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603 案内の後は校長役が出てくる?

再修正しました。

経験がスッポリ → 経験がまるで

スッポリ失念 → 完全に


修正しました。

差異 → 際

 午後からのミズホシティ案内も視聴覚教室で行った。

 数百人規模で移動すると、どうしても時間のロスが大きいからね。

 施設間の移動は転送魔法が使えるけど、施設内でポンポン跳ぶ訳にもいかんし。

 そんなことしてたら人魚組が絶対に混乱する。


 施設間の転送でも大体の方向とか説明しておかないとダメだろうし。

 ミズホシティ内の移動については皆が慣れてから各自で探検してもらうことにした。

 今日の所は駆け足で施設の説明を済ませることを優先。

 そんなおざなりで良いのかと聞かれそうだけどね。


 視聴覚教室で見た内容はスマホに配信されるようにしたので心配無用だ。

 案内を再開する前にそれについて説明。

 何度か実際に操作をさせて後で確実に見られるようにしておいた。


『スマホを作っておいて本当に良かった』


 これがあれば地図アプリで探検するときの助けにもなるしな。

 ただし、探検を許可するのは当面お預けである。

 スマホで動画再生の指導をした際に基本操作さえ覚束無いことが判明したからね。


 便利なアプリがあっても使いこなせなければ意味がない。

 慣れが必要だと痛感した。

 新しい概念の道具を使うというのは思ったほど楽ではないのだ。


 日本人は比較的そういうのに慣れている傾向があるから意外ではあったかな。

 子供の頃から様々な文明の利器ってやつを触ってきているお陰で対応力があるのだろう。

 逆に惑星レーヌの住人には、そういう経験がまるでないのだ。

 うちの国民としてある程度慣れた者たちなら話は別だけど。


『最初から使いこなせる訳ないよな』


 そのあたりを完全に失念していた。

 これは俺のミスである。

 元日本人としての常識みたいなものが、意識の中にこびりついているせいだろう。

 人魚組より前に国民になった者たちによって実証済みであるというのに。


 たとえば元戦闘奴隷だったブルース。

 他の魔道具には割と早々に対応できていたんだけど。

 スマホになると大苦戦。

 使い慣れるのにかなり苦労していた。


『爺ちゃん婆ちゃんの世代かよ』


 なんて当時は思ったものだ。

 だが、ベースとなる知識や経験がないとこんなものなのだ。

 同時期に国民になった者たちは皆そうだった。


『ここまで戸惑うものなのかと思い知らされたさ』


 何はともあれ案内である。

 サーキット施設や転送駅なんかを見せたら唖然呆然だった。

 言葉を忘れたかのようにポカーンとした顔をさらしていたからね。


 特にサーキットは復帰に時間がかかったよ。

 可変戦闘車両のボルゾイや某レースアニメのレプリカで模擬レースをやったからね。

 ボルゾイが人型に変形すると皆一様に目を開ききったのには驚かされた。

 あとレプリカの方はレースの演出を派手目にしたら食い気味で見ていたね。


『網膜投影なのに身を乗り出す者が続出するんだもんなぁ』


 あれには苦笑させられた。

 その後も色んな施設を見せていく。

 災害対策用のものも含めてね。

 豪雨災害や大火災なんかのシミュレーション映像に度肝を抜かれたりしていた。


 津波のときは最初はそんなでもなかったな。

 台風とかで高波を何度か目撃していたからだろう。

 ただし、津波がどういうものか見せたら顔色を変えていた。

 海の中まで荒れるとは思わなかったようだ。

 そのパワーに圧倒されていたよ。


 あんまり脅かすのも可哀相だったんだけどね。

 それらに対策しているのを見せる都合上やむなくってやつだ。

 最終的には対策が充分だと実感して安堵していた。


 けれども相当のストレスが溜まったはず。

 そのままにしておくのも気が引けたくらいだ。

 故に途中で【多重思考】を駆使して最後にオマケを用意した。

 近日中に建設して運用を開始する予定のデパートやコンビニをバーチャルで紹介。


 結果は上々。

 思った以上に食いつきが良くて、最後には皆の笑顔が見られた。

 俺も一安心である。

 ちなみに最も食いついてきたのは食料品関係。

 飲食店街やフードコートだけでなく食材や加工品の販売にも目が釘付けだった。


『この食いしん坊さんたちめ』


 なんだか近い将来が心配になってくる。

 食べ過ぎで人魚組が関取体型だらけになるとか悪夢である。

 健康的にふっくらしてくれるならいいんだけどね。

 人魚組は痩せ細っている者たちばかりだからさ。

 こんな調子だから夕食も盛況だったのは言うまでもないだろう。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 開けて翌日、学校の体育館に人魚組を集めた。


