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359 後先考えるなら逆恨みなんてしない

『とりあえず、廃棄物のデータは鑑定できるようにしておいた』


『ありがとうございます』


 ちなみに[アンノウン]で表示されていた廃棄物のデータも確認できたよ。

 過去ログを見たら置き換わっていた。

 有り難いけど脱力ものだ。


 気を取り直して確認していく。

 結論から言えば、今回の廃棄物の総合評価は亜竜の何割増しという程度だった。

 あの催眠攻撃がなければ、ほぼ同等だね。

 つまり女の子なら亜竜感覚で戦えたってことだ。

 防御に特化しているので手こずる可能性はあったけど。


 その上、骨とか脳とかないもんね。

 首ポキが使えない。

 その上、逃がすと魂を喰らって再生するとか質が悪すぎるだろ。


『今後も廃棄物は出てくるだろうから注意してねん』


 重要な情報をサラッと言われるとムカッとしつつ疲れる。


『なんで、この世界に廃棄するんですか。

 異世界産なんでしょ、集合体って』


『廃棄物も魂の記憶に引きずられるからだね』


 それは集合体がこの世界の魂を喰らったということだよな。

 世界の垣根を越えて魂を集めてるのかよ。

 輸入牛肉の感覚か。

 それとも高級食材か。

 いずれにしてもゴミを送り返すとか理解できない。


『産地にゴミを返すようなもんですか』


 ゴミはゴミでも実害をもたらす産廃だけどな。

 ああ、だから自分の近くに捨てないのか。


『うまいこと言うねえ。

 座布団、いるかい?』


 エリーゼ様も俺が元日本人だからって小ネタを挟んでくるよな。

 テレビとかどんだけチェックしてるんだよ。


『いりません』


 チェックの労力の程は知らないが付き合わないぞ。


『ところで気になったことがあるんですが』


『何かな?

 お姉さんに言ってみたまえ』


 親戚のおばさんでしょうが、とは口が裂けても言ってはいけない。

 思い浮かべただけで警戒警報が頭の中で発令された。


『廃棄物だけでもかなり危険な存在ですよね』


『そうだね』


『集合体も魂を喰らうみたいですし』


『アレは選り好みするようだから廃棄物ほどじゃないけどね』


 量より質ってことか。

 どっちでも質の悪いことに変わりはない。


『思うに魔神が出現した時と同等以上にマズい状況なんじゃないですか』


『あー、そこに気付いちゃうかー』


 できれば気付いてほしくなかったみたいな口振りだ。

 けれど普通に考えれば気付かないはずはないよな。


『対処はしてるんだけど追いつかないというのが現状だね』


 追いつかないって……


『だから集合体ですか』


『そこにも気付いちゃったか』


 俺は返事をしなかった。

 確証を持って言ったことじゃないから。


『集合体って神の欠片より探しにくいんだよね。

 反応がすっごく弱いのよ。

 その上、単体じゃないから質が悪いったらありゃしないんだわ』


 やはり複数の意識が集まった存在のようだ。


『ひとつ消しても、他が残る。

 おまけに魂を喰らえば元と同じ規模に戻る。

 魂という器を用意してデータを流し込むだけだ。

 基本情報を共有しているからバックアップも完璧。

 器が変わるから丸々同じではないがね』


 半永久的に無くならないだろ、それ。


「……………」


 責任者出てこいの心境だな。

 でも、まあ誰もこんなものができるとは思っていなかったはず。

 追及しても始まらんか。


『増えないように監視体制を強化はしている』


 おまけに増えるようだ。

 監視を強化していると言われても安心できない。


『向こうも警戒心が強くてね。

 隠れるのが上手いし逃げ回るし手を焼いているよ』


 神様が手を焼くのかよ。

 まるでヘルペスウィルスのようにしつこそうだ。

 水疱瘡とか帯状疱疹の原因と言った方が分かり易いか。

 あれって一度感染すると一生ものらしい。

 大人になっても免疫が低下すると発症するそうだ。


『どうにか潜伏先から誘き寄せて一網打尽にできないか上の方で検討中だよ』


 上の方って……

 これ、お気楽に言ってるけど機密情報じゃないのか?

