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1037 御褒美ぱにっく

「このままでは埒が明かんな」


 拡張現実の表示をオンにして確認してみることにした。


 アイコンが表示されている。

 ということは何らかの状態異常があるということだ。


 表示されているアイコンは[酩酊]だった。


『よりによって、それか』


 [泥酔]ではなく[酩酊]。

 同じような意味合いがあるが少し違う。


 酔いの深さは[泥酔]の方が上だが、そういうことではない。

 [酩酊]の場合は酔う原因が飲酒以外も含まれるのだ。


 今回の場合、原因を特定するのは困難かもしれない。

 飲酒以外であることしか分からないからな。


 とりあえず実害はないしスルー決定。

 放置しておけば、そのうち治るだろうという訳だ。


『人魚組のようなことも考えられるしな』


 ムニュン攻撃がないだけ安心である。

 残念でもあるか。

 ダニエラさんは、とてもいいものを持っていらっしゃるので。


 だが、そんなことを気にしている場合ではないだろう。

 ノエルさんの御機嫌は斜めなままなのだ。


 ここでバカ正直にネタバレをすることはできない。

 ノエルは納得するだろうが、反対にアニスやレイナがうるさくなるのは目に見えている。

 メールかショートメッセージを送れば内密に話は進められるとは思うが。


 その場合もノエル以外の面子に訝しく思われる恐れがある。

 グループメッセージで他の面子にも同じ内容を送ることも可能だけど。

 その場合は情報漏洩を考えておかねばならない。


 つい、ウッカリ口走る面子はビシッと姿勢を正してはいるがね。

 どうしたものかと考えていると……


「この国で貰える褒美」


 不意にシーニュが呟いた。


「興味がある」


 何か凄いものと誤解されているっぽい。

 まずは神官ちゃんの誤解を解くべきだろう。


「ノエル、褒美は何を希望する?」


「添い寝」


『ブホァッ!』


 ノエルの返事に吹きそうになったさ。

 どうにか【千両役者】でねじ伏せたけど。


 よりにもよって、それを選ぶとは。


『久々だな』


 ここで言う添い寝は俺を独占した状態での話だ。

 皆で雑魚寝したときのはノエルにとって添い寝ではない。


 YLNT同盟の紳士たちが、この場にいたらきっとこう言うだろう。


「「「「「ノータッチだ─────っ!」」」」」


 もしかすると血の涙を流しながら絶叫するかも?

 俺は別にロリコンではないのでスルーさせてもらうがね。


 問題はシーニュの反応だろう。

 他の面子は生暖かい視線を送ってくれるだけだから。

 もはや、その程度で動揺したりはしない。


 神官ちゃんは盛大に誤解してくれそうだけど。

 ズブズブと底なし沼に沈み込んでいくような気分を味わっていますよ?

 本物の底なし沼なんて落ちたことはないけどさ。


「添い寝?」


 困惑の表情でシーニュがノエルを見て問いかける。


「添い寝」


 頷きながら答えるノエル。


「添い寝?」


 再度、シーニュが問うた。

 今度は「本当に?」というニュアンスが込められていたが。


「添い寝」


 念を押すように自信を持って答えるノエル。


「添い寝……」


 押し切られた格好になったシーニュが呟いた。

 困惑の色をますます深くしている。


「なんだ、この会話」


 もしアニスやレイナが普通の状態なら盛大にツッコミを入れてきたことだろう。


「あー、私も添い寝がいいですぅ~」


 まさかの参戦表明をしてくるダニエラ。


「「「「「おいっ!」」」」」


 俺だけでなくルーリアにリーシャ、そして双子ちゃんたちがそろってツッコミを入れた。

 ただし──


「「ズルいよぉ、ダニエラちゃん」」


 ツッコミ直後のメリーとリリーの発言が微妙なんですが?

