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598 次は学校なんだけど

再修正しました。

「使い方は大丈夫か」→「使い方は大丈夫か?」

原因のようだ。→ 原因みたいだな。

得たみたい。→ 得たようだ。


修正しました。

魔法補 → 魔法の

慌てちゃん → 慌てたちゃん

子1時間 → 小1時間

 役所のホールでは全員集合というのは人数的に無理がある。

 さすがに、そこまでの設計にはなっていない。

 する意味もないしな。


 という訳で魔法のポーチを受け取った国民は外に出て集合するように案内される。

 古参組がそこで待っているという寸法だ。

 【天眼・遠見】と【遠聴】スキルを使って外の様子を確認してみる。


「ある程度、整列するときのことを考えて集まっておいてねー」


『おおっ』


 ちょうどレイナが役所の外に出てきた人魚組に話し掛けているところであった。

 喋り方だけでなく声音まで素の彼女とは違う。

 よそ行きの声で誘導しているのが、ちょっと驚きだった。


『これぞ、ザ・猫なで声』


 こんなことを猫耳尻尾な本人に言うとキレられそうだ。

 思うだけならセーフですよ?

 本人の前だとヤバいかもしれんが……

 野生の直感とでも言うべき鋭さで勘付かれてしまう恐れがあるのでね。

 そのことを考えるだけで冷や汗が出そうになる。

 なんにせよ珍しいレイナが見られた訳で。


『ちょっとラッキー』


 意外性があって可愛いと思う。

 こんなことを言うと、やはりキレられそうだけど。

 ちなみに誘導や案内をしているのはレイナだけではない。

 他の古参組も動き回っている。


 あと、役所の中に残っている古参組もいる。

 3姉妹なんかもその口だ。

 次女マリアに慌てた様子で近づくドルフィーネが1人いた。


『なんだ?』


 緊急事態だろうか。

 真っ先に考えられるのは急病だ。

 怪我をするような状況ではないからな。


 カードを無くしたとかではないはず。

 慌てたちゃんは最後尾にいたから手続き前である。

 他に何があるだろうかと考えている間にマリアの方からも歩み寄っていた。

 さすがは元メイド長。

 進んでフォローに回ってくれるようだ。

 慌てたちゃんが落ち着かない様子でマリアに耳打ちし始めた。


『何か秘密にする必要がある?』


 考えてみるが、ちょっと思いつかない。

 急病なら伏せる必要はない。

 紛失も然り。


『マジで分からんのだが』


 ここは様子見しておこう。

 基本的にはマリアに任せる。

 慌てたちゃんが助けを求めたのはマリアだからな。


 間近にいたのがマリアだったからだとは思うのだが。

 それでも俺が横からしゃしゃり出るのは好ましくあるまい。

 マリアに対処しきれないときにフォローすればいいだろう。


 そういう訳で俺もフォローできるよう密かに注視しておく。

 あからさまにならないよう【天眼・遠見】スキルを使うのは基本である。

 これなら、あらぬ方向を見ていても視野外領域で確認できるし。


『もう用件を伝え終わったのか』


 慌てたちゃんの耳打ちはすぐに終わった。

 予想外である。


 が、マリアは笑顔で頷いて一言も発さずに慌てたちゃんを誘導していく。

 その方向を見て納得がいった。

 【天眼・遠見】スキルでの追跡を緊急停止。


『お手洗いまでついて行くのは変態の所業だもんな』


 そういう訳なのである。

 これは完全に俺の配慮ミスだ。

 次からは休憩をこまめに挟んでいくことにしよう。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 人魚組の手続き完了。

