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692 あれもこれもつくってみた

修正しました。

『そういやファクスを → ~ファックスを

 馬車用の被牽引車ができたところで試作した牽引車と接続して確認していく。

 まずは日本で見慣れた感じのを接続。

 倉の中を走らせてみた。


『……………』


 見慣れているだけに普通としか言い様がない。

 非牽引車の方が違和感バリバリだったけど。


『低床でホイールなしだもんな』


 ダミーの馬車をササッと作って荷台に載せてみたがビクともしない。

 魔法の絨毯ならぬ魔法の板状態である。

 再度、走らせてみる。

 加速減速と旋回を織り交ぜてもトレーラーとして安定した走りをしていた。


『平坦な場所だとこんなもんか』


 気になるとすれば、小回りが利かないこと。

 空間魔法の術式を刻みつけて誤魔化す訳にはいかない。


 宰相や総長に見せるのは構わない。

 しつこく何かを言われることはないだろう。

 その気なら、輸送機の時に煩かったはずだ。


 問題はエーベネラント側の反応である。

 まだ相手の行動が読めるほどの知り合いもいない。


『ホイールなしの時点でヤバいかもしれんが』


 気にしたら終わりである。

 それよりも空間魔法を使わずに、どう解決するかだ。

 せっかく馬車2台が乗せられそうなのに短くするしかないのだろうか。


『勿体ないなぁ』


 これなら俺たちが乗る車で馬車を牽引した方がマシな気がしてきた。

 その場合は馬車側の乗り心地が最悪なことになるだろうけど。


 自動車で引けば馬車の速度域を超えて走ることになるのだから当然だ。

 それは避けるべきだろう。


 西方の街道は整備されているといっても平坦ではない。

 馬車を通常の倍以上の速さで走らせれば、派手にシェイクされるのは目に見えている。


『サスなしだもんなぁ』


 衝撃を吸収しきれずに損壊することも充分に考えられる。

 なにより乗員の安全を保証できない。


『直に牽引するのは却下だな』


 そうなると短い被牽引車を採用するしかない訳で。

 想像してみるがスマートでないような気がする。


 トレーラーへの先入観があるからだとは思うがね。

 なんにせよ、それなら列車みたいに連結した方がまだマシというもの。


『ん? 連結か』


 それなら少しは旋回性も上がるのではないだろうか。

 ショートバージョンの荷台ふたつを連結する仕様に変更してみた。

 薄い蛇腹の板で荷台の裏側を繋ぐ。

 荷台同士は間を空けることで蛇腹部分で折れ曲がる訳だ。


 仕上げて早速走らせてみるが、先程とは比べ物にならないほど小回りが利く。

 ただ、問題があった。

 荷台への積み降ろしである。


 これはロングバージョンの時からあった問題だ。

 2台目を積み込む時、1台目が邪魔になってウィンチが使えない。


『念入りにシミュレーションしてから試作すれば良かった』


 高をくくって適当に作り始めたのが失敗か。

 だが、待ち受けるトラブルのことを考えると思うがままに作ってみたくなるのだ。


『適当にやった方が欠陥も出てきて誤魔化しやすくなるからな』


 まあ、これは言い訳だが。

 適当にあーでもないこーでもないと考えていく。


 色々とギミックを考えたが採用したのは単純な方法だった。

 連結部は蛇腹なのだから直角以上に曲げればいいのだ。

 車輪ありだと引っ掛かってできない芸当である。


『ホイールなしにして良かった』


 連結部が積み込みの邪魔になるが、そこはラダーレールで解決だ。


 ついでにラダーレールを馬車の車輪を固定する器具にした。

 馬車をラダーレールに乗せ切ったら車輪をロック。

 後はラダーレールを荷台に載せ上げる訳だ。


 ダミー馬車で実験してみたが悪くない。

 そのまま悪路まで想定した実験で走らせてみたが問題はなさそうだ。

 適度にサスが利いているので通常の馬車移動よりは乗り心地も良くなるだろう。


 念のために【多重思考】で危険な問題点がないかチェックしておく。

 その間に次の被牽引車を作ることにした。


 馬用である。

 馬車用をベースに箱を載せる形にした。

 箱は密閉型にして窓もなし。

 馬は臆病な動物だから高速移動している風景を見せると暴れかねない。


 更に馬が快適に乗っていられるように術式を記述した。

 Gや衝撃の吸収はもちろん、弱めの疲労回復もかかるようにしてある。


 ただし馬専用だ。

 万が一人間が乗っても作用しない。

 あくまで馬のストレスが軽減するようにしたものだからね。

 馬は人の言葉を喋ることができないからバレないはず。


『問題にはならんだろ』


 そして最後に人間用。

 箱は馬用をベースに窓と座席ありにする。

 衝撃吸収は馬車用と同程度になるよう術式で調整した。

 馬車より乗り心地が良いとなったら煩く言われかねないからな。


『そうでなくても、こっちに乗るとか言われるかもしれんし』


 そうなると揉めるような気がする。

 身分の違いとかグダグダ言い出す奴が出るのは、こういう時の定番だ。

 実に面倒な話である。


『念のために2階建て仕様にしておくか』


 仕様変更を元に箱を作り直していく。

 そのせいで大きく重心が変わってしまった。


『バランス調整の術式を組み込む必要がありそうだな』


 まあ、キーキーうるさい輩を相手にしなくて済むことを考えれば大したことではない。

 低床型にしたことで、さほど難しくないというのもある。


『術式の方は、もう少し工夫してからにするか』


