九話
外壁のザ・城塞!って感じの重苦しい雰囲気とは違い、内側はかなり活気に溢れている。
夜市のような雰囲気で人も物もたくさん往来している。
そして少し目線を上げると美しい夜空が広がっている。
星が瞬いており、美しい、夜……?
さっき門を通る前まではまだ太陽が出ていた気がする。いつの間にか時間が経っていたのだろうか?
違和感は拭いきれず、きっと俺は変な顔をしていたんだろう。
隊長が気づき、解をくれる。
「ここ管理区は、全体が壁と天井に覆われているんです。どうしても閉鎖的な空間になってしまうので天井には空の映像が映し出されています。」
説明しながら天井に指をさす。
腕の中のコハクが上を見上げキャッキャしている。
俺も驚く。
「ほぉー!あれは映像なのか!」
「はい。今は天気の良い日の星空ですね。特に外の時間に対応している訳では無いので、驚くこともあるかと思います。」
「たまに面白い日もあるんだよぉ。お花が降ってる映像の時とか〜!」
ギンが調子良さそうにちゃちゃを入れる。
嘘か本当か分からないな。
「そういえば、魚が飛んでいる日もありましたね…。」
隊長がぽつりと呟く。
コハクが反応する。
「おさかな!そんな日もあるんですね!」
コハク、魚好きなのかな。
というか、ヘンテコな映像が流れるのはホントなのか…。
「レンギョウくん、僕が言ってたこと嘘だと思ってたでしょ〜?」
ニシシっとギンに笑われた。
「正直嘘だと思ったよ、疑って悪かったな!」
「いいよぉ〜。僕も実際に見るまでは嘘だと思ってたも〜ん。てか、映像担当してるやつがかなりの変わり者なんだよねぇ…。」
最後の方はどこか遠くを見つめていた。なにかあったんだろうな。
まぁ、と一呼吸置いてから隊長が
「そのうち映像を作っている方と会う機会もあると思いますよ。」
と微笑んだ。
少し楽しみかもしれない。
歩きながら軽く周囲を眺めてみる。
この場所は巨大な建造物みたいだが、天井の端は俺が今いる場所からは見えない。かなり広いのだろう。
辺りには出店や露店が多く、商談が盛んに行われているようだ。
食べ物の露店も至る所にあり、近くを通ると食欲をそそる香りが鼻と脳を擽る。
後で散歩がてら観光したい。
そういえば、セージさんだったか。あの人はいつの間にか居なくなっていた。
「なぁ隊長、門のところで話してたセージさんって人とは仲良いのか?」
「仲は悪くはないと思います。仕事で関わる事も多いですからね。」
何かを思い出すように少し間を置き、
「まぁ、セージさんより私はあの人の奥さんと仲が良いのです。セージさんとだったら私よりギンの方が仲良しだと思いますよ?」
「あ〜。そぉかも。多分隊長より僕の方がセージさんとよくご飯食べに行ったりしてるかなぁ。」
歩く速度を落とし、ギンが俺の隣に寄って来て隊長には聞こえないくらいの声量に抑えて囁く。
「セージさんの奥さん、ミモザさんって言うんだけどぉ、ミモザさんが訳あって隊長の事を凄ぉく尊敬しててね。隊長が管理区に戻ってくる度に隊長と一緒にどっかいっちゃうんだ〜ってセージさんが寂しそうにしてたんだ。」
これ僕が言ったってセージさんにバレないようにしてね、と付け加えられる。
「それで2人が出かける時は僕とセージさんで暇つぶしに遊びに行く事が増えたんだよ〜。」
そんなこんなで今は仲良しらしい。
「僕たちみたいなのに偏見なく付き合ってくれる人間ってあんまり居ないから、ありがたいんだよねぇ。」
なんだかその言い回しに少し違和感を覚えたが、この時の俺はさして気にしなかった。




