438 トラブルはつながっている?
修正しました。
部位 → 武器
『コイツら、ただのバカだ』
常連客の振りをして店で飯を食っていた連中が仲間を引き連れて戻ってきた。
リピーターではない。
日替わり定食を食ったばかりある。
とんぼ返りしてきて、もう一度あの量を食うとかあり得ない。
何処のフードファイターだよ。
まあ、仲間に紹介するために連れてきたと考えることもできる。
各々がその手に武器を手にしていなければ。
街中で抜剣するなど衛兵案件である。
すぐにツバキを使いに出させた。
幻影魔法で光学迷彩状態にすれば誰にも気付かれない。
その程度のチンピラだ。
いや、店内の様子がおかしいことに誰も気付かない時点で終わっている。
俺たちを見張るために残した連中を事前に魔法で眠らせたんだがな。
軒並みテーブルに突っ伏しているというのに変だと思わないのだろうか?
目先のことにとらわれすぎているのだとは思うが……
警戒心を持たなさすぎだ。
雑魚もいいところだろう。
「おうおう、テメエら」
喋り方まで雑魚くさい。
前に出て喋り始めた輩は猫背で出っ歯なので齧歯類を連想させる。
ハムスターとかリスとかの可愛い奴じゃなくてドブネズミみたいな奴。
実際、こいつ清潔感ゼロなんだよな。
匂ってるし。
入浴の習慣がないにしても体ぐらい拭けよって言いたくなる。
まさにドブネズミだ。
「誰の許可を得て飯食ってんだ。
ここは俺たちの許可なく入っていい店じゃないんだよ」
言っていることが無茶苦茶である。
コイツが狙っていることがなんなのかは想像がつくけどな。
ここで店員の案内を受けたとか言ってはいけない。
その一言で店員を呼びつけて難癖をつけるつもりである。
何を言おうと許さず店員か俺たちのいずれかに暴力を振るおうとするだろう。
そうやって肉体的にも精神的にも追い詰めて言うことをきかせる。
店を手に入れ店員は奴隷にする魂胆があるが故に。
俺が何故そんなことまで知っているのか。
黒猫型自動人形をいくつか放った結果である。
1体は店の奥に行かせた。
その結果として得られた情報は次の通りだ。
店は家族経営で厨房担当が次女、フロア担当が長女。
三女が病に伏せっており治療のため父親が健在な頃に借金をした。
完治はしなかったが治療により病状は安定している。
借金の利息が高く父親が無理をして他界。
母親はずっと以前に亡くなっている。
父親の葬儀が終わってから取り立てが厳しくなった。
返済を待ってもらう代わりに商人の部下には無料で食べさせなければならない。
その頃から客足が徐々に遠のき始めた。
今のままでは身売りするしか借金を返す当てがない。
支払いの最終期日が迫っている。
期日を過ぎれば自動的に借金奴隷となってしまう。
そもそも返せない額の借金ではなかったはず。
いつの間にか利息が上がっていた。
それでも割り符がある以上は向こうが正しいことになる。
何かカラクリはあるはずだが、それを暴く手立てがない。
1体は3階にいる三女の所に行かせた。
床についていたものの病気ではなかった。
三女が伏せっていた原因は薬物中毒によるものである。
この家族は騙されていた訳だ。
しかも種類の異なる複数の毒が使われた痕跡があった。
重症化する方だけが治療されているあたり質が悪い。
借金を負わせて返せないよう追い込むためだけに三女が利用された。
疑う余地はあるまい。
ムカついたので陰謀は粉砕することを決定。
三女は黒猫の自動人形経由で治療して魔法で眠らせた。
同様に次女と長女も眠らせた。
三女は体力を消耗していたから休ませるためなんだが、上の2人は違う。
チンピラを相手にする時に変に介入させないためだ。
わざわざ暗号を用意してまで俺たちのような一般客を逃がそうとする者たちだ。
眠らせていなければチンピラが荒れ始めた時点で飛び出してきたことだろう。
残りの黒猫たちには食べ終わって店外に出て行く常連客を装った連中を追わせた。
そこから得られた情報は店内で得られた情報を裏付けるものが多かった。
黒幕の正体とか追加の情報もあったがね。
名前はムハ・エコップ。
食材を主に扱う行商がメインの商人だ。
日本的な言い方をすれば卸業者である。
とはいえ、それは表の顔でしかない。
裏では法外な利息の金貸しから密輸までやりたい放題の悪徳商人である。
名前からして誰だか知らねえと言いたいところだが見覚えがある。
端的に言えば白豚だ。
こんな所でつながってくるとは想定外だったけどね。
一言も交わしていないってのに。
その分、配下のチンピラと喋ることになろうとは夢にも思いませんでしたよ。
なんにせよ入店するのにコイツらの許可など不要ってことを教えてやらないとな。
コイツらにも分かるように体で会話する方向へ持って行く感じで。
「よく言うぜ、犯罪者ども」
「ななな何だとぉう!?」
ドブネズミがあからさまに動揺した。
証拠を提示してもいないのにこれだ。