「今日からレベル100になるまで皆さんは学生です」


 壇上でカーラが喋っている。

 別に学校責任者って訳じゃないんだけど「やってみたいです」と言ってきたからね。

 本日は校長先生の真似事である。


『俺には理解不能なんだが』


 こういう話は得てして長くなりがちだ。

 昔から苦手だったんだよな。

 特に好きでもない相手の演説をうだうだ聞かされるのって退屈でしょうがない。

 尊敬する相手とかなら平気なんだけどさ。

 滅多にそういうことはなかった。

 中には興味深い話し方をする人もいたけれど超のつく少数派だ。


『カーラのお手並み拝見だ』


 人魚組は、なかなか真剣にカーラの話を聞いている。

 終わったら、さっそく授業が始まるからだろうか。


「決して楽ではないでしょう。

 ですが、私達も通った道です。

 信じられないかもしれませんが、私も今の皆さんと変わらないレベルでした」


 どよめきが起こった。

 それだけ信じ難い話だったのだろう。


「皆さんは忘れていませんかっ?」


 トーンを強めてざわついている人魚組に対抗するカーラ。

 問いかける形で語り掛けたのも良かったと思う。

 皆の興味を引き付けることに成功。

 必然的に館内が静まりかえった。


「陛下のお力を」


 カーラがそう言った途端に場の空気が変わった。

 無理めの否定的なそれが完全に消え失せてしまったのだ。

 たった一言で皆のやる気を引き出したのは称賛に値するだろう。


『やるじゃん』


 けど、俺を引き合いに出すなんて事前には言ってなかった。

 予告されていたら許可しなかったと思う。


「自信を持って言いましょう。

 何も恐れることはありません。

 陛下が凄いのは魔法だけではないのです」


 これだけ言われるとは思っていなかったからな。


『恥ずかしいじゃねえかよ』


 これに尽きるのは言うまでもない。


「陛下が導いてくれます」


『他力本願が過ぎやしねえか?』


「ですから努力を怠らないでください」


『ツッコミどころの直後にコレを持ってくるか』


 後で俺から指導が入ると考えたのかもしれん。


「必ず報われます」


『ここで必ずって言うかねぇ』


 途中でつまづく者が出たときはケアやフォローがより大事になるってのに。


「皆さんにもできます。

 必ずできます」


『うわ、大事なことなので2回言いましたパターンだよ。

 しかも「必ず」も重ね掛けしてくるし……』


 大幅に減点である。

 聞く側からすれば希望が持てて良い感じなんだが。

 教える側としてはよろしくないのだ。

 万が一のことを考慮していないからね。


『フォローしやすい環境も用意しておかないと』


 だから、あのスピーチは65点ぐらい。

 人をやる気にさせている点を評価しての点数だ。

 でなければ赤点確実である。


『おっと!?』


 評価してる間にカーラの挨拶が終わった。

 これにて入学式は終了。

 カーラの話も短めだったし、その点に関しては言うことなしである。

 挨拶ひとつで終わるなんて俺が現役の頃だったならとか考えてしまうけど。

 だからといって再び学生生活を送りたいとは思わない。

 妖精組はレベル100を超えても仕事の合間にノリノリで学生をやってるけどね。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 入学式終了後はかなり騒がしくなっていたんだが。


「じゃあ、これから授業を始める」


 俺が声を掛けると一瞬で静まってしまった。


『なに、この反応』


 別にビビられている雰囲気はないけど。

 とりあえずはスルーだ。

 時間がもったいない。

 できることなら海水浴までに少しでも底上げしておきたいのでね。


 今回は古参組にも大いに手伝ってもらう。

 人数が多いからな。

 制限時間も一応はあるし。

 さっそく授業で使う教材を配布していく。

 あらかじめ古参組に渡しておいた代物だ。


「懐かしー」


「ホンマや」


 教材を配りながら、そんなことを言っているレイナとアニス。


「これってアレをやるんですよねー」


「だろうな」


 ダニエラとリーシャもどこか懐かしがっている様子だ。


「ロウソクで根本的に魔法の概念を変える、か」


「「効率はこれが一番いいよぉ」」


 ルーリアと双子たちも自分たちの時のことを思い出しているようだ。

 この面子の中にノエルがいない。

 俺の側にいるからだ。

 昨日、助手を買って出てから何故かベッタリモード。

 そして触発されたかのように幼女モードのマリカもベッタリさんである。


『なに、このロリコン歓喜の状況は?』


 気にしている暇が惜しいので授業を進める。

 教材であるロウソクが行き渡ったかを素早く確認。

 全員がロウソクを手にして俺の方を見ている。


『さて、このモチベーションが続くかな』


 次の一言でガクッと落ちることも考えられるのだが。


『果たして、どうなるかね』


読んでくれてありがとう。

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