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358 廃棄物と集合体

「はー、疲れるわ」


 体力的に問題はないけど、思いっ切り精神を削られた。

 ヤンデレ女につきまとわれた気分だな。

 ストーカーに怯える世の女性たちの心境が少しだけ分かったような気がする。

 撃退できる俺に本当の心情は理解できないんだろうけど。


「さて、皆を呼んで帰るとするか」


 その時である。


『RRRRR』


 脳内スマホがコール音を響かせた。

 このタイミングで電話か。


「誰だ?」


 俺が着信の画面を確認する前にコール音が途切れた。

 だが電話が切断された訳ではない。


『ハァロォーウ、ハルト』


 お気楽な調子の声が聞こえてくる。

 強制的に着信されてしまった。

 こんなことをする人を俺は1人しか知らない。


『どうも、エリーゼ様』


 俺が元いた世界セールマールの管理神エリザエルス様である。

 まあ、この人しかいないよな。

 思わず溜め息が漏れそうになるのを我慢しつつ応答した。


『お疲れのようだねぇ』


 そう思うなら、そっとしておいてほしいのだが、そうもいかないんだよな。

 エリーゼ様が連絡してくるってことは相応の理由がある。

 俺と同じ面倒くさがりだからさ。

 用もなく連絡するはずがないのだ。


『用件をお願いします』


『つれないなぁ。

 まっ、しょうがないか。

 用は今回のことに関わることだ』


 今回のことって……

 凄く嫌な予感がするんだけど。


『まだ続きがあるとか言わないでくださいよ』


『うん、あるね。

 まだまだあるよ』


「……………」


 思わず膝から崩れ落ちたくなった。


『勘弁してくださいよぉー』


 心からの懇願だ。

 まだまだってのは本当に勘弁してほしい。


『今日に関してはこれで終わりだ。

 下の階層の方も気にしなくて良いぞ』


『そうですか……』


 溜め息しか出ない。


『どうした、終わりなんだぞ。

 もう一踏ん張りとは思わないか?』


『憂鬱ですよ』


『先のことなんて考えるからだよ、ん?』


 苦笑しながら確認してきますか。

 誰が、そうさせていると思っているのだろう。

 エリーゼ様に責任はないし親切でやってくれているとは思うんだけどね。

 空気を読んで明日にしてほしかった。

 そのつもりは微塵もないようだけど。


『今回のことを考えた方がいいぞ』


 考えたくないんですけど……

 言っても無駄だけどね。


『アレの正体が気にならないか』


 そう言われると弱い。

 知りたくない訳がないもんな。

 エリーゼ様なら神様のシステムにアクセスして他の世界のデータも閲覧できるんだし。


『そりゃあ少しは……』


 歯切れ悪く答えることしかできないのは、それだけ気持ちが萎えているからだ。


『アレはね、廃棄物なんだよ』


『廃棄物ですか?』


 ゴミってことだよな。

 どういうことだ?


『そう、アレの大本は神の欠片だったものでね』


『ちょっ!?』


 さらっと言ってくれたけど、とんでもない話じゃないか。

 え? 俺、神の欠片を破壊したの?

 俺にそんなことできるの?


『ああ、神の欠片そのものじゃないよ』


 どうやら俺の早とちりらしい。


『いくら君が半神化しているとはいえ、神の欠片は処分できないよ』


 ち・ょ・っ・と、待たれよ。

 何かいま恐ろしい単語を聞いた気がするんですがね。


『半神化!?

 何すか、それ?』


『えっ、そっちに食いつくの?』


 不思議そうに聞かれてしまった。


『言葉通りの意味だけど?』


 何を事も無げに仰ってくださいますかね。

 俺は自由に生きたいんですよ。

 これ以上、進化とかしたくないんですが。

 半神化とか絶対に神化のためのフラグでしょうに。


『シャレになってないんですが』


 無理やり管理神なんて真っ平ゴメンなんだけど。


『君の場合は特別だからなぁ。

 ああ、私の娘たちも同類だから心配しなくて良いよ』


 更に爆弾発言である。

 ミズキとマイカも同じって……しょうがないのか。

 女神の力で生まれ変わった俺たちは普通の人間とは違うということだ。


『余計に心配なんですが。

 俺たちは人として自由に生きたいんです』


『ああ、なんだ。そういうことか。

 限界を突破し続けなきゃ神化したりしないよ』


「……………」


 とりあえずは大丈夫そうか。

 不安が完全に払拭された訳ではないけれど。

 これに関しては、とりあえず置いておこう。

 付き合いの長い話になりそうだし。


『わかりました。

 では、続きをお願いします』


『そうかい?

