590 お食事タイムのあとはデザートタイム
あれやこれやと作っては食べた。
俺も皆も。
色んな種類を食べられるように小さく盛りつけるなどの工夫はしたけどね。
結果はドルフィーネたちからの大絶賛。
食べたことのない食材で見たことも聞いたこともない調理法。
最初は魔法の味だと大騒ぎになったものだ。
古参組としては大袈裟だなぁと思わされた次第。
ドン引きまではしなかったけどね。
知らないことに驚くのは普通の反応だ。
一応、ドルフィーネたちは海辺でも生活していたことがあるそうだけれど。
この群れに関しては海エルフを含む西方人との接触がなかった。
結果として陸上における食材の扱い方を知る機会がなかった訳だ。
ドルフィーネたちにとっては決して大袈裟ではなかったのである。
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そして、食後。
食後と言えばデザートだろう。
もちろん用意したよ。
古参組が頑張ってくれました。
クレープ、シュークリーム、アイスクリーム、ワッフル、バウムクーヘン。
カステラ、羊羹、饅頭、おはぎ、かりんとう。
他にもあれこれ。
『食べきれる訳ないじゃん』
楽しそうに作ってたから何も言わなかったけどね。
作りながら交流している姿は微笑ましかったよ。
自分たちでも作ったものを食べていたし。
仲良くなったドルフィーネが別のデザートを貰ってきて分け合ったりもしていた。
俺の思惑が予想を超えたと言っても過言ではない。
『仲良きことは良きことかな。
何にせよ、これで一安心』
ホッと一息である。
ちなみに一番人気はプリンアラモードであった。
色々な果物があってアイスクリームに生クリームまであるからな。
ひとつで様々な味を楽しめるというのは俺が思った以上にインパクトがあったようだ。
特に陸の果物はドルフィーネたちにとって珍しいことこの上ない。
「これって、あの黄色い丸い実よね」
「中はこんな風になってたんだ」
「酸っぱぁーい」
「でも、後から甘さも出てくるよ」
オレンジひとつでこの有様。
「この赤いのは中に種があるそうよ」
「種?」
「堅いから食べちゃダメって聞いたわ。
小さいから飲み込まないように注意してって」
「魚の小骨みたいだねー」
サクランボでそういう会話が聞けるとは思っていなかった。
「これよりもっと大きくて堅い実でも食べられない部分があったじゃない」
大人びた感じのドルフィーネが仲間に以前の経験を引き合いに出した話をしている。
果物はまったく食べたことがないという訳でもないようだ。
何を食べたのかは見当がつかないが。
「ええー、そんなのあったー?」
「どうだっけ?」
覚えているのは大人びたドルフィーネだけのようだ。
それなりに古い話になるのだろう。
「外が赤くて中は白いわ。
これくらいの大きさよ」
そう言いながら手で輪っかを作って大きさを表現する大人さん。
それを見て俺は見当がついた。
『リンゴみたいだな』
大人さんは種とは言っていない。
食べられない部分としかね。
まあ、リンゴの芯の部分に種があるけど。
「ああー、アレかー」
1人は思いだしたようだ。
「アレって?」
もう1人は首を傾げている。
「ほら、齧るとシャリッとした感じの」
「そんなのあったっけ?」
「ズシッと重量感のある堅い実だよぉ」
焦れったそうに説明している。
しばらくすると思い出したのか、しきりに頷き始めた。
「なぁんだ、アレかー。
強く握っても潰れない実ねー」
「そうそう、それそれ」
「でも、アレとこの赤い実はちがうんじゃない?」
「どうして?
両方とも赤い実だよ」
『おいっ、色々と違うだろうが』
思わず声に出してツッコミを入れそうになった。
「色だけで同じって考え方が乱暴だよぉ」
俺が指摘しなくても仲間がちゃんと対処してくれそうだ。
「そっかな?」
「こっちのはフニャフニャして柔らかそうだよ」
「ふんふん、違うね」
「それでも食べれば中に堅い部分があるんでしょ。
全体的に堅いアレとは根本的に違うよ。
それにあれは真ん中が酸っぱくて食べられなくなるじゃない。
あの部分が種とかいう物なの?
