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588 陸に上がって……

修正しました。

初めておいてくれ → 始めて~

マイカ → マリカ

 とりあえずオオトリに跳んで来た。

 海中で炊き出しなんてできないからな。

 先に人化してもらっておいたのは言うまでもない。

 その上で全員まとめて転送魔法でやって来ましたよ。


 え? ミズホシティに跳ばなかったのは何故かって?

 向こうで炊き出ししようもんなら、国民たちが集まってくるのは必至だからだ。

 いまや総人口1万人超えだからね。

 そのうちミズホシティの人口は8千人程度。

 全員が騒ぎ出したら、さすがに収拾がつかなくなる。


『国を挙げてのBBQとか何のお祭りだよ』


 苦笑が漏れそうになる。

 いや、メニューはBBQと決まったわけじゃないんだけど。

 それより新国民たちが、ちょっと放心状態なんですがね。

 ブツブツと呟いている者がチラホラと見受けられる。


「一瞬で……」


 転送魔法だからね。


「全員を……」


 問題なく転送できるんだからピストン輸送みたいな真似はしないよ。

 面倒くさいじゃんか。


「信じられない……」


 現実だからね。

 ちゃんと事前に転送魔法のことは説明しましたよ?

 幻影魔法でオオトリの映像も見せたし。

 ミズホシティのリアルタイムな映像もね。


「凄すぎです……」


 そこは、なんというかゴメンとしか言い様がない。

 その子は腰を抜かして座り込んじゃったから。

 程度の差はあれ周りの反応はこんな感じ。


 既に体験済みのヤエナミは困ったような感じで苦笑していた。

 ああ、1人だけテンション高いのがいたわ。


「凄いです王様!

 こんなことまで軽々とできるなんてっ。

 魔力の方は大丈夫なのですか?

 並大抵の魔力量ではこうはいかないでしょう?

 やせ我慢されてらっしゃる訳ではないのですよね?

 これだけの大魔法で呪文の詠唱がなかったのも凄いですっ。

 しかも瞬間的に呪文を構築するなんてっ。

 でもでも、これは隠れ里の解体で分かっていたことですよねっ。

 あっ、そう言えばアレの直後にコレですよっ。

 空前絶後で古今未曾有で希代未聞じゃないですかっ」


 一気に捲し立てられてしまった。


「……お、おう」


 こんなの、まともに返事なんかできませんって。

 何というか「お前は誰だ」状態である。

 口調も変わっているしな。


『姿と声だけがそっくりな別人だろ』


 そんな風にツッコミを入れたくなったさ。

 拡張現実で名前の表示をオンにして確認したから間違いはないんだけど。

 そこまでしてしまうくらいの勢いがあった。


『今のが地の性格か?』


 落ち着いた雰囲気の長だと思っていたが、粗忽者な部分が見えてしまった。

 メッキがはげたというか。


 それと最後の一言はどうなんだ?