 1階の座席に重りを仕込んで下に重心が来るようにしてみた。

 こんなことができるのもホイールレスだからだ。

 でなきゃ地面へのタイヤの食い込みでバレるだろう。


 2階は1階とは逆に軽量素材を中空にしたものを多用する。

 それとバレないように偽装は抜かりなく。


 バランス術式なしで走らせてみたが安定感があった。

 思った以上に急旋回時の横揺れが少ない。


『後は人を乗せた時にどう変化するかだが……』


 その辺りのチェックは、もう1人の俺に任せて念入りにしておこう。

 馬用もこれも【多重思考】で呼び出したもう1人の俺にチェックを依頼しておいた。


『そう言えば、試作した他の牽引車も確認してなかったな』


 バスを短くしたようなのはうちの面子が全員で乗ることを想定したものだ。

 連結すると小回りが利かなくて不採用となった。

 単独でならそんなに酷くないんだけどね。

 中途半端だけどマイクロバスよりゆったりできるので連結しないなら使い道はある。


 ピックアップトラックの荷台の囲いがないような背の低いのも作ってみた。

 荷台に相当する部分は特に低い。

 これは被牽引車に接続する部分になるからだ。


 乗り降りは楽だと思う。

 地球のものとは構造そのものが違うからパワー不足なんてこともない。

 欠点がないように思えるかもしれないが、単独での実用性がない。


 これは標準型でも言えることだが定員が少ない上に運動性能は高い方ではない。

 標準型よりはマシって程度だろう。


 単独での運動性を追求したものも考えてみたがバギーとかトライクになってしまった。

 より中途半端感が増した気がする。

 まあ、色物と言ってしまって差し支えあるまい。

 もちろんチェックするまでもなく使わないのは決定だ。

 そんなこんなで一通り仕上げた頃には夕食時となっていた。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 夕飯はクラウド王の強い希望により俺が用意することになった。

 最初は断ったんだが。


『いい年した大人が泣きそうな顔で懇願するなよ』


 物凄くゲンナリさせられて結局つくることになった次第である。

 お陰で御飯を食べた後だというのに回復しきっていないような状態だった。


『もりもり喜んで食べてくれるのは、いいんだけどさ』


 ちなみにメニューはメンチカツ丼である。

 御飯にたっぷりのキャベツと熱々のメンチカツに特製ソース。

 カボチャのポタージュを添えてみたが、飯が何杯でも食べられる状態だった。

 メンチカツとキャベツはもちろんのこと、スープとの相性も良かったようだ。


 ほとんどの面子は「おかわり」していたな。

 俺はしてないけど。

 子供みたいに駄々をこねるオッサンの姿が脳裏に残っていて食欲が激減したせいだ。

 食後のデザートを要求される前に逃げてきた現在はあてがわれた部屋にいる。


『さて、何をするかな』


 皆は明日の準備とばかりに武具の手入れ中。

 俺の方は移動手段については既に用意済みだし。


『そういやファックスを渡す約束をしていたんだった』


 丁度いいのでファックスを作ることにする。

 さっそく倉の中にアクセスだ。

 倉庫から引っ張り出した材料を放り込んでいく。

 メインの素材は石版だ。


『盗まれると困るからな』


 重くして持ち運びにくくする訳だ。

 サイズもコピー機並みにする。

 ファックスの機能を持たせるだけなら家庭用サイズにするくらい何の問題もない。

 だが、防犯面で考えると持ち運びが比較的容易な家庭用サイズは却下である。


『そうなると設置がなぁ……』


 置き場所はそうそう変えたりはしないだろうが、まったく無いとも言えない。

 最初の設置にも移動が必要になるだろう。

 ファックスとしての動作術式を考えながら解決策を模索する。

 重いから簡単には運べないが、軽くする訳にもいかない。


『だったら自走させるか』


 使用権限の術式を放り込み、上位の使用者の命令で移動するようにする。

 キャスターだと段差があるだけで移動が困難になるのでゴーレム風の無骨な脚を採用。


『通常使用時は格納形態に変形っと』


 微調整用に数センチスライドするようにもしておこう。

 さて、ここからが本番である。

 操作はタッチパネル風にした。


 ボタンがあれこれついた状態だと拒絶反応を起こす者も出るだろうからな。

 その辺りはスマホのノウハウがあるのでお手の物である。

 操作関係は簡単に終了した。

 ちなみに初心者も安心なガイダンス機能付きである。


『こうしとかないと操作が分からんとかで呼び出しを受けかねんからな』


 インクやトナーの類いは不要にする。

 普通紙は売ることになるが、そっち方面で商売をする気はない。

 手間がかかって面倒だ。

 それなら術式で対応した方が楽である。


 幻影魔法を紙の上に投影し、それを瞬時に焼き付ける方法を採用した。

 ピンホールカメラのようなものだ。

 フィルムは使わないけどね。

 一応、カラーにしておいた。


『問題は誰と通信するかだよな』


 ファックスは単独では何の意味もない。

 これは複合機じゃないからな。

 コピーもできないしパソコンなんかもないからスキャナーとしても使えない。


『とりあえずもう1台つくってガブローに渡しておくか』


 つまらん用事なら、これでシャットアウトできるだろう。


読んでくれてありがとう。

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