 聞かなかったことにしよう。


『集合体が極めて厄介なのは理解しました。

 廃棄物が排出されないようにもできないんですよね』


『それについては多少の効果はあるぞ。

 監視体制を強化したから供給が減っているはずだ』


 排出する方も減ると仰りたいようで。


『それじゃあ今回の一件はどういうことなんでしょうか』


 廃棄物だけじゃなくて集合体もいたみたいだし。

 俺たちを狙って来たんじゃないのかとさえ思える。

 直接、目の前に現れなかったのは誤差とも考えられるし。

 異世界間の移動と考えれば微々たるものだろう。

 それか追っ手に妨害を受けたか。

 とにかく大挙して押し寄せられた気がしてならないのだ。


『やけに俺たちのいる所に集中して来たと思いませんか』


『下に来た奴らにはそういう意図があったことは否定しない。

 だけど、廃棄物は奴らに引きずられる形になっただけだ。

 あれだけ離れた場所にいたのは、最後の最後で落ちたからだよ』


 奴ら、か。

 廃棄物とは別の存在で俺は接触を禁じられた。


『やっぱり集合体なんですね』


 ということになる。


『半分正解』


『どういうことですか』


『奴らは集合体ではなくなっている。

 元集合体と言うべきだろう』


『元ですか』


『これは推測になるが』


 そう前置きをしてエリーゼ様が話し始めた。


『ここに来た奴らは集合体の中で爪弾きにされて切り離されたようだ』


『仲間割れってことですか』


『恐らくはそうだろう。

 集合体としての能力を大幅に失っていたから』


 爪弾きの根拠はそこにありそうだ。

 まあ、分からなくはない。

 何があったかは知らないが、向こうの事情など知りたくもない。


『それと、さっき処理完了の報告があったけど驚くよ。

 ハルトにも関わりのある人物が含まれていたからね』


 関わりがあるというか俺に恨みのある人間だよな。

 でもって死んでる奴。

 思い当たる相手は何人かいるね。


 特に執着しそうなのはネイルだろうか。

 ボルトの兄だが、あれはもう生きてはいないはずだ。


 後はノエルや月狼の友を襲った熊男とか。

 確か名前はコーマックだったか。

 でも奴には顔を見られていないしなぁ。

 死んだら別の感覚で相手のことを認識するとかだったらないとは言えないか。

 魔力の波長とか。


 それだったらアイツも該当するかな。

 ジョージ・ギブソン。

 ブリーズの街の極悪商人だった男。

 未然に防げたけど、かなりエグい犯罪をしでかそうとしていた奴だ。


 それとゲールウエザー王国の宰相補佐だった男。

 名前は……何だっけ、知らないや。

 アレも処刑されているだろうし。


『誰ですか?』


 俺の予想と違うかもしれないので聞いて確認してみた。


『まずはネイル・マース・アゼリア』


 的中ですな。

 けど、「まずは」と来ましたよ。

 俺が予想した相手、全部だったりしてな。


『以下、略』


 ガクッ!

 思わず、ずっ転けた。

 相変わらずマイペースな人だ。


『ちょっと何ですか、それ』


『メールで送ったから後で見ておいてねー』


 面倒になったんだな。

 メールを作成する方が面倒だと思うけど。


「……………」


 でも、エリーゼ様に入った報告からコピペすれば、そんなに手間でもないのか。

 【多重思考】を使って確認する。

 それっぽい感じだ。


 やっぱり楽がしたかったんだな。

 余計に手間がかかっている気はするけど、ツッコミ入れるのも面倒だ。

 それよりも記載されている名前である。

 見覚えのある名前は熊男だけだと思ったら最後に注釈があった。


[熊男とその仲間たちの一部のみを抜粋。

 他は部外者のためリストから除外]


 まあ、知らない人間の名前を見せられても困るよな。

 なんにせよ部下の中にも俺を深く恨んでいる奴がいたってことか。

 取り立てて気にはならんな。

 犯罪者の逆恨みだし。


 それより生前に顔を見たかどうかは関係ないという予測が当たった。

 この調子だとギブソンとかも後で出てくるかもな。


『まあ、集合体に関しては神様にお任せします』


『そうだけど、注意だけはしておくんだぞ。

 逆恨みするようなのに付け狙われる恐れもあるから』


『……了解です』


 心当たりのある奴が、まだ居るしな。

 集合体か廃棄物かで変わってくるだろうけど。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 あの後は特に話すこともなかったので、すぐに電話を切った。

 それからすぐにノエルたちがやって来たのだが、それは偶然ではない。

 ノエルがエリーゼ様に誘導されて来たのだ。

 【多重思考】は俺の専売特許じゃないもんな。


「ちょっと、大丈夫なの?」


 マイカが俺の右肩から回り込むようにして顔を覗き込んできた。


「なんだ?」


 やけに心配そうだが怪我なんてしてないぞ。


「微妙にやつれてるよね」


 ミズキが反対側から覗き込んでくる。

 この2人は見抜いてくるよな。

 心配しすぎだとは思うけど有り難くもある。


「まあ、色々とあったんだよ」


 目の前にいるノエルがコクコクと頷いていた。

 あの様子ならすべて聞いていそうだな。


「とにかく、全部片付いたんだから帰ろう」


「ん」


 俺の呟きにノエルが頷いた。

 次の瞬間、誘導してきたすべての冒険者たちがわっと湧き上がった。

 一瞬、なんなのかと思ったけど、外に出られるという喜びから感情が爆発したようだ。

 絶望的な状態から助かると分かれば、お祭り状態にもなるか。


読んでくれてありがとう。

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