434 トラブルを呼ぶ男
修正しました。
みたが……』→ みたが……」
朝、ジェダイトシティを発った。
マイクロバスを使ったので本気のラリードライブはお預けだ。
運転はツバキにお任せである。
本気で走れないから俺がいじけてハンドルを握らないわけではない。
夜中の間にお仕事をしてきたので車中でお昼寝をしているだけだ。
眠らなくてもパフォーマンスに影響はないが機嫌に影響しそうな気がしたのでね。
実際はどうなのか不明だけれど。
ちなみに、どんなお仕事をしてきたかというとダンジョンの下見である。
魔物との戦闘は回避しつつ、パパッと見て回ってきた。
確かに上層には魔物がいなかったな。
隅々まで回ったわけではないので断言はできないけど。
1層が広いのよ、とにかく。
最上層だけがそうなのかと思って何層か見て回ったけど、何処も広かったさ。
だから端から端までを丁寧に見たりはしなかったんだけど。
少なくとも徘徊する魔物は上の方の層にはいなかった。
いないというよりは配置する余力がないと言うべきだろうか。
迷宮核が空間拡張で魔力を目一杯に使った口だ。
魔物が出ないなら攻略が楽だと勘違いする奴も出そうだな、これ。
そんなに甘い話が転がっている訳がない。
ただでさえ広い廃坑道が何倍にも拡張されている。
初級の冒険者なら廃坑道の状態でも迷うのは間違いない。
ベテラン冒険者でも中層に辿り着くのは困難だろう。
ちなみに俺が見てきたのは廃坑道の時の中層に差し掛かる所までだ。
ダンジョン化した今は下手をすると上層のかなり上の方なのかもしれない。
全層探査とかすれば判明するんだけど。
面倒なのでやっていなかったりする。
まあ、あくまで下見だからね。
ベリルママたちから警告が入った訳でもないし。
俺の勘でもヤバいって感じじゃない。
本国のダンジョンよりは気配が濃厚なので、魔物が出るようになれば使えるかな。
もちろん訓練用としてだ。
初心者向けじゃないというのが分かっただけでも儲けもの。
これをブリーズの冒険者ギルド長ゴードンに伝えておけば身の程知らずは減るだろう。
真面目にマッピングしなければ1層で迷うはず。
舐めてかかると脱出できなくなって死ぬな。
しかも、下の層へ行けば更にカオスな空間が待ち受けている。
途中までは坑道だったのに平原や森林地帯などの各種フィールドに変化するし。
坑道がベースのダンジョンとは思えない場所がいくらでもある。
何でもありのカオス空間だ。
『これに魔物が加わると危険度が跳ね上がるな』
うちの面子にはレベル制限をつけておくことにした。
他所の冒険者については知らない。
自己責任で頑張ってもらおうか。
そんなこんなで色んなことを決めたり考えたりしながら散歩感覚で下調べしてきた訳だ。
それなりに頑張ったので街に到着まではゆっくりお昼寝を続行させてもらおう。
お休み……
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マイクロバスが停車した。
予定よりも明らかに早いタイミングだ。
『休憩か』
山岳ドライブが初めての面子もいるから休みを入れてもおかしくはないだろう。
そう考えてお昼寝を続行しようと思ったのだが……
俺の耳に遠くの喧噪が聞こえてきた。
特級スキルの【遠聴】を使ったからこそなんだけど。
意味のない怒号と剣戟の音。
どう考えてもトラブルだよな。
スキルを使って聞いたのを後悔したよ。
停車している以上は聞かなくても呼ばれただろうけど。
『どうして俺は毎度毎度、面倒事に巻き込まれるかね』
ブリーズの街へ向かうとかなりの頻度で事件に巻き込まれている気がする。
今回は行きの道中でかよ。
『幸先が悪いよな』
愚痴っても始まらないので状況の確認だ。
リクライニングシートを起こして立ち上がると、運転席まで移動する。
こういう時、マイクロバスは便利だね。
「何かあるのかい?」
途中でトモさんが声を掛けてきた。
「こうして見る限りは、この先でトラブル発生」
「この先?
何も見えないけど……」
困惑するトモさん。
フェルトも同じような表情だ。
「何人かが戦ってるんだよ。
けど、状況がおかしいな」
中規模の隊商が休憩している最中に戦闘になった感じなんだけど。
どう見ても盗賊の襲撃を受けたようには見えない。
「護衛同士の仲間割れなのか?」
俺の呟きにトモさんが反応する。
「えーっ、そんなに細かく見えるのかい!?」
トモさんが目を見開いて聞いてきた。
その隣でフェルトも似たような表情をして両手を口元に当てているな。
「君らも見えるはずなんだけど」
「「ええーっ!?」」
新婚さんなのに息ピッタリだね。
それとフェルトが驚くのはどうなんだろう。
君は上位種でしょうが。
これくらいの距離なら目を凝らせば普通に見えるんだが?