 そして無邪気に笑うのは何故だ。


 いや、想像はつくけどさ。


「「じゃあ、私達も御褒美は添い寝がいいでーす」」


 案の定、追撃してきた。


「あのな……」


 ドッと疲れが押し寄せてきそうですよ。


「「両サイドを固めて親衛隊ごっこができるよ」」


 楽しそうに提案してくるし。


『添い寝で親衛隊ごっこって何なんだ』


 ツッコミを入れそうになって、ふと思った。


『もしかしてグランダムネタか?』


 そう言えば左右を固める専用機が続編で出ていた。

 片側だけ張り出したショルダーアーマーとデカいランスが特徴の改修機だ。


 護衛対象に付き従う感じを添い寝のイメージに重ねている訳か。


『冗談半分で言ってるな』


 そうとしか思えない。

 ネタを仕込んだのはトモさんかマイカだろう。


 ただし、残り半分は本気である。

 あわよくばと考えているに違いない。


『チャッカリちゃんたちめっ』


「アンタたちねぇ」


 呆れたようにリーシャが嘆息する。


「まあまあ」


 ルーリアがなだめようと声を掛けていた。

 そう思ったのだが……


「我々も入れてもらえば良いではないか」


「ブハ─────ッ!」


 完全に吹いてしまったさ。

 もはや【千両役者】でねじ伏せる気力もない。


 誰も彼も褒美は添い寝を希望って……

 このまま受け入れれば他の奥さんたちにも拡がっていくのは間違いない。


 でもって順番で揉めるんだよ。

 最終的に雑魚寝になる。


「それさ、いつものパターンだよな」


「「「「「っ!?」」」」」


 俺の指摘に皆は愕然としている。


「知ってるぞ。

 風呂上がりにジャンケンしてるの」


「「「「「っ!?」」」」」


 更に驚くお強請り組一同。


「なんで驚くんだよ?

 誰でも知ってることだろうに」


「「「「「えっ!?」」」」」


『マジで気付いてなかったのか……』


「毎回、大声で添い寝優先権争奪ジャンケン杯とか言ってるじゃないか」


「「「「「うっ……」」」」」


 今頃になって致命的なミスに気付いている模様だ。

 木馬に乗った状態でたじろいでいる。


『危ないなぁ』


 まあ、少々のおふざけで事故にはならないようにしてあるけどさ。

 それでも気になるんだよ。

 自分の術式を信用していない訳じゃないんだけど。


 なんといっても[過保護王]だからな。


「ジャンケンを最後までしておいて結局は雑魚寝になってるよな」


「「「「「っ!?」」」」」


 そこまでバレていたのかって顔になっている。


「あのなぁ……」


 呆れるばかりだ。


「城内で大騒ぎしておいて最終的に俺の部屋に駆け込んできて雑魚寝じゃないか」


 ジト目で皆を見回せば、ばつが悪そうな顔をしている。


「全員が添い寝を希望したところで結果は見えてるよな」


「「「「「ぐっ……」」」」」


 痛いところをつかれたと言わんばかりに固まっている。


「どう考えても褒美にならないだろ」


「「「「「ぐぬぬ」」」」」


『ぐぬぬって……』


「他の褒美を考えればいいだろ?」


 我慢しても溜め息が出てしまうようなポンコツぶりを見せてくれるよ。

 まあ、皆には言わなかったがローテーションを組むという発想がないのだろうか。

 独占欲が強すぎて受け入れられないのかもしれないが。


『その割に皆で雑魚寝を選択するんだよな』


 喧嘩したり張り合ったりするけど、仲良しさんなのだ。


 で、皆は俺の言葉にウンウン唸り始めた。

 考えるのに一生懸命になっている。

 例外は今のやり取りを見ていた約2名。


 ベリルママは平常運転というべきか。

 楽しそうにニコニコしている。


 もう1人は神官ちゃんだ。

 その表情は呆気にとられた者のそれである。


「そんなに驚いたのか?」


「訳が分からない」


「ああ、添い寝が褒美になるのは意外かもな」


 シーニュはコクコクと頷いている。


「本人たちには妻や婚約者として当然の権利とか言われそうだけど」


 そのくせジャンケン大会を始める神経は分からないが。

 シーニュはそれを知らないはずなのに首を傾げていた。


 俺たちの関係性から添い寝なんて普通じゃないのかと考えたんだろう。

 特にここの設備を見た後だと平凡以下に感じるような気がする。


「ミズホの常識は西方の非常識ってことだ」


 この言葉にはとても感心していた。

 何か感じ入るものがあったと思われる。


「そんな訳だから、添い寝の次に言いそうな御褒美も似たような感じだ」


 一瞬「マジで!?」という顔になったシーニュ。

 それでも興味深そうな目でこちらを見てくる。

 具体例をぜひ聞きたいと言われているかのようだ。


「チューか、なでなでだと思うぞ」


 御褒美の定番である。

 驚愕に目を見開くシーニュさんだ。

 信じ難い思いで一杯なのだろう。

 驚きの度合いは驚天動地に値するのかもしれない。


「ビックリ」


 そう言うのが精一杯な様子であった。

 回転木馬が止まるまで考えてノエルたちが出した結論は……


「なでなでがいい」


「あー、今すぐ所望するってことね」


 要求したノエル以外の面子もそろってコクコク頷いた。

 チューだと人目があって恥ずかしいから、こちらにしたと思われる。


 ちなみにアニスとレイナの希望はチューであった。

 楽しみは後に取っておくつもりだったのだろう。


『そうはいかん』


 モフモフの刑の代わりだということを思い知らせてくれる。

 衆人環視の元でチューすると、2人は茹で蛸のように真っ赤になっていた。


読んでくれてありがとう。

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