周囲の仲間たちも一様にたじろぐとは思わなかったけど。
「……………」
呆れて数秒ばかり言葉を失ってしまったさ。
この程度の揺さぶりに引っ掛かるとは思わなかったからな。
こいつら全員、自分で脛に傷を持つ身ですと自己紹介しているようなものだ。
「知っているぞ」
あえて焦らした物言いをする。
「な、何をだっ」
「貴様ら、焦っているだろう。
もうすぐ自分たちの嘘がばれるからなぁ」
「ななななな何を言っているっ」
嘘がつけないタイプの悪党だな。
直球ストレートで動揺してくれるから駆け引き不要で楽だ。
「この店が借金の形になっているのは知っている」
「「「「「─────っ!」」」」」
武器を手にしたチンピラどもが言葉を失うほど驚いている。
『マジか……』
この程度の情報は近所で聞き込みすれば、すぐに分かるだろうに。
そういうことを考える脳みそもないのか。
『こんなのでよく詐欺の片棒を担いでこられたな』
こいつらくらいバカな方が雇う方も使いやすかったのかもだが。
「その借金が貴様らの雇い主が仕組んだ犯罪行為だということもな」
「な、な、何を、言っていう」
『噛み噛みじゃねえかよ』
精一杯の虚勢なんだろうがな。
「この家の娘に毒を盛って病気だと吹き込んだろ」
「「「「「────────っ!」」」」」
いちいち驚きすぎ。
何か面倒くさくなってきたな。
そこまで態度で認めるんだったら、さっさと暴れてほしいものである。
「治療のためにと借金を負わせたよな。
特別な治療薬があると言ったんだろ。
本当は一部の毒を中和させる薬でしかないのになぁ」
「「「「「─────────────っ!」」」」」
『驚きすぎて暴れるのを忘れているのか?』
失敗したかもしれないな。
これなら安っぽい挑発の方が良かったかもしれない。
「お前らは商人ギルドが認証した証文の割り符を盾にしているようだが──」
先程まで真っ赤だった顔が軒並み真っ青になってるよ。
「こいつは偽物だよなぁ」
眠らせた長女から無断で拝借した割り符の片割れを取り出してちらつかせる。
「な、なんで、テメエが、それをっ」
「今日からこの店は俺のものだからだ」
もちろん出鱈目である。
「三女の薬物中毒を治療した代金がわりに貰い受けた」
そんなつもりは毛頭ないけどね。
この連中相手のブラフにするには丁度いい。
「ふ、ふ、ふ、ふざけふなっ」
『また噛んだ』
噛んだがドブネズミの顔は真っ赤だ。
ブラフには見事に引っ掛かってくれたか。
まあ、自分たちの獲物が横から掻っさらわれたんじゃ無理もないか。
おそらく己の失態として責任を取らされると思っているのだろう。
『もう一押しだな』
「なんだったら商人ギルドへ行って割り符合わせしようぜ」
ここで言う割り符合わせとは魔道具を用いた確認作業のことだ。
それぞれの割り符が本物であるか、そして対になっているかを確認する。
普通なら有料だが金クラスの商業ギルド会員なら無料である。
「割り符合わせの代金はこちらが持とうじゃないか、ん?」
思いっ切り馬鹿にしたような上から目線で見てやる。
分かり易いくらいにドブネズミの顔色がドス黒くなっていく。
ようやく我慢の限界のようだ。
『来るぞ』
「ぶっ殺す!
やっちまえっ!!」
ドブネズミの号令に合わせてチンピラ連中が動き出す。
動揺はしていても条件反射で体が動いてしまうようだ。
店を壊そうとする一撃はあえて入れさせる。
コイツらが暴れたという大事な証拠だ。
ただ、何人かはこちらに向かってくるが斬らせてやる義理はない。
「逃がすなよ」
「「「「「はーい」」」」」
子供組がその場に似つかわしくない無邪気な返事をする。
悪者退治をしたくて仕方なかったようだ。
まあ、店に残されていた見張り連中を眠らせた時点で事情は説明したけどさ。
真っ先にチンピラどもへ飛び掛かるとは思わなかった。
「ニャッ!」
ミーニャがさっそく1人仕留めた。
流れるように綺麗な動きだ。
振り下ろされた斬撃を半身で躱しつつ引き込んで飛び膝蹴りを脇腹に入れた。
加減してるから肝臓破裂は免れたようだが肋骨は何本か骨折だ。
「トーです」
ルーシーの後ろ回し蹴りが炸裂。
鳩尾にくらったチンピラは崩れ落ち完全に沈黙した。
「はあっ」
シェリーの回し蹴りがチンピラの顎を捉え撃沈。
「っ」
ハッピーが壁を利用した三角飛びでチンピラの顎に膝蹴りを入れる。
そこから隣にいたチンピラへとオーバーヘッドキック。
更にそれを利用して次の標的へと跳躍する。
チーも鏡合わせをしたかのように同じことをしていた。
話を聞かされて鬱憤が溜まっていたとばかりに次々とチンピラどもを一撃で沈めていく。
子供組だけで20人を超えるチンピラどもを片付けてしまった。
要した時間は1分足らず。
怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった結果だ。
読んでくれてありがとう。




