647 出題してみた
修正しました
ヒガ屋ぁーっ! → ヒィガ屋ぁーっ!
ボルトが諫めたことでガンフォールたちのやり取りは終わった。
だが、2発目の花火はまだ打ち上がらない。
現代日本じゃバカスカ打ちまくるけどね。
『アレは趣味じゃないんだよなぁ』
派手でスカッとするかもしれないんだけど余韻が感じられない。
趣も風情もない。
本当に爽快感を感じるだけだ。
それが始まりから終わりまで続くとなると辟易させられる。
『派手なのは少しで充分だろ。
マシンガンみたいに連発させるのはどうかと思うんだがなぁ』
だが、そのあたりは個人の趣味の問題でもあると思う訳で。
俺の独断で決めていい話でもない。
皆に休日を楽しんでもらうために用意したイベントだからな。
『皆が面白いと思う方を採用しないとね』
ならば皆の言葉に耳を傾けるべきだろう。
そういう訳で事前にアンケートをしておいたのだが。
結果は余韻派が圧倒的に多かった。
スカッとしたい派のために途中で少しだけ連発も入れる予定だけど。
基本は古き良き花火大会のスタイルでやることにした。
そのうち2発目が打ち上がる。
「あれー?」
真っ先に気付いたのはダニエラだった。
「ん?」
そしてノエル。
「ドォ────ン!」
先程とは異なる色の花が咲く。
「「「「「おおーっ」」」」」
変化としては色だけにもかかわらず再び響めきが起きた。
よくよく考えたら動画で花火を見たことがある者は大勢いるはずなんだが。
『本物に圧倒されるのは1発目だけだと思ったんだがなぁ』
それだけ新鮮に感じているのだろうか。
『まあ、楽しんでくれているみたいだし』
追及することでもないだろう。
むしろ俺が追及されそうなんですが?
ダニエラとノエルがシュバッと急接近。
「おっと」
抱きつかれるのではという勢いで2人に密着されてしまった。
『何故に?』
ビタッとくっついたノエルからいい香りが漂ってくる。
グイグイ押し付けてくるダニエラからはムニュンという天国な感触が……
思わず「うはぁっ」とか声を漏らしてしまいそうになる。
『これで鼻の下を伸ばしてたら変態認定されてしまうぞ』
恐ろしい話だ。
妻たちの前でならともかく、国民の前での変態認定は真黒歴史確定だからな。
鋼の意思で耐え抜く所存である。
「あのぉ、ハルトさーん」
「ハル兄」
ダニエラとノエルが密着状態で詰め寄ってきた。
『これなんて天国と地獄?』
いま喋ると裏返った声が出そうだ。
しばし無言で耐えるしかなさそうである。
「最初のと違うんですけどー。
これってどういうことですかー?」
「ん、無音」
『気付いたか』
さすがである。
しかしながら忍耐タイム中の俺には即答できない。
「無音て、どういうこっちゃの?
ドーンて派手な音したやんか」
気付いていないアニスがツッコミを入れてきた。
『助かった……
ナイス突っ込みだ、アニス』
「ダメだニャー、アニスちゃんは」
それにダメ出しをするミーニャ。
子供組はそれに全員が頷いている。
『こっちの面子も気付いてるようだな』
「えーっ、うちダメなん!?」
子供組に指摘されたことで動揺を隠しきれずアニスはタジタジだ。
『そろそろ行けそうか』
頃合いを見て俺は助け船を出してみることにした。
「5発目で分かると思うぞ」
いきなり種明かしをしても面白くないので、こんな言い方になったのだが。
「それで分かんなかったら罰ゲームでどうだ?」
この一言は余計だったかもしれない。
「ばばば罰ゲームぅ!?
なんでやの、なんでやの?
