↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/1785

414 ひれ伏す者とそうでない者

「やあ、諸君!」


 ビシッと右手を挙げて元気よく挨拶。

 それを見た俺の印象は「似合ってねー」である。

 実にエリーゼ様らしい行動なんだけどね。


 着ている服のせいで、ちぐはぐ感が半端ない。

 シックな感じのイブニングドレスだもんな。


 しかも、そういう服装が似合う容姿をしているから尚更である。

 本人はまるで気にせずノリノリで自己紹介を始めたけどね。


「私がセールマールの管理神エリザエルスだ」


 両手を腰に当てて胸を張ってその挨拶だからスタイルが目立つこと。

 うん、大きくてらっしゃる。

 それなのに色気を感じない。

 強いて言うなら「男前」だろうか。


「ヨロシクな!

 それから私のことはエリーゼと呼んでくれたまえ」


 言い終わると「ハッハッハ!」と高笑いし始めてしまった。

 相変わらずノリが軽い。


『これでベリルママと従姉妹どうしだっていうんだからな』


 見た目が似ているだけにギャップが凄い。

 いや、酷い。

 せっかくの美人さんが台無しである。


『残念すぎるだろ』


 本当にベリルママの従姉かよと思ってしまうのは仕方のないことだと思う。

 まあ、溢れ出るかのような威厳を前にすると認めざるを得ないんだが。


『これがなけりゃ、そっくりさんだと思ったかもな』


 周囲を見ると土下座だらけである。

 隠れ里組は言うまでもなく。

 うちの面子も土下座だらけ。


 エリーゼ様も一応は控えめにしてくれているんだけど。

 セーフなのはミズキとマイカに俺の守護者組。

 それと古参組だな。


 妻2人は自分の親だから平気なのはむしろ当然と言えるだろう。


 守護者組が平気なのはベリルママと会ったときに実証済みだ。

 マリカはちょっとどうかなって感じだったけど、今回は大丈夫みたい。


 古参組が平気な理由はなんだろうね。

 俺との付き合いが長いから?


