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557 闖入者あらわる

 戦闘が終われば3機のメタルサーバントを回収してオオトリへと帰投する。

 転送魔法でさくっと帰ってきましたよ。

 これくらいではヤエナミもとやかく言わなくなっていたのは収穫だ。

 輸送機から降りて倉庫に仕舞った。


 ここからはシミュレーターを用意して訓練が始まる訳だ。

 それと皆が希望する機体を作らねばならない。


『これが意外と大変なんだよな』


 既にある分ならコピー錬成するだけなので大した手間ではないのだが。

 熊谷さんとかはマッカイの改造品のように思えて別物だからな。

 バランスとかをシミュレーションし直さないといけないのだ。


 すなわち一からの作り直しに近いのだ。

 でも、外装とか流用できるパーツがあるだけマシかもしれない。


『ズワクマリナーやズワクダイバーなんかは作ってないからなぁ』


 これらがなかったことでトモさんにダメ出しされてしまったし。

 赤スゴークを回収直後に飛び降りてきて──


「ズワクのバリエーションは基本中の基本だよ!」


 開口一番の台詞がこれである。

 拳を握りしめて力説されてしまいましたよ。

 いきなりでビックリさせられたわ。

 どこかの元プロテニス選手じゃあるまいし暑苦しいったら。


「真のグランダムファンであるなら絶対に忘れちゃいけないよ!」


 そこは同感なんだけどさ。

 あまりの勢いに気圧されて言葉が出てきませんでしたよ。


「すまんこってす」


 結局、謝るしかできなかったさ。


『でもなぁ……』


 後でよくよく考えてみたらトモさんだって忘れてたんだぜ。

 機体選択の時にズワクのことは何も言ってこなかったんだし。


 蒸し返してとやかく言うのは面倒だったから言わなかったけど。

 指摘しても目をそらされるのがオチか。

 あるいは何かしらの方法で誤魔化されるだけだと思う。

 まあ、リクエストがあれば作るだけだ。


『そういや宇宙用ポッドのビーズから派生した水中用のやつもあったような』


 人型ですらない球体の機体まで設計しないといけないということだ。

 面倒くさい話である。


『こんなことならオリジナルの機体の方が良かったかもな』


 あるいはバリエーションの少ないメカもののアニメを参考にするべきだった。

 異星人侵略者に火星に追いやられた人類の地球奪還のやつとか。

 バイクがパワードスーツみたいになるんだよな。

 メインマシンはロボットに変形する戦闘機なんだけど。


『でも、あれって水中戦闘がなかったような気がする』


 少なくとも水陸両用とかの機体は無かったと思う。


『ネックは水中で戦闘可能な機体があるかどうかなんだよな』


 それを考慮すると選択肢が減ってしまうのが悩みどころである。

 何にせよ今更だ。


 たぶん他のアニメ作品をチョイスしても状況は変わらなかったと思う。

 トモさんからグランダム関係をリクエストされていたはずだから。


『頑張るしかないってことだな』


 そう思って軽く溜め息をついたときだった。


「ん?」


 不意に気配を感じた。

 普通の視野範囲にはいないようなので気付いた者は俺以外にはいないようだが。

 それでも明らかにオオトリの敷地内に構築した結界内に侵入してきている。

 が、無理やり入ってきた感じじゃない。


『図々しい奴だな。

 許可も得ずに人の家の敷地に上がり込んで来るかよ』


 そもそも国民でない者がミズホ国に無許可上陸している事実が俺を苛立たせた。

 コソコソする感じではなかったので叩き出そうとまでは思わなかったが。

 堂々と徒歩でこちらに向かって来るようである。


『相当な自信があるってことか』


 舐めない方が良さそうだ。

 相手の出方によっては先の展開がまるで変わってしまう。


『こんな時に誰なんだ、一体?』


 実に面倒な話だ。

 結界を無理やりこじ開けて侵入しようとする輩だったら問答無用でタコ殴りだったぞ。


『その方が楽だったかもな』


 結界が反応しなかった時点で敵でない可能性が高い。

 敵意のある相手や危害を加えうる相手を弾くための結界が反応しなかった相手だからな。

 反応する相手は侵入しようとした時点で弾かれているはず。


 もしくは結界が破壊されるか。

 その場合、相手はかなりの実力者ということになる。

 最大限の警戒が必要となったことだろう。


 ジャイアントシャークどもが率いる軍勢が接近しつつあるというのに。

 ふたつ同時に対処しなければならない可能性もあるとかシャレにならない。


『冗談じゃないぞ』


 現実は結界が反応していないのだから、そういう事実はない訳で。

 荒事は回避されたと思って良いだろうか。


 まあ、セキュリティを解除したというなら話は別だが。

 しかしながら外側からそんな真似はできるもんじゃない。

 そういう風に結界を作ってあるからな。

 複雑かつ多岐に渡るダミー術式を瞬時に読み取って理解できるなら可能かもしれないが。

 身内以外でそんな真似のできる者はいない。

 できる身内は結界内に全員いるし。