これと比較したら、とてもそうは見えないんだけど」
サクランボの軸を摘まんでそう言った。
「そんなこと言われても分かんないよー」
早々にギブアップしている。
「食べれば解決するじゃない」
「「あっ」」
大人さんの一言で解決してしまった。
『陸上の一般常識をマルチプルメモライズで教えておくべきだったな』
今回のことに関しては今更であるが。
まあ、サクランボの味は好評だったのでよしとしよう。
種についての知識も現場で得られたようだし。
こんな具合で果実のことを知っていくドルフィーネたち。
なんにせよ大半の果物には目を丸くしていた。
柑橘類やバナナのように皮をむけば美味しいとは知らなかったようだ。
「こっちは変わった食感ね」
「これは初めての感触だわ。
なんと表現したらいいのかしら」
「柔らかいのにミッシリしてる?」
「粘りけも若干あるような?」
「でも、甘いよ」
「うんうん、美味しい」
バナナも気に入ってもらえたようだ。
そして忘れてはいけないのが本命のプリン。
ホイップされた生クリームでデコレーションされている。
「ふわぁ」
「甘くて柔らかくて……」
「濃厚な味ね。
この白くてフワッとしたのがアクセントになってるわ」
「こういう時は美味しい、でいいじゃない」
大絶賛されるプリンであった。
そしてトドメはアイスクリーム。
「冷たぁ─────い」
「氷みたい。
でも氷と違って硬くない」
「これも甘くて美味しいわ」
最初は恐る恐るといった感じで手を出していたのに、これである。
あっと言う間に食べられてしまうプリンアラモードであった。
一方、別の集団。
プリンアラモードとは別の甘味が食されようとしていた。
「これ、なにー?」
受け取った瞬間に目を見張る者がいた。
そんなに驚かれると苦笑を禁じ得ない。
その台詞を聞く側としては「何度目だよ」と言いたくなってしまう。
デザートよりも前の段階で、すでに何度も耳にした言葉だからね。
それだけ彼女らにとって陸の食べ物は衝撃的であったのだ。
火で調理するという文化がないからだな。
水魔法で湯を扱うことはできるようなので加熱調理全般がダメではないそうだが。
そんな中で見た大学芋は衝撃的だったのだろう。
見たことのない食材を用いているのが最初のインパクト。
「黄色くて不思議な形」
「あ、それは切ってあるんだよ。
元はサツマイモっていう地中で採れる野菜なんだって」
「よく知ってたわね」
「作ってるところ見てて、色々と教えてもらったのー」
「なるほど」
「納得」
「でも、不思議よね」
「なにが?」
「だって、こんなのが足元より下の土の中にあるなんて」
「「「「「おおーっ」」」」」
1人が言い出したことに妙に感心するこちらの集団。
「言っておくけど、調理前のサツマイモってこんなにキラキラしてないよ」
「「「「「ええっ!?」」」」」
何故か一斉に驚いている。
考えられることは、ただひとつ。
大学芋の状態で地面に植わっているとか思っていたようだ。
『マジか……』
お陰で何処かで聞いた古い噂話を思い出してしまったさ。
魚の切り身が海で泳いでいると信じている子供がいるってやつ。
ホントか嘘か確かめようがないけど、今と同じ心境だ。
実に信じ難いが、大学芋の会話は現実である。
さすがに介入しようかと思ったさ。
調理を担当した妖精組の1人がサツマイモを出してきたので口は出さなかったが。
見学していたドルフィーネに手渡されるサツマイモ。
「これがサツマイモだよ」
「「「「「これが……」」」」」
現物を見ても信じないといったことは無かったので一安心だ。
そこからは妖精組による調理手順の説明と実演で終了である。
「とにかく食べないと」
「「「「「忘れてた」」」」」
『何やってんだか』
目の前にデザートがあるというのに。
ようやく、この一団がデザートを口にした。
「うわっ、甘ぁーい」
「ホントだぁ」
その甘さに見た目以上に驚く面々。
「カリッとしてるかと思ったら中は柔らかいよぉ」
「こんなの初めて~」
食感にウットリし。
「アハハ、口の周りがベタベタだよー」
誰かが仲間を指差して笑い出す。
「そう言うアンタだって」
笑われた方だって黙ってはいない。
指摘し返された方が口周りを指で触って確かめた。
「ありゃ、ホントだ」
気付いた途端に笑い出した。
釣られて皆も笑い出す。
「ふわぁ~、ここは天国なのぉ?」
誰かの気の抜けた台詞が聞こえてくる。
平和な光景がそこにあった。
読んでくれてありがとう。




