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1713 通常の3倍かどうかは知りませんが赤くなりました

「どうして攻撃させぬのじゃっ?」


 前のめり気味になって聞いてくるシヅカ。

 このお姉さんも俺に負けず劣らず過保護だよな。

 指摘すれば向きになって反論してくるだろうけど。


 俺が言うのもなんだけど、どんぐりの背比べだと思わないか?

 そう思うのだが……


「ええいっ、何をしておるのかっ。

 グズグズしておると、せっかくの機会をふいにしてしまうであろう」


 シヅカが鼻息荒く俺に迫ってくる。

 新人3人組に攻撃させるチャンスだと思っているようだが、俺はそうは思わない。


「落ち着けよ」


「今なら奴は無防備であろう」


 シヅカの言う通り、一見すると強欲リッチは無防備に見えるけどさ。


「本体はな」


「むっ」


 シヅカの迫ってくる勢いがそがれた。

 見れば悔しげに歯噛みしている。

 俺が何を言いたいのかを半ば察したようだ。


「あのスライムもどきが攻撃してこない保証はないんだぞ」


 が、それを言っても完全に引き下がる様子は見られなかった。


「しかしじゃな」


 それでもチャンスだと言いたいようだ。


「相手は不定型なスライムもどきだぞ。

 何処からどのタイミングで攻撃を繰り出してくるか、あの3人に読めるか?」


 変身を妨害して巻き込まれるのは面白くない。

 下手をすればスライムもどきに取り込まれかねないからな。

 それは強欲リッチに融合されることを意味する。


「むうっ」


 俺の指摘に悔しげに唸るシヅカ。


「しかしのう」


 まだ諦めないようだ。


「それは変身が完了した後も同じじゃろう」


「そうでもないさ」


「何じゃと?」


「言っただろ?

 闇属性の錬成っぽい魔法だって」


 一瞬、シヅカが呆気にとられたような表情を見せた。

 直後には合点のいった顔で頷いていたが。


「そうであったな」


 シヅカが苦笑いで肯定した。


「ということは最終的には固定化されると?」


「そゆこと。

 このまま変身が完了するまで待った方がマシだと思うぞ」



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 スライムもどきが固定化した。

 頭の上からつま先まで赤いリッチがそこにいる。

 あまりリッチらしくない見た目になってしまっていたがね。


 悪役っぽいマスクに禍々しさを感じる強化外骨格スーツとでも言えばいいだろうか。

 何というか、変身ヒーローもので強い敵として出てきそうである。

 中身はともかく見た目だけなら主人公のライバルのイメージだ。


 特に血を連想させる全身の赤い色は敵役にふさわしいと思わせるだけのものがあった。

 不謹慎ではあるが元日本人組が反応しそうなんだよな。

 マイカやミズキは特撮ファンだし。


 トモさんはアメイジングだとか言いそうな気がする。

 変身ヒーローからは脱線してしまうけどさ。


 まあ、驚きはある。

 強欲リッチが元ネタも知らないのに角を生やしていたし。

 リッチアメイジングと呼称することにしようか。


 いや、強欲リッチには格好良すぎるネーミングだな。

 とりあえず赤リッチとでも呼ぼうか。


 まだ格好良さを感じる気はするけれど考えるのが面倒だ。

 討伐してしまう相手にこれ以上ネーミングを凝る必要はないだろう。


「キシャ───────────ッ!」


 赤リッチが獣そのものといった感じで吠えた。

 元から薄れていた人間味が微塵も残っていない。


 気がつけば錫杖が消えている。

 鑑定結果によると、あれは使用者をリッチに変える不死王の錫杖というアイテムだった。

 それすらも取り込んで自らの糧にしたか。


 いや、赤リッチの方が取り込まれたという方が正しいのかもしれない。

 奴はもはや殺意に支配された獣でしかないからな。


「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」


 呪文のように物騒なことを呟くばかりだ。

 そこに理知の入り込む余地はない。


「あれはマズいのでは?」


 カーラが進言してくる。


「カーラに同意する」


 俺が答える前にツバキも追随してきた。


「新人3人組には厳しかろうて」


 シヅカも同意見であった。

 他の古参組も一様に頷いている。

 俺もその意見を否定するつもりはない。


「まさかのHP全快だもんなぁ」


 しかもパワーアップしているのは確実だ。

 ぼやきたくもなるというものである。


「暖気なことを言っておる場合かっ」


 シヅカにツッコミを入れられてしまったさ。


「この期に及んでパワーレベリングなどと、ふざけたことを言うのではあるまいな」


 別にふざけているつもりは最初からないんだけどさ。

 まあ、ここでパワーレベリングに一区切り付けてバトンタッチしても何ら問題はない。

 既に充分な経験値を獲得しているはずだからな。


「本人たちしだいかな」


 やる気があるなら続行でもいいと俺は思うんだけど。


「俺はやるぜ!」


 話を聞いていたビルが真っ先に反応した。

 血気盛んとはこのことを言うのかと思わせるだけのやる気に満ちている。


 台詞自体は某漫画にサブキャラとしてたまに登場していた犬を連想させるんだけど。

 メインでは登場しないのにキャラが濃くてインパクトがあるので思い出してしまったさ。


 その暑苦しいまでのテンションで犬ぞりではリーダーを務めている。

 散歩でも何故か気合いが入っていたりするんだよな。


 無駄に元気なせいか何を考えているのか分からない。

 というより何も考えていないと言われていた気がする。


 そのせいかは知らないが、側溝にハマったり川に落ちたりしていた。

 あと餌を目の前にして脱走したこともあったな。

 その上、自分で帰れなくて保護されていたし。


 そういうのを思い出してしまったせいか些か不安を感じてしまった。

 別に漫画のキャラクターとビルを重ね合わせる必然性はないのだけど。

 何故かダブって見えてしまったのだ。


「自分もこのままでは終われません!」


 カエデも続行を志願した。


 変身した赤リッチが放つ強者の空気を肌で感じたのだろう。

 その表情は苦しげに見えるほど険しいものになってはいたが。


「私も、です」


 オセアンも一応は希望したが、声が小さい。

 かなりビビっているのが見て取れる。


「やるだけやってみれば」


「主っ!?」


 シヅカが声を荒げた。

 そりゃそうだろう。

 3人は疲弊しているのに赤リッチは元通りどころかパワーアップすらしているのだ。


「いや、死にゃしないでしょ」


「む?」


 一瞬、シヅカが怪訝な表情を浮かべたが……


「そうじゃったな」


 すぐに合点がいったのか頷きながら納得する様子を見せた。


「主の結界があったのう」


「そゆこと」


「過保護なまでに強力なのを使っていましたからね」


 カーラが苦笑した。


読んでくれてありがとう。

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