『部外者で実力者かもしれなくて敵か味方か不明だって?』


 いきなり、ぶん殴るとかはできない訳だ。

 とりあえず話を聞いて判断しないといけない。

 遭遇するなり見敵必殺な相手でなさそうなのが現時点での救いか。


 とはいえ警戒しない訳にはいかない。

 正体不明の相手だからな。

 【天眼・遠見】を使ってみたが……


『誰だ、コイツ?』


 オッサンである。

 何処からどう見ても、ちょっと恰幅のいいオッサンである。

 人の良さそうな笑みを浮かべているせいか目が細い。


 もちろん身内ではない。

 万が一だが身内だったらなと考えたりしていた期待は見事に打ち砕かれた。


 そのくせ、何処かで見たような気がするのだ。

 そんなはずはないのだけれど。


『あー、チョー面倒くさーい』


 叫びたくなるくらい対処したくない。

 それでも、皆がいる場に留まり続けるのはどうかと思う。

 しょうがないので、コッソリ見てくるかと考えたときである。


「どないしたん?」


 俺の前まで来たアニスが聞いてきた。

 たまたまではないな。

 俺が気配に気付いた瞬間に少し離れた場所から見ていて気付いたっぽい。

 これでは誤魔化す訳にもいかない。


「侵入者がいる」


「ええーっ!?」


 目を見開ききって驚くアニス。

 狐耳はピンと立ち、尻尾は膨らんでいる。


『そんなに驚くようなことか?』


 一瞬、そうも思ったが。

 むしろ当然のことと言えた。

 俺の結界内に入る困難さを理解しているが故だと考えればね。


「なんやの、侵入者って!?」


「声がデカいわ、馬鹿者が」


 注意したところで今更である。

 これだけ騒がれれば皆の注目を集めないはずがない。

 侵入者と俺が言った時点で皆の雰囲気がガラッと変わってしまった。


 ヤエナミは目を白黒させてアタフタしている。

 ピリッと張り詰めた空気に不慣れなせいなのは明らかだ。

 リオンも落ち着かない様子なのは、まだまだ不慣れなせいだろう。

 いずれにせよアニスの口を塞いでおかなかった俺のミスである。


「嘘やん!?

 ホンマなん?」


『信じないのか信じるのかどっちだよ』


 内心でツッコミを入れておく。


「こんなことで嘘を言ってどうする」


「せやなー」


 などと暖気に納得していた。

 ワンタイミング遅れて──


「って、大変やがな!」


 事態の重さに反応するとか、ギャグとしか思えないんですけど。


 ただ、俺以外の国民がアニスの言葉の直後にサッと警戒態勢になった。

 そういう中でオロオロした者がいると目立つのは言うまでもない。

 言うまでもなくヤエナミのことなのだが、誰もフォローしようとしなかった。

 任せたはずのエリスまでもが、その調子である。


 それだけピリピリした緊張感が場に漂っていたのだ。

 耐えがたいプレッシャーとして雰囲気を作り出している。

 それが発生した瞬間にその空気の直撃を受けた者がいた。


「うわあっ!?」


 姿を現した侵入者のオッサンである。

 タイミングが悪かったとしか言い様がない。


「どういうこっちゃねん!?」


『あ、関西弁』


 アニス以外にもこちらの世界に使い手がいるとは予想外。

 それでも、このオッサンにピッタリだと思った。

 特に理由はない。

 なんとなくだ。


 一方で驚きながらも顔が笑っているのが意外だった。


「堪忍してえなぁ。

 ホールドアップでギブアップやー」


 シュバッと忍者たちに取り囲まれて刀を突き付けられている。

 為す術なしという感じでオッサンが苦笑しながら両手を挙げていた。


『敵意はないか』


 そこは一安心だ。

 オッサンが本気になっていたらと思うと気が気でない。

 何人の忍者たちが倒されていたことか。


「やめろ、お前たちの敵う相手じゃない」


 ギョッとした目を向けてくる全国民。

 取り囲んでいた面々は一瞬でオッサンから距離を取った。


「ほーほー、よー訓練されとりますなー」


 ニコニコ笑顔で頷くオッサン。

 たったそれだけで張り詰めた緊張感が薄らいだ。

 俺は前に進み出て、そしてオッサンに頭を下げた。


「我が配下の非礼をお詫びします」


「いやいやいや、何を言うとりまんねや!?」


 オッサンが慌てている。

 ただし、笑顔のままで。

 どうやらデフォルトの状態が笑顔らしい。


「ベリルベル様の息子さんに頭下げさせたなんて、わてが叱られてしまいますがな」


「別に叱られはしないでしょう。

 どこかのイタズラ好きの筆頭亜神のようなことをした訳じゃないんですし」


「いやはや、これは一本取られましたがな」


 ハッハッハと笑いながらペチリと掌で自分の頭を叩くオッサン。

 そう言えば名前を聞いていなかった。


「自分はミズホ国の王、ハルト・ヒガです」


「おっと、こりゃ失敬。

 わての名前はエーヴェルト。

 ベリルベル様の亜神の1人でんな。

 エヴェさんて呼んでおくんなはれ」


読んでくれてありがとう。

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