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418 引き受けることになった

 隠れ里組の他の面々はまだ目覚めない。

 フェルトはそれが不安になって声を掛けたかったようだ。

 エリーゼ様がいるので畏れ多くてできなかった訳だが。


「落ち着いたか?」


「……なんとか。

 申し訳ありません」


 ションボリ状態のフェルト。

 バフが少々弱すぎただろうか。

 だが、呂律すら怪しかった先程と比べれば遥かにマシになっている。


『少し様子を見た方がいいか』


 調整が上手くいくとは限らないからな。

 悪化しては意味がない。


「別に謝ることはないだろうさ。

 何も悪いことはしてないんだし」


「そうそう、隠れ里の代表なんでしょ。

 もっと堂々としなさいな」


 エリーゼ様が俺の言おうとしたことを横から掻っさらっていく。

 悪気はないと思う。

 だけど受ける側の心理状態というものへの配慮がほしい。


 え? お前が言うな?

 ……ナンノコトダカワカラナイヨ。


 幸いにしてフェルトが壊れることはなかった。

 物凄く肩を縮ませてしまってはいたが。

 そういうのは話を先に進めた方が気にならなくなるだろう。


「今までの経緯とかその他諸々は理解できたな」


「はい」


 俺の言葉がちゃんと耳に届いている。

 ならば話を進めても大丈夫だろう。


「仲間が目覚めないのは、その辺りの記憶が定着してないからだ」


「えっ?」


 困惑の表情を浮かべるフェルト。

 なぜ自分だけが先にと思ってしまうのだろう。


「能力的な問題だ。

 フェルトだけ理解のスピードが違う。

 あの集団の中ではレベルが突出してるからな」


「はあ……」


 そんなものなのだろうかと思っているのだろう。

 実感できないから納得しきれないということだ。

 これ以上は言葉を尽くしても、あまり効果はないはず。

 故に別の話題に切り替える。


「惑星レーヌに帰ったらどうする。

 西方で住める場所を探すか」


 海エルフの所なら陸側に土地はある。

 ゲールウエザー王国と接することになってしまうのが彼女らには難点か。


「あ、ちょっと待って」


「はい?」


 ここで、まさかの割り込み。

 エリーゼ様である。


「この子たちと海エルフ全員ね、ハルトが面倒見なさい」


「はいぃ──────────っ!?」


 肯定の「はい」ではない。

 訳が分からなくて咄嗟に出た言葉がたまたまそれだっただけだ。


「国民として受け入れろってことですか?」


「そうよ」


「くっくう、くっくぅー!」

 検索完了、全員合格ー!


 霊体モードからいきなりポンと実体化してきたローズさん。

 夢の世界から出てきたのに大人しいままだと思ったら、そっちの仕事をしてたのね。

 こうなることを見越していたのか。


「あわわわわ」


 あー、またフェルトが腰を抜かしちゃったよ。


「飛賀くん、凄い凄いよ!

 デッカい縫いぐるみがリアルに動いてる!」


 なぜかスイッチが入ってしまった純田くんが興奮気味に話し掛けてくる。


「くっくくぅくっくうくー!」

 縫いぐるみじゃないのだ! と憤慨して地団駄を踏んでいるローズ。


「くくぅくっくっくうくーくくぅ、くうくーくくっくぅー!」

 神霊獣にしてハルトの守護者兼、相棒のローズさんだぞ! だそうで。


 自慢げに両手を腰に当てて胸まで張ってますよ。


『あー、種族までバラすのかよ』


 頭に血が上りすぎである。

 これはもうエリーゼ様の言う通り彼女らを受け入れるしかなくなったな。

 ローズのお墨付きだから構わないんだけどさ。


 何かモヤッとしたものはある。

 現状が混沌としてきたからだろうな。

 事態を収拾させるのは俺なんだぜ。


「純田くん、ローズに謝っといてね。

 見た目は可愛いけどプライド高いから」


 返事は聞かずにフェルトのフォローに回る。

 背後でローズと純田くんが話し始める様子がうかがえたが、目の前に集中だ。

 失敗すると余計に混乱しかねないからね。

 現実から目を背けているとも言う。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 あれから小1時間。

 フェルトを落ち着かせて純田くんとローズが話をつけるまでに要した時間である。


『あー、疲れた』


 肉体的には微塵も疲れてはいないんだがなぁ。

 フェルトには落ち着かせる過程で俺らの事情を話しておいた。

 でないと、どこでスイッチが入って混乱されるか分からんからな。

 話をしつつ同時に魔法で落ち着かせるための繊細な制御をしていた。


「女神様の御子息に御息女ですって!?」


 興奮したらデバフを使う。

 強すぎると鬱っぽくなるので慎重に。


「神霊獣に聖天龍……

 どちらも神獣と同格ですか……」


 少しデバフが強いと感じたらバフを弱めにかける。


「国民が上位種の方ばかりなんですか?