 じゃあ、神の欠片は半神である君には処分できないところからだね』


 これは何となく理解できる。

 神になりきれていない者と本物の神であったモノの間には超えられない壁が存在すると言いたいのだろう。

 ここの30階層より下の何かはそれっぽいな。

 そう考えると下に行っていたらアウトだったろうね。


『ハルトが相手をしたのは、神の欠片から見れば2段階は下の存在だ』


 廃棄物ことアンノウンか。

 うん、雑魚っぽいもんね。

 話を聞いて現場に赴いた直後くらいまでは大物っぽい感じもなくはなかったけど。

 大物感は大きさだけでした。

 すぐ萎んだし。

 1段下なら、どんだけの隔たりがあるんだよと思ったんじゃないかな。

 越えられない壁があるのは、まあ分かるんだけど。


『1段下ってのはどんな奴なんです?』


『神の欠片を初期に処分した際に出た灰や塵の集合体だな』


『要するに仕留め損ねたと』


『そうとも言うね』


『そうとしか言いません』


『そだっけ?』


 もうやだ、この神様。

 だが、重要な情報を聞いている最中だ。

 気を取り直して話に集中する。


『神の欠片と比べれば大幅に劣化してるからハルトなら対処できるかな』


 断言されていないのが嫌なところだ。


『問題は他所の世界で集合体になったことだな』


 鑑定不能のことを言っているのだろう。

 それだけでは無い気がする。

 2段下のアンノウンでさえ鑑定不能だったんだから。


『弱体化してるが特殊能力も身につけている』


 凄く嫌なことを聞いてしまった気がするんだけど。


『特殊能力って相手の精神に介入して魅了するとかですか?』


 あれのパワーアップ版だったら嫌だなぁ。


『それは廃棄物の方の固有能力だね』


『え?』


『その能力が邪魔だったんだろうな。

 集合体から追い出されるように切り捨てられたんだよ。

 ある意味、排泄と言った方が適切かもしれない』


「……………」


 言葉がない。

 にわかには信じがたい話だ。

 あんな能力があれば困ることはないだろうに。

 そう考えて、ふと疑問に思った。

 困るって何が困るんだ?

 そもそも集合体が何なのかサッパリ分からん。


『結局、集合体って何なんですか?』


 神の欠片の燃えかすの集まりというのは聞いた。

 だが、それだけじゃ無い気がするのだ。


『やはり気になるか』


『気にならない方がおかしいでしょう』


『それもそうか。

 集合体はね、死者の魂と融合しているんだよ。

 死にたくないと生に執着した魂が燃えかすを引き寄せたんだな』


『アンデッドということですか?』


『ああ、違う違う。

 魂が燃えかすを吸収できたらアンデッドになっただろうけどね』


『神の欠片の成れの果てでも人間が御しきれるものではないと』


『そういうことだね。

 ただし、人間に限らずだ。

 比較的高度な知能を有する魂が、アレを引き寄せやすい。

 それでもアレには魂の方が飲み込まれてしまった訳だが。

 その表現も適切ではないかな。

 自我はアレに吸収されて残っていないけど魂は死者のものだからなぁ』


 どうにもややこしい話だ。


『魂は消えていないけど中身が置き換わったみたいな感じですか?』


 自分で言ってて、いまいちピンと来ない。


『だいたいそんな感じかな。

 適切な語彙が見つからないね。

 とにかくアレは神の欠片の燃えかすでもなく死者の魂でもない存在だ。

 基本はアレの意識が支配するはずだ。

 が、感情や記憶は死者のそれに引っ張られている部分がある』


『生まれ変わったようなものなんですかね』


『そうだな、それが感覚的には一番近いか。

 より死に近い存在ではあるがアンデッドでもないし』


 本当にややこしい奴みたいだ。


『じゃあ集合体の特殊能力って何なんですか?』


『魂の吸収と同化だよ』


「……………」


 激しく嫌な予感がする。


『死んでいようが生きていようが魂を糧にする。

 糧にされた魂は二度と輪廻の輪の中に戻れない』


 存在の消滅ということか。

 最悪だな。


『糧の中で不用とされたものが廃棄されるようだ。

 しかしながら、その魂も輪廻の輪には戻れない』


 ああ、それで排泄なんだ。

 食べた跡の残りカスって訳だね。

 廃棄物の能力はそういう風に判定されたようだ。


読んでくれてありがとう。

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