 同じような言葉を重ねに重ねて何が言いたいのだろう。

 それだけ混乱していたのかもしれないが。

 なんにせよ、またしてもポンコツ振りを見せていただきましたよ。


『いいけどね』


 別に迷惑って訳じゃないし、このくらいは可愛いもんだろ。

 苦笑は禁じ得なかったが。

 古参組も苦笑するばかりである。


「とりあえず、それだけ元気があるなら皆のフォローをしてくれるか」


 どうにか落ち着いて言ってみる。


「あっ」


 幸いなことに一瞬で興奮状態から覚めてくれたようだ。


「失礼しましたっ」


 ガバッと頭を下げた後はドルフィーネたちの方へと向かっていく。

 ヤエナミも苦笑していたが、俺に一礼してから同じように仲間の方へ向かってくれた。


「ふうっ」


 大きく溜め息が漏れた。


「自業自得じゃ」


 ガンフォールがボソリとツッコミを入れてくる。


「何にも言ってねえぞ」


「色々と顔に書いておるわ」


『鋭いな』


 伊達に年は食ってない。

 だが、俺もそうそう負けている訳にはいかんな。


「嘘つけ」


 熟練度がカンストしてる【ポーカーフェイス】スキルを使ってるんだ。


『そんな簡単に鎌掛けに引っ掛かってたまるかよ』


 冷静にガンフォールを見返す。

 しばしの睨み合いの後。


「フン」


 ガンフォールが鼻を鳴らした。

 それ以上の追及は諦めたようだ。

 ジト目で見てくるから完全勝利とは言えないな。

 やはり侮れない。

 そんなつもりはないけど敵に回すと厄介なのは間違いあるまい。


『亀の甲より年の功か』


 こういうときに逃げるようで嫌なのだが、居残り組を迎えに行かないといけない。


『連絡もなしに飯食ったとか、絶対ごねられるもんな』


「皆を迎えに行ってくる。

 スマンが、食事会の準備の方は先に始めておいてくれ」


 言った途端にビタッとマリカが張り付いてきた。

 一緒に行くという意思表示だろう。


『まだまだ子供だよな』


 というか、ラミーナモードの時の見た目はまんま幼女だからな。

 無理に置いていく理由もないので、俺はそのまま転送魔法を使った。

 が、ミズホシティへ跳んだ訳ではない。


「「「うわぁっ!」」」


 ドタドタと派手に椅子を引っ繰り返して後ろに転ぶ3人組。


「面白ぉーい」


 マリカが無邪気に笑っている。

 さすがに俺は驚かせた張本人だから笑えないけどな。


「おお、急にすまんな。

 おつとめ御苦労さん」


 ガタガタと椅子を直しながら立ち上がる3人組。

 ガブローとその側近たちである。


「脅かさないでくださいよ、陛下ぁ~。

 来るなら来るって事前に連絡をください」


 困り顔で文句を言ってくるガブロー。

 側近たちは何も言わないものの、ガブローと同じ表情でうんうんと頷いている。


「悪い悪い。

 急遽、予定変更したのでな」


 とたんに3人組の表情が引き締まった。

 急遽と言ったのは良くなかったかもしれない。


「何かあったんですか?」


「ああ、緊急事態じゃないから心配はいらん」


 その言葉にホッと息をつくが、すぐに困惑の表情になった。


「では、何があったんです?」


 当然の疑問だろう。


「色々あって国民が5百人ほど増えた」


「「「はあっ!?」」」


 見事に驚きの表情で固まる3人。


『コイツら相変わらず面白いくらいハモるよな』


「いえ、陛下のことですから何があっても不思議ではないんですが……」


 ガブローの言葉に両脇の側近たちが顔を見合わせながら頷いている。

 随分な言われようだが仕方あるまい。

 色々と非常識なあれこれを見せてきたからな。


「了解しました」


 割とすぐに立ち直ってくるのは、うちの国民として慣れてきたからだろう。


「よくよく考えると大したことではないですね」


 そう言うと、3人が「ハッハッハ」と笑った。


『ほう、そうかい』


 次の言葉を聞いても笑っていられるのかと聞きたくなってしまった。


「ちなみに新国民の種族は海の妖精ドルフィーネだ」


「「「ふぁっ!?」」」


 つい今し方より驚き具合が割り増しである。


『大したことではないんじゃなかったか?』


 そのツッコミは内心だけに留めておいた。

 でないと話が先に進まん。


「新国民のことは後で全国民にメール配信するから、そのつもりでな」


「はひ」


 すぐには動揺が抜けきらないらしくて返事を噛んでいるが、そこはしょうがない。

 了承されたので次だ。


「お前ら、晩飯食ったか?」


「まだですが……」


 それが何かと目で問われる。


「まだなら親睦をかねて食事会をするから付いて来い」


 ジェダイトシティの代表ってことだな。

 という訳でガブローを連れて行くことになった。

 側近たちは固辞したのでガブロー1人だけである。

 よく分からんが、公務以外に奴らにはすることがまだ残っているそうだ。

 プライベートではないが仕事とも言い切れないという微妙な説明だった。


「そうか、よく分からんが大変だな」


「「勿体なきお言葉っ」」


 なんだか涙を流さんばかりに喜んでいる。


『直接、声を掛けただけでこれか?

 そんなに気を遣ったわけではないんだがな』


 ノリとしては体育会系なので、そんなものかと流しておくことにした。


「まあ、これでも食って頑張ってくれ」


 倉庫から引っ張り出したプリンを渡しておいた。

 食事会に参加できないのは些か可哀相な気もしたのでね。

 この程度なら、こちらで食べるであろう晩飯にも影響しないだろう。


「「ありがとうございますっ」」


 またしても感涙一歩手前の状態になる側近組。


『だから大袈裟なんだって』


 直接、相手をするとここまで疲れる奴らだとは思わなかった。

 とにかく転送魔法でガブローをオオトリに送る。


「悪いが先に行っておいてくれ。

 ミズホシティに寄ってから向かう」


 ガンフォールにメール連絡しておいたので向こうで引っ繰り返ることはないだろう。

 食事会の準備でガブローを扱き使うはずだ。


「では、お願いします」


 心の準備ができたガブローがゴーサインを出してきたので転送した。


「俺らも行くわ」


「「お気をつけて」」


 側近組に挨拶して跳んだ。

 転送先はミズホシティの王城である。


「遅ーい」


 到着するなりマイカに文句を言われてしまった。

 こちらには定時連絡を入れていたから状況説明は必要ないんだが。

 食堂に集まって待ってくれているくらいだし。


「晩御飯、食べずに待ってたんだからぁ」


 それだけに皆を待たせるという状況が発生する訳で。


「いや、スマンかった」


 食べ物がらみで恨まれるのは怖いので、一も二もなく謝りましたよ。

 もたもたしてると更に怖い。

 早々に食事会へと向かうとしよう。


読んでくれてありがとう。

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