これって陰謀かなんかなん?」
アニスはかなりビビっている。
『大袈裟だなぁ』
それほど酷い罰ゲームを用意するつもりはないのだが。
これではまるで俺が苛めているみたいである。
もちろん、そんなつもりは毛頭ない。
『単なる思いつきだからな』
「観察力を鍛えると思って挑戦してみたらどうだ?」
「やめといた方がいいんじゃないのぉ」
レイナがそんなことを言うが、決して助け船ではない。
むしろ罠へ誘導していると言えるだろう。
アニスに向けて挑発的に笑いながらそんなことを言っているのだから。
「ぐぬぬ」
それが分かっていながら葛藤しているアニス。
『ダメだ、あれは』
完全に頭に血が上っている。
ブレーキを掛けているのは提示されていない罰ゲームの内容に対する恐怖感か。
『どんだけビビってるんだよ。
俺はそこまでサディストじゃないぞ?』
「ギブアップするか?」
言ってからしまったと思った。
こんな言い方では火に油を注ぐようなものである。
「やるわ、そんなん言われたらうちも引かれへん」
『ああ、やっぱり……』
俺はつくづくアホである。
「負けられへんで」
鼻息荒く次の花火が打ち上がるのを待つ。
3発目が上がった。
「ドォ────ン!」
「「「「「玉屋ぁーっ!」」」」」
ノリのいい古参組の何人かが掛け声を発した。
ようやく慣れてきたようだ。
「それを言うならヒガ屋だぞー」
ちょっと面白おかしい感じのノリでツッコミを入れるとドッと笑いが起きた。
玉屋なんて屋号の店はミズホ国には無いからな。
真面目に指摘するより楽しんだもの勝ちだ。
『もう一丁いっとくか』
「ミズホ屋でも可」
ネタを追加してから蛇足を感じたりするのだが。
まあ、言ってからではキャンセルはできない。
時間は巻き戻せないからな。
そんな訳で運を天に任せるしかなかったのだけれど。
幸運にも再びドッと受けてくれた。
ホッと一安心。
『動揺が抜けきってなかったか』
これ以上は余計なことを言うのは控えた方が良さそうだ。
「アカンー」
アニスが頭を抱えていた。
「色の差なんて単純なもんやないとは思てたけどぉー」
半ばパニックになりながら身悶えている。
『そりゃそうだ』
花火の形は同じままなので色を変えないと面白みがなくなってしまう。
同じものばかりじゃ最初の感動は超えられないからな。
『発色を変えるだけでも印象は変わるし』
それも繰り返せば飽きられてしまうのだけれど。
もちろん色々と他の要素でも変化をさせていく予定である。
まずは5発目で形を変える。
『それに引っ掛からなきゃいいんだが』
1発目と2発目で差があったことを忘れていなければ、そういうことはないはずだ。
だが、今のアニスは焦っている。
すでにノエルが口にした「無音」のことを失念している有様だ。
『大丈夫かなぁ』
「落ち着きなさいよ」
呆れた様子でレイナが声を掛けた。
「そんなん言うたかてー」
テンションが下がって情けない声で返事をするアニス。
「レイナの言う通りだ。
慌てて答えが見つかるものでもなかろう」
「ほら、深呼吸しろ」
ルーリアやリーシャもレイナに続く。
「「ファイトだよ、アニスちゃん」」
双子のメリーとリリーが笑顔で応援している。
「ううっ、負けへんでえ」
少しだけ気持ちが盛り返したアニスであった。
そうこうする間に4発目が花開く。
「ドォ────ン!」
「「「「「ヒィガ屋ぁーっ!」」」」」
花火の音に反応してすかさず掛け声が聞こえてきた。
わざわざ修正してくるとは本当にノリがいい。
その面子の中にベリルママがいたりするんだけどね。
そこは楽しんでくれていると思うことにしよう。
「うむむむむむむっ」
アニスが首を捻り腕を組んで唸っている。
頭から湯気が出るんじゃないかと思えるほどだ。
お陰で無駄に力が入りすぎている状態だった。
故に胸が押し潰される形になっていたのは必然であると言えよう。
結果として腕からこぼれ落ちそうに見える。
服がはだけたりはしていないものの扇情的に感じてしまうのは無理からぬことだった。
ダニエラほどではないとはいえアニスもスタイルはいい方なのだ。
『うーん、これがアニスを焦らせたりしていない状況ならなぁ』
ここで眼福と言うほど不謹慎ではないつもりだ。
「次で5発目だな。
違うのが上がる予定だが1発目と共通点がある。
そのことも忘れずに見ておくと良いかもしれないな」
助けになるかと思ってヒントを出してみた。
ただし、無音については言及しない。
それは答えを教えているようなものだからだ。
「ん?」
アニスが口をアングリと開けて俺の方を見ている。
答えに気付いたというわけでもなさそうだが。
「なんだ、どうした?」
「ヒントがもらえるて思わんかった……」
半ば呆然とした様子で答えるアニス。
「別に意地悪でクイズにしたわけじゃないぞ。
罰ゲームだって酷いのにするつもりはないからな」
俺がそう言うとアニスはへたり込んでしまった。
読んでくれてありがとう。