 それならガンフォールだって似たようなもんだと思うのだが。

 生憎と当人は土下座モードで撃沈だ。

 違いと言えば、うちの国民になった時期か。


『俺の側にいることで耐性がついたとか?』


 ふと、思ったことだ。

 乾いた笑いが出そうになる。


『それって俺も神様的な威厳を放出してるってことじゃないかよ!』


 脳内修羅場である。

 そんな物騒なものを放出した覚えはないのだ。


 が、月影の面々を国元に連れ帰った時のことが頭の片隅を過ぎる。

 俺も土下座されたっけ。


『懐かしいな』


 色々と説明して連れ帰った直後くらいのタイミングだったはず。

 土下座の切っ掛けが城を見てっていうのが笑えるよな。

 城のデカさにビビった瞬間に俺の説明した諸々を実感してというのが真相のようだ。


 それまでも得体の知れないプレッシャーは感じていたそうだが。

 その事実については笑えない。

 俺も無意識のうちに微量の威厳めいたものを放出していたことになるからな。


 人間でありたい俺としては嬉しくない話だ。

 現状は亜神にすら及ばない程度ではあるようだけど。


『シャレになんねえぞ』


 まだ人前に出るなり土下座されるなんてことはないようだけど。

 先々でどうなるかは読めない。

 [女神の息子]というファクターがあるからな。


『半神化が進めば……』


 俺もベリルママやルディア様みたいな威厳を放つようになりかねない訳だ。


『いらねえって』


 拒否したいところだが既にある。

 神様や眷属たる亜神からすれば微々たるものだけど。


『そりゃ月影の面々に耐性がつく訳だよな』


 国民になって、ずっと側にいたんだし。

 強い刺激ではなく弱い刺激を受け続ける状態で徐々に慣れていく。

 ある意味、減感作療法のようなものだ。

 神様の威厳をアレルギーと一緒にするのはどうかと思うけど。


 とにかく俺の庇護下に入ると耐性がつくようである。

 ただし、時間はかかる。


 現にガンフォールにはまだ耐性がついていないようだ。

 そして豊富な人生経験をもってしてもダメだったと。

 まあ、シヅカが真の姿を見せた時も腰を抜かしたくらいだからなぁ。

 しょうがないのか。


 ガンフォールがダメならハマーとボルトがアウトでないはずがない。

 3桁近いレベルになったせいでジャンピングかってくらい素早かったもんな。


 土下座をシュバッと決めても格好良くはないんだけど。

 そもそも彼等の内心を考えるとスマートさとは縁遠いだろう。

 外見上はピクリとも動かないが心中は動揺に動揺を重ねるような状態のはず。


 この両名よりも動じないタイプだと思っていたエリスも撃沈するくらいだからな。

 さすがに元王族であっても神様の前ではただの人だったようだ。

 エリスが土下座モードに入るなら妹であるマリアやクリスたちが平気でいられるはずもなし。

 クリスの天然も神様相手だと不発に終わった訳だ。


 で、彼女らが撃沈するならアンネとベリーのABコンビは言わずもがな。

 2人で綺麗に並んで伏している。


 そしてベリルママと会ったことのあるレオーネさん。

 あえなく撃沈です。

 神様との遭遇が2回目くらいじゃ慣れないらしい。


 単純に回数が条件だとは言えないだろうけど。

 そこを気にしてもしょうがないか。

 現状をどうにかできる訳じゃないし。


 さて、この状況をどうやって落ち着かせるのだろうね。

 エリーゼ様のお手並み拝見といこう。


「飛賀くん、凄いよ!」


 純田くんが興奮した様子で話し掛けてきた。

 彼も影響のない側の人間だ。

 まあ、エリーゼ様の息子になった訳だからな。


「こんなに生土下座を見たのは初めてだっ」


 カッと目を見開いて芝居がかった言い方になっている。

 態とらしさをプラスしてくるのは動揺しているのが恥ずかしいからだな。

 無理もない。

 数千人規模の土下座を目の当たりにすることなんて普通はないだろうし。


 だから照れ隠しをしているのである。

 俺はまったく気にならないんだけどさ。

 そんなことより純田くんの言ったことの方が気になった。


「土下座を生で見たことあるのかよ」


 思わずツッコミを入れてしまったほどである。


「あるよ」


「あるんかい」


「色々あるんだよ」


 そう言われると深くは追及できない。


「そういう飛賀くんは、どうなんだい?」


「俺は今の世界の住人になるまでは見たことないよ」


「へえー、こっちじゃないんだ」


「なかったね」


「役所で土下座する人とかいないんだ?」


 さも意外そうに聞かれてしまった。


「変な人は来ることがあるけどね。

 少なくとも俺は見たことがないよ」


 絶対にないとは言わない。

 各種窓口がある以上、トラブルと無縁ではないからな。


「変な人?」


 あ、そこに食いつくんだ。

 しょうがないので幾つかの事例を紹介しておいた。


「何処の世界も大変なんだな」


「みたいだね」


 2人でしみじみと頷き合う。

 お互い若返ったのに爺くさい話になってしまった。


 こういう時は話題を転換するに限る。

 と思ったら、スルッと人影が目の前に舞い込んできた。

 エリーゼ様の登場である。


「うわっ!」


 純田くんが仰け反るようにして蹈鞴を踏んだ。

 転送魔法を使われると不意打ちのように感じるか。

 俺はうちの国民の忍者モードに慣れているから驚きはしない。


「ちぇー、残念」


 俺が平然としているのが不服らしく、エリーゼ様が口を尖らせている。

 どう考えても俺たちを驚かすためだけに転送魔法を使ったよな。

 お立ち台からここまで目と鼻の先ほどしか離れてないんですが?


「子供みたいなことしないでくださいよ」


 そっぽを向いてピーピーと口笛を吹くエリーゼ様。

 俺が注意しても聞く気はないらしい。


「純田くんがマジで驚いているじゃないですか」


 そう指摘すると、こちらを向いた。


「いやあ、ゴメンゴメン」


 片手を後頭部に当てて「アッハッハ」と笑うエリーゼ様。

 どこまでも残念美女な人である。


 エリーゼ様が態とらしく笑っている間に周囲を見渡した。

 土下座は維持されたままのようだ。

 うちの国民たちは顔を上げてこちらを見ているけど。


 困惑気味だね。

 おそらく急にエリーゼ様から威厳という名のプレッシャーを感じなくなったからだろう。

 隠れ里組が土下座を維持しているのは眠らされているからのようだ。


「酷いやり口で睡眠学習に持ち込みましたね」


「えー、だって面倒くさいし」


「そうじゃないかと思いましたよ」


 俺は溜め息をついた。

 近距離なのに転送魔法を使った理由にも気が付いたからだ。


「純田くんを驚かせて意識の空白を作りましたね」


「え?」


 当の純田くんが自分の名前を出されて怪訝な表情を見せた。

 何をされたのか気付いていないようだ。

 意識に空白ができる時間なんて数秒にも満たないから当然である。


「よく分かったわね。

 ちょっと試したいことがあったのよ」


「何したんですか?」


 疑いの眼差しを向ける。

 油断も隙もあったもんじゃない。


「大丈夫、大丈夫。

 いくつかスキルを渡して起きている状態でも記憶転送できるか試しただけだから」


 鑑定して確かめてみる。

 確かに先程まではなかったスキルを取得しているな。


 まずは【ヘルプ】【チュートリアル】【システム】の3点セット。

 こういう時の定番である【鑑定】。


 【並列思考】と【高速思考】があるけど、これを使って記憶転送の時短を実現させたな。

 受信側の理解が追いつかないと高速で送信しても意味ないし。


 後は実用性の高い【魔導の極み】【気力制御】【格闘】あたりだな。

 一般スキルの【格闘】以外はすべて特級スキルだ。

 大盤振る舞いと言うには神級スキルがない。

 ただし熟練度は最初からMAX状態。

 判断に困るところだな。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。