見えないと思い込んでるせいで見ようとしていないんだな。
トモさんは進化して間がないから、そうなるのは分かるんだけど。
フェルトが気付いてないって残念すぎるだろ。
『まあ、いいか』
とりあえずラブラブ夫婦は無視して話を進める。
「ツバキ、バスを止めたってことは状況が把握できないんだな」
渋い表情で頷かれてしまった。
「主よ、面目ない。
普通の襲撃ではないとしか分からぬ。
内輪もめにしては最初から本気なのだ」
「だから停車したか」
再び頷くツバキ。
「あのまま進んでいたら間違いなく巻き込まれていた。
光学迷彩で向こうに発見されないようにして様子見してみたが……」
最後までは言い切らない。
見ているだけではダメだと思ったのだろう。
だが、判断材料が少なすぎて介入も迷いが入ると。
「主の推測通りにも見える。
だが、それだと手の出し方躊躇せざるを得ない」
どちらに加勢するかを決めかねるか。
「面倒な時はな、こうすりゃいいんだよ」
俺はマイクロバスから降りて魔法を使う。
まずは距離があるので魔力消費を抑えるためにメタルワイヤーの魔法。
地表スレスレを這わせて有効な距離まで近づいたら範囲魔法スリープミスト。
以上、終了である。
魔法を使って5秒とかからず一斉に崩れ落ちるのが見て取れた。
人間だけじゃなくて馬も一緒にね。
「こんな感じだ」
淡々と告げる。
これくらいでドヤ顔とかしてられん。
「なるほど、さすがは主」
もっと褒めていいのよ。
こういう時にはしゃぎそうな子供組は生憎とお昼寝中である。
カーラさんは満足そうに頷いているだけだし。
フェルトは絶句するのみ。
トモさんは決定的瞬間を見逃したらしく、首を傾げている。
『もっと褒めていいのよ?』
アホなことを考えていないで面倒事を片付けてしまおう。
倉庫からバイクを引っ張り出した。
変形する大袈裟な奴じゃなくてオフロード仕様で作ったやつだ。
バイクと言えば狼の名前を冠したのがあるよな。
あっちはオフロードじゃないけど。
そこから連想してディンゴと呼称することにした。
「先に行ってくる。
奴らの状態を確認したら衛兵を呼んでくるから見張りを頼むな」
俺はディンゴに跨がると、そう言い残してアクセル全開。
返事は聞いていない。
ディンゴの両輪が土煙を上げて一気に加速した。
バイクにしては珍しいであろう両輪駆動だ。
そこそこ離れてはいたが、本気を出して走ればすぐに到着する。
「さて、コイツらは何故に戦っていたのかな」
近寄って争った状況などを見ていく。
パッと見では特に不審な点はなさそうなんだがな。
面倒なのでささっと鑑定する。
「あー」
思わず呻いてしまう。
どちらが悪いかはすぐに判明したからだ。
この商人、犯罪歴があるじゃないかよ。
しかも常習犯のようだ。
誤魔化すような魔道具とかは持っていない。
『鑑定されないよう上手く立ち回っていたってことか』
護衛も数が多い方はグルっぽい。
『冒険者くずれね』
装備などの見てくれで盗賊を威嚇するだけの小物連中だ。
対抗していた方は少数派だったが大きな怪我をした者はいない。
『こっちは青ランクの冒険者か』
ベテランのオッサンどもだ。
そのうちのリーダーを蹴り起こす。
悪党じゃないんだから丁寧に扱えだって?
別に顔を踏みつけたわけじゃない。
自国民ならともかく、オッサンの扱いはこれくらいでいいのだ。
「っ、んっ……、はっ!」
髭もじゃなオッサンが気付いた。
俺の魔法が些か強すぎたようでボーッとしていたが、ふと我に返る。
「だっ、誰だ!?」
勢いよく起き上がろうとしてふらつく。
「くっ、何だ?
体が重い」
体の方が覚醒し切れていないようだ。
下手に暴れられるよりは都合がいいので、そのままにする。
「俺の魔法の影響だな。
状況が分からんから全員まとめて眠らせた」
「魔法だと?」
うろんげな目を向けてくる髭もじゃオッサン。
俺の出で立ちが魔法使いとは縁遠いから疑わしいと思っているのだろう。
口で説明するのは面倒なので悪党連中を魔法で縛り上げる。
ロープは錬成魔法で作り上げ、理力魔法でまとめてホイだ。
「これでどうだ?」
途中から呆然とした表情になったオッサンが「あ、ああ」と返事をしながら頷いた。
「アンタ、一体……」
絞り出すような声で聞いてくる。
「俺は賢者だ」
そう言ってニヤリと笑ってやった。
読んでくれてありがとう。




