「……………」


 称号だけを見ると憮然としてしまうところであった。

 遊び心を持ってあれこれやった記憶はある。

 だが、鉄人と言われるほどではないと自分では思っていたからだ。

 説明文を読むと納得できたけどね。


[大勢を様々な遊びで楽しませる]


『そういうことかい』


 これなら不満はない。

 むしろ光栄だと思う。


 やはりオオトリでの休暇で皆を楽しませることができたのが大きいのだろう。

 できれば国民全員を喜ばせられるようにしたいところだ。

 なかなか難しいとは思うがね。


『秋祭りとかなら大規模にできるかな』


 新しく加わる予定のドワーフたちの歓迎の意を込めた形にするのも悪くないだろう。


『楽しいことを考えると落ち着くな』


 そして残る称号はひとつ。


[アンデッドの天敵]


『え~っ……』


 個人的には微妙に感じる称号だ。

 称号にされるほどアンデッドを仕留めたつもりはないからね。

 確認してみたら、集団を単独で圧倒するのも[○○の天敵]系取得の条件になるらしい。


『そういうことなら仕方ないのか?』


 思い当たる節となると、ひとつしかない。

 デミヴァンパイアだ。

 確かに連中を圧倒していたと言える。

 碌に反撃させぬまま全滅させたからな。


『けど、あれって操り人形だったし』


 動きが鈍くて難易度の低いシューティングゲーム状態だった。

 あまりにも手軽すぎる称号ゲットは、やはり微妙に思う。

 称号がつけばつくほど他所の神様に注目されやすくなるって話だし。

 それがなきゃ、どうだっていいんだけど。


『まあ、大半がヘンテコ称号でなくて良かったと思うべきか?』


 ひとつプチ黒歴史にはなりそうな称号がついてしまったのは、しょうがない。

 自業自得だ。

 残りの称号を見ている間に、そう思えるようにはなった。


『諦めとも言うよな』


 ただ、この[ハーレムの主]が付けられたことで懸念材料ができてしまった。

 それは妻が増えやすくならないかということだ。

 称号のせいで俺が異性から魅力的に見えるようになるなんてことはないだろう。

 その点に関しては今までと変わらないはずだ。

 だが、出会いの切っ掛けが増えたりなんてことはありそうで怖い。


『妻は何人までなんて制限をつけるつもりはないし……』


 納得いくなら拒むつもりはないんだけど。

 だからこそ今より増えやすくなるとなれば頭痛ものである。


 あと、懸念はそれだけに留まらない。

 この称号が進化したりしないかというのもあるのだ。

 今までもいくつかの称号が統合されたり進化したりしている。


『この称号なんか、その雰囲気をバリバリに感じるんだよなぁ』


 マスターとか王とか、ありそうだろ?

 まあ、警戒したってなるようにしかならないのだが。

 故に今の俺に出来ることは諦観のこもった溜め息を漏らすだけ。


『しょうがない……

 その時になったら考えよう』


 無理に抵抗するよりはマシなんじゃないかな。

 たぶん称号的には手遅れになっているとは思うがね。


『幸せなら何だっていいや』


 そう思うと肩の力が抜けた気がした。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 あれから俺はシノビマスターとして爺さん公爵を待つことにした。

 少し話しておきたいことがあるからだ。

 俺の話を聞いてくれるか不安はあるのだが。


『人嫌いだって聞いたしな』


 いざとなればラソル様の予言を利用するほかあるまい。

 おちゃらけ亜神の手を借りるようで癪に障るがね。

 が、変に意地を張ってこじれるよりはマシである。


 待っている間に魅了されていた面々にいくつか魔法をかけておいた。


 まずはスリープヒーリングミスト。

 スリープミストに遅効性の治癒効果を持たせた魔法だ。

 治癒魔法に即効性を持たせると痛みや違和感を感じることがある。

 眠らせても目覚めかねないのでは意味がない。


『睡眠不足になられても困るしな』


 せっかく眠らせるのだ。

 体力の回復も魔法で行うよりは睡眠で行った方が効率がいいし。

 眠っている間に時間をかけて治癒すれば消費魔力も極少なくてすむ。

 これは後で術式をミズホ国民に公開するのでコスト効率は重要な案件だ。


『俺だけが使うなら魔改造でも何でもするがね』


 今回は試運転なのでノーマル状態を維持してデータ取りも行っている。

 あまり無茶なことはできない。


 その割にスリープメモライズは重ね掛けしているが。

 まあ、これは必要な魔法だ。

 自分たちがどういう状態だったのかを伝えておく必要がある。

 あと犯人が誰で何があったのかもね。


 ちなみに、ここで言う犯人は悪魔ではなく骸骨野郎だ。


『悪魔が黒幕の後ろに控えてしましたなんて、荒唐無稽と思われても仕方がないからな』


 本当の黒幕が誰かなど、この際どうでもいい。

 分かり易い犯人が分かりやすく断罪されれば大衆は納得するものだ。

 事実は一部が知っていればいい。


「ソロソロカ」


 その一部が近づいてきている。

 気ぜわしい爺さん公爵が馬に乗って王城へ向け早駆けしてきていた。


 単騎ではないが、数は少ない。

 後を追う馬は2頭。

 騎乗するのは執事風の爺さんと騎士風のイケメン兄ちゃん。

 かなり遅れて従者らしき面子が何人も走って後を追っていた。


 皆、必死な様子で追おうとしているところを見ると、人望はあるようだ。

 人使いは荒そうだが情に厚いタイプなのかもしれない。


『本当に人嫌いなのかね?』


 ふと、そう思った。

 そんなことを考えている間に城門前にカッツェ・ヒューゲル公爵が到着。


「開門ッ!

 開モォ─────ン!」


 夜中に迷惑なジジイである。

 叫んだって誰も出てきやしないのだ。

 城内の人間は俺が強制的に眠らせている。


『まあ、公爵がそれを知るはずもないか』


 俺は嘆息し、まずは3重の結界を解除した。

 そして理力魔法でゆっくりと門を開く。

 門が開ききる前に再び馬を走らせようとする爺さん公爵。


『せっかちだなぁ』


 まあ、ここから先は思った通りに行動はできなくなるがね。

 俺が理力魔法で手綱を操るから。


「なっ、何だっ!?

 これはどうなっておるっ?」


『力んでも無理だぜ』


 離宮の方に来てもらわないとな。

 まあ、今は何もない状態なんだが。


読んでくれてありがとう。

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