537 チラリズムとやり過ぎた結果
「色々あったが、次でラストだ」
「酷い目にあいました」
「恥ずかしかったです」
ABコンビは戦い終わってからずっと赤面したままである。
こんな調子だから、ようやく終わると思っているのかもしれない。
だからといってプラム姉妹が魔物に敗北した訳ではない。
『皆の面前で恥をかかせてしまったからなぁ』
そう考えただけで自然と詫びの言葉が出た。
「すまぬ」
「いえっ、ハルト様が悪い訳ではありません」
アンネが慌てて否定する。
「私達の油断がこんな結果を招いたのですから」
ベリーの言う「こんな結果」とは、パンチラである。
今日に限ってスカートをはいていたのが災いした。
『本来なら休みだったからなぁ』
故にスカートをはいていたのだが。
しかも彼女らの相手は翼竜2匹だったのである。
2人を一緒に戦わせたのがそもそもの間違いだった。
ジャンケンは3姉妹と違いそれぞれが参加し、順番はバラバラだったのだ。
3姉妹がそろって戦うのを知って自分たちもコンビで戦いたいと強請られた。
『それを認めなきゃ、恥をかかせずに済んだんだが』
2人で戦わせると決めた後は引き寄せる魔物の構成を変更した。
全体のバランスを取るためである。
そこで彼女らがスカートであることを失念して翼竜をチョイスしたのは俺のミスだ。
『ホバリングの羽ばたきで、あんな結果になるとは……』
ドワーフ組の3名は完全に後ろを向いた。
トモさんもあらぬ方向に首を向けていたし。
『下ネタで人をからかっても、リアルで事故が発生するとアタフタするもんだな』
俺も焦ったから人のことは偉そうに言えないが。
皆と違って自分の奥さんに恥をかかせた事実に対して焦ったという違いはあるけどね。
不謹慎だが、パンチラはちょっとラッキーだった。
他所の嫁のだったら、俺もそっぽを向いたとは思う。
見たのかって?
白だったよ。
レースのフリル付き。
さすがに堂々とは見なかったけど、一瞬でも時間があればミッションコンプリートだ。
『……アホなこと考えてないで、終わらせよう』
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デモンストレーションの取りをつとめたのはシヅカだ。
相手は10体以上の翼竜ども。
しかしと言うべきか、当然と言うべきか。
ものの数分とかからずに終わらせた。
空を飛ぶ相手であろうと関係ない。
宙に舞い上がり踊るように翼竜を仕留めていく。
『遊んだな』
それが俺の感想である。
舞い踊るように見えたのは翼竜を挑発しつつカウンター主体で戦ったからだ。
高速で飛び交う翼竜どもの突撃をスルリヌルリと躱していく。
躱し様には撫でるような手刀や肘、時には蹴りが入る。
耳が良ければ、その瞬間に骨が折れる音を拾えたことだろう。
さほど力を込めているように見えないが、翼竜は首をあらぬ方へと曲げて墜落していく。
翼竜が地面に叩き付けられる前に妖精たちがキャッチしていた。
地響きと揺れを起こさぬように気を遣ったのだろう。
あと、土煙と。
俺の前に持ってきたので倉に回収し解体していく。
解体が完了したら倉庫へGOだ。
そうこうしている間にシヅカの舞は終わった。
上空からゆっくりと降下してくる。
「さすがじゃな。
余裕どころの話ではないのう」
ガンフォールが半ば呆れたように溜め息をついた。
『レベルに倍以上の開きがあるからな』
「くうー」
当然っと自分のことでもないのにドヤ顔をするローズさん。
『なんで自慢したがるかね』
守護者仲間だからかもしれない。
「ちょっと悔しいわね」
「だよねー」
マイカとミズキが羨望の混じった視線で地面に降り立ったシヅカを見ている。
俺の近くに着地すればいいものを戦闘開始時の位置へ戻っていた。
そこから歩いて戻ってくる。
『律儀なことだ』
そんなシヅカを見て悔しいとは謎である。
マイカは几帳面な方ではない。
大雑把と言うほどでもないとは思うが。
少なくとも、そういったことに関して悔しがっているのでないことは分かるのだが。
「悔しい?」
分からなければ聞くしかあるまい。
「あの舞いっぷりを見て綺麗だと思わなかったの?」
『あー、そういうことか』
言いたいことは分からなくもない。
踊りの類いとして見るなら同意するだろう。
しかしながら、アレは戦いだ。
デモンストレーションとはいえ遊びではなかった。
歴とした命のやり取りである。
翼竜どもは一方的に命を刈り取られる立場から脱することができなかったとしても。