 えっ、半妖精が最初の国民!?」


 バフの加減は良くても話の内容で興奮状態になったりもする。

 なかなか一筋縄ではいかない。


 だからこそ時間がかかったとも言えるのだが。

 まあ、背後の2人がずっと話し込んでいたから問題なかったけど。

 よくよく考えたら気疲れしたのは自業自得だな。


『アホだ、俺』


 少しだけ自己嫌悪に陥るが反省はしない。

 面倒だからな。


 なんにせよ、エリーゼ様との話を再開する。

 フェルトたちを受け入れる覚悟はした。

 が、言い出しっぺを追及しないままでは納得がいかないのでね。


「隠れ里の一同を国民として受け入れるのはお引き受けします。

 ですが、依頼内容の範囲を逸脱していますよね」


 隠れ里組を惑星レーヌに連れ帰るのがエリーゼ様の依頼だった。

 何処に連れて行くかはフェルトたちの希望を聞くという条件で。

 場合によっては彼女らの意思でミズホ国へ連れて行くことになっていたかもしれない。

 だが、今回はエリーゼ様の御指名である。


「納得のいく説明がないと俺も彼女らも後に禍根を残すかもしれません」


「ミズホ国以外だと何処に行ってもトラブルが発生するからだそうだけど」


「だそうって……」


 呆然とした表情でフェルトが呟いている。

 無責任に聞こえるからだろう。

 しかし、俺はその「だそう」で納得がいった。


「ベリルママがそう言ったんですね」


「そゆこと」


 確信に近い推測を質問してみたがアッサリと肯定された。


「フェルト、俺たちの世界の管理神のお墨付きだ」


「っ!?」


 言葉がないらしい。

 それでも今までの話などで慣れてきたようだ。

 どうにか受け止めることはできたみたいだな。


「海エルフも何かトラブルに巻き込まれるのですか?」


「レオーネちゃんが可哀相だからだそうよ。

 あの子が言うには「寂しい思いをさせちゃダメよ、ハルトくん」だって」


 ガクッとずっこけた。

 過保護というか身内びいきが過ぎるというか。

 言っても始まらないとは思うけど。


 でも、たぶん理由はそれだけじゃないだろう。

 欠片がらみのトラブルに巻き込まれる恐れがあるんじゃなかろうか。

 でなきゃ海エルフ全員をなんて言わないと思う。

 まあ、追及しても答えてはもらえなさそうだけど。


「分かりました。

 そちらも引き受けます」


 たぶん海エルフの説得は終わっているだろう。

 こんな話を持ち込んでくるぐらいなんだし。

 なんてことを考えていたらエリーゼ様にジーッと見られていた。


「迎えに行くだけでいいからねー」


 にこっと笑いながら言われてしまった。

 考えていることを読まれてしまったようだ。


「読んでないわよ」


『ぜってー読んでるだろっ!』


 ツッコミは心の中だけに止めておいた。


「話は変わるけど」


 まだ何かあるのだろうか。

 面倒なことは勘弁願いたいものである。


「これが今回の報酬よ」


 光る球体が手渡された。


「なんすか、これ」


 ライトの魔法なんてオチはない。

 俺の掌の上で浮かんでいた光球が勝手に沈み込んでいく。

 スキルの種の時と似ているが、もちろん違う。


「こっちの世界のアニメやゲームなんかのライブラリだね。

 新作が出たら追加されていくようにしてあるから」


 そういう趣味がないと嬉しくない代物だ。

 まあ、俺にはうってつけだ。

 ちゃんと理解してらっしゃる。

 しかも未来の分まで貰えることが確定しているのは嬉しいね。


「ありがとうございます」


「約束したものだからね」


 さっそく中身を確認してみる。

 手渡された時は光球だったけど、俺の中ではカードになっている。

 上半分がイラストや写真か。

 残りは説明文だ。


 ジャンルはアニメとゲームだけじゃない。

 特撮と一部は海外ドラマや映画なんかも入ってる。


『新旧のナイトドライバーがあるじゃないか。

 碌にビデオ化もされてないハイテク万能車ボアまで。

 エアハウンドにブルーライトニングなんかもある!』


 メカ系のやつが選ばれてるのかと思ったらそうでもなかった。


『プリテンデッドガイとか知る人ぞ知るやつだろ。

 おおっ、ジョン・クロード・ヴァダムの映画もそろってる!』


 ゲームの方も凄い。

 俺も知らない年代のものから最新のものまですべてある。

 世代的には被っているはずなのにマイナーすぎて知らないのもあるぞ。

 あとアナログゲームも資料として網羅されている。

 レプリカを作る時なんかに大いに役立つな。


読んでくれてありがとう。

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