 小休憩も入れた。

 いよいよ次の場所へ向かうのだが。


「魔法のポーチは行き渡っているな」


 これを先に確認しておかないといけない。

 万が一、配布しそびれていたりしたら俺の責任だしな。


「「「「「はいっ」」」」」


 全員から返事があった。


『間違いなし、と』


 1人でも様子がおかしかったら対応できるよう【多重思考】で監視していたので確実だ。


「使い方は大丈夫か?」


「「「「「はいっ!」」」」」


 最初よりも明るく元気のいい返事である。

 本当に大丈夫だろうかと思ってしまうくらい何の戸惑いも感じられない。


『まあ、いいか』


 分からないことがあったら聞いてくるだろう。

 俺だけじゃなくて古参組でも分かることだし。

 そういう意味でも食事会で先に仲良くなっていたのは良かった。

 そういうこともあって人魚組も不安がないのだろう。

 彼女らもポンポコなお腹になった甲斐があるというものである。


「じゃあ次だ。

 学校へ転送魔法で跳ぶぞ」


「「「「「はーい!」」」」」


 皆いい笑顔である。

 整列する前までの雑談によれば、カードと魔法のポーチが原因みたいだな。


 まず、カードを手にしたことでミズホ国民になった実感を得たようだ。

 笑顔の半分は充実感によるものってことだな。


 で、残りの半分は喜びによるものらしい。

 皆でお揃いの魔法のアイテムを貰ったのが嬉しかったんだとか。

 俺は太っ腹なんだってさ。


『安物の廉価版なんだが』


 なんといっても保存容量が少ない。

 日常的に使われるようなデイパック程度である。

 西方じゃ、それでも凄い魔道具ってことになるようだけど。

 うちでは学校の魔道具実習で最初の頃に作るような代物だ。


『まあ、いずれ現実を知るか』


 それよりも、どうなんだろうね。

 人魚組が生き生きしている。

 悪いことじゃない。

 むしろ良いことなんだけど、現実を知ったときの落胆を思うと気分は重くなる。


 そう考えると神社の前でガクブルしながら土下座していたのは何だったのか。

 小1時間は説教を交えて問いたいところだ。

 問わないけど。


『……やぶ蛇になっても嫌だしな』


 一時的に忘れているだけなんてことも充分に考えられるし。

 それよりも今は学校の案内である。

 転送してきた直後からのざわめきが静まるのを待つ。


「今度はどこかなぁ?」


「さあ、見当もつかないわよ」


「ここも大きな建物があるね」


「そうね、それも彼方此方に。

 これって同じ敷地内にあるようだけど」


「住む所って感じじゃないわね」


「分かんないわよぉ」


 なかなか静かにならない。

 そんな中で──


「あっ!」


 急に1人のドルフィーネが大きな声を発して固まった。

 何かに驚いた様子である。

 皆の注目が集まるが、眼中にないかのように動きがない。


「なによ? 急にどうしたっていうのよ」


 そう問いかけられて、驚きちゃんはようやく我に返ったようだ。


「向こうで人が戦ってるわ」


 どこか夢から覚めやらぬような雰囲気を醸しつつ答えていた。


「たたか……、ええっ!?」


「うそっ!?」


「どういうこと!?」


 よほど意外だったのか、驚いた様子のままで固まってしまう面子がそれなりにいる。


「ホントだ、戦ってる!」


 驚きちゃんの視線の先を辿った1人が指差した。


「でも、なにか変じゃない?」


「言われてみれば……」


「ここからじゃ遠くて分かんないよぉ」


 あーだこーだと口々に意見が出てくるが、結論が出ない。

 危険な雰囲気でないことだけは認識したようだが。

 そうこうしている間に答えを知るであろう俺へと視線が集まってくる。

 それに並行してざわめきも収まってきた。


『頃合いだな』


 タイミングを見計らって俺は各々に声が届くよう魔法を使いながら話し始める。


「ここは学校という施設だ。

 学校は様々なことを教える授業を行っている。

 授業を通して様々な知識や技能を身につける場だと思ってくれ」


 とりあえず、ここで一区切り。

 あまり長々と喋ると情報が整理できないだろうからね。


 すると1人のドルフィーネが質問してきた。


「じゃ、じゃあ、向こうで戦っているように見えるのも授業というものなんですか?」


「そうだ、あれは実技の授業になる」


 肯定すると響めきが起きた。

 今まで積極的に戦うことをしてこなかった人魚組には些か刺激が強かったようだ。


「アレは偽物の武器を使って怪我をしないようにしてある」


 そう説明すると、一斉に安堵の溜め息をついていた。


「私達も、あの実技の授業を受けることになるんでしょうか」


 不安げな表情で別のドルフィーネが聞いてくる。


「そうなる」


 この言葉には先程以上の衝撃があったようで一様に絶句していた。


「役所の次にここに来たのは皆に学生になってもらうためだ」


 学生という新しい単語で呆然としていた一同の意識を引き付ける。


「ここで教えを受ける者は学生、教える側は教師という身分になる」


 人魚組の動揺はそこまで激しいものではなかった。

 俺の言葉はちゃんと届いているようだ。


「うちではレベル100未満の者は学生になることが義務づけられている」


「「「「「レベル100─────っ!?」」」」」


 衝撃、ここに極まる。

 人魚組全員が絵に描いたような愕然振りを見せていた。


「心配しなくても3桁レベルに到達するのはすぐだよ」


 微かに反応が見られるので俺の言葉が届いていないということはないようだ。

 信じられないといったところだろうか。


「ここにいる古参の面子は短期間でそうなった」


「「「「「っ!?」」」」」


 今度は反応があった。

 些か刺激的だったようだが。


「そうでないと俺も安心できないんでな。

 最低限、自分の身が守れるようになってもらう」


 そう言うと皆の目の色が変わった。

 今までは逃げるなどの受け身の姿勢だったが、意識が切り替わったようだ。

 俺が思った以上の反応である。

 まあ、拒絶されるなんていう最悪の状態にならなかったのはラッキーだ。


『その気になってくれるのが一番ありがたいね』


 俺は内心で安堵した。


読んでくれてありがとう。

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