「いや、アレは座興の類いだぞ。
完全に遊んでるだろ。
さすがに宴会芸とまでは言わないが」
「えー」
不満げに口を尖らせるマイカ。
一方でミズキは座興と聞いて納得できたようだ。
何かに気付いたような表情になったかと思うと頷いていた。
「相手が雑魚だから通用したに過ぎないんだが」
「う、それを言われると否定できない」
そこにシヅカが戻ってきた。
「何を揉めておるのじゃ、主よ」
「大したことじゃない。
マイカたちがシヅカの華麗な舞を見て己の未熟さを悟っただけ」
「ほう、華麗に見えたか」
意外な言葉を聞いたとばかりに目を丸くするシヅカ。
だが、すぐに相好を崩して笑みを浮かべた。
「そうかそうか、遊んでみるものよな」
『やっぱり遊んでたか』
「どうして遊ぶのよ。
雑魚なんだから瞬コロでいいんじゃないの?」
『マイカよ、それを言うなら瞬殺だ』
とりあえず話を進めたいのでツッコミは内心で留めておく。
「瞬コロだニャ」
「瞬コロなの」
「瞬コロです」
「「瞬コロ……」」
子供組が反応してしまった。
どこにツボったのかは分からんが「瞬コロ、瞬コロ」と楽しげに連呼している。
グダグダになるのが嫌でツッコミを入れなかったのが裏目に出た。
不幸中の幸いと言うべきか、こちらの会話に絡んでくるつもりはないようだが。
スルーで押し通すしかあるまい。
「妾やマイカには雑魚でも、あの者には雑魚ではあるまい」
シヅカの視線の先にはヤエナミがいた。
己が皆の注目を浴びていることに気付かぬまま積み上がった翼竜を見ている。
「おっと、回収の途中だった」
会話に気を取られたために3匹ばかり残ったままだった。
慌てて倉に回収して処理する。
「あっ」
ヤエナミも目の前から翼竜どもが消えたことで我に返ったようだ。
「ショックが大きいようだな」
ツバキが気遣うように声を掛けたが返事はない。
どうにかツバキの方を見るので精一杯のようだ。
「やり過ぎたかもしれんのう」
目を閉じて反省の言葉を口にするシヅカ。
「それはローズでしょ」
レイナがツッコミのような慰めのような、よく分からない声のかけ方をしている。
「くっくくぅくうくー」
そんなことないもんと地団駄を踏むローズ。
「いや、そら無理やで」
アニスがすかさず否定した。
『まあ、俺も無理だと思う』
「マッドでしたもんね~」
ダニエラの言うように例のごとく伸びる鉤爪をシャキーンと出して高笑いしてたからね。
「くぅー」
いやぁとか言いながら照れくさそうに身を捩ってますよ。
「どうして照れるのでしょうか?」
真顔でマリアにそう聞かれても答えられないんだけどね。
それで妙に焦り始めたりするのは、どうなんだろう。
「本人としちゃ、そういう不気味さを感じさせる部分が強さだと思ってるんだろう」
「くっ、くぅくー!」
そう、その通り! だそうで。
『本当かよ』
適当に言っただけなのに。
まあ、当人はそれだけ強さにこだわりがあるみたいだけど。
だからこそ、やり過ぎてしまうのだ。
少なくともローズが担当した地竜は一瞬で撲殺されていた。
「くっくくぅ、くくーくぅ」
峰打ちじゃ、死にはせぬとか言ってたがな。
ノエルにすかさずツッコミ入れられてたけどね。
「死んでる」
切り裂かなくても突き刺さなくても死ぬときは死ぬ。
鉤爪で峰打ちとか器用なことをしながらでも死ぬ。
『しかも一撃で終わらせてるし』
そこはマシだった部分だ。
でなかったら、いつぞやの翼竜のようにタコ殴りにしてもおかしくなかった。
我慢している方なのだ。
今日はグロ注意がなかっただけマシというもの。
『あの時は目玉が飛び出してたもんなぁ……
中身グシャグシャで骨なんか原形とどめずだったし』
本当にバイオレンスな相棒である。
「くくぅ」
てへっとか言って自分の発言を誤魔化そうとしたけどね。
まあ、死んでなきゃトドメを刺さなきゃならなかったので都合は良かったんだけど。
『その後がなぁ……』
高笑いを始めたのだ。
鉤爪を伸ばしたままで。
ダニエラにマッドだと言われるのも無理はない。
「そんなん、強さとちゃうで。
単に不気味なだけやんか」
アニスの言葉は容赦がない。
「くぅくっくー!?」
そんな馬鹿な!? と崩れ落ちて四つん這いでガックリするローズであった。
目立っているけど、それよりも気になることがひとつ。
これだけ派手なパフォーマンスを演じているのにヤエナミだけは反応が薄いのだ。
『さすがにやり過ぎたか』
今更である。
読んでくれてありがとう。




