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第114話 「千場美鈴」

 翌日の昼休み、教室で弁当を食べていると美鈴が訪ねてきた。


「あの、高野英二先輩と伊東秀輝先輩は居ますか? 」


 ドアの傍の机で弁当を食べていた男子に美鈴が声を掛けているのを聞いてガルルンが反応する。


「何しに来たがお! 」


 ガルルンが大声を出しながら指差した。

 宗哉が持ってきてくれた弁当からチキン南蛮をひょいっと箸で摘まんでいたサンレイが動きを止める。


「昨日の美鈴とか言うヤツだぞ」

「何しにきおったのじゃ」


 お茶を一口飲むとハチマルも渋い表情だ。

 ガルルンの大声に振り向いた美鈴の目にサンレイたちの前で机を囲んで弁当を食べている英二が映る。


「居た居た♪ 」


 美鈴が遠慮無しに教室へと入っていく、2年の先輩の教室へ1年が堂々と入ってくるなど肝が据わっている。


「何しに来たがお、上級生のクラスに勝手に入るながお」

「そだぞ、番長であるおらの許可無しに入ったらボコボコだぞ」


 凄むガルルンとサンレイに目もくれずに美鈴が歩いてくる。


「おい、番長を無視するとは良い度胸だぞ、生きて帰れると思うなよ」

「ガルとサンレイの番長連合と戦って無事で済んだ奴らはいないがお」


 立ち上がったサンレイとガルルンに英二が弱り顔を向ける。


「いつから番長になったんだ。って言うか番長って死語だからな」

「サンレイちゃんが番長なら従うぜ」


 楽しそうに頬を緩める秀輝はどんな時でもサンレイの味方である。


「サンレイちゃんは古いのよく知ってるよね」


 言いながら宗哉が弁当箱の蓋を閉じる。何時でも退避できるように冷静な判断だ。

 英二と秀輝の前で美鈴が止まる。


「無視だぞ、マジでおらをスルーしたぞ」

「がひひっ、死にたいらしいがお」


 今にも襲い掛からんとするサンレイとガルルンが威圧感を感じて足を止める。


「何しに来たんじゃ」


 サンレイとガルルンが同時に振り返る。


「おお、総番長だぞ」

「総番長が動いたがお」

「誰が総番じゃ! 」


 叱りつけるハチマルをちらっと見た後で美鈴が英二と秀輝の前に箱を置いた。


「英二先輩、秀輝先輩、昨日はありがとうございました」


 聞き覚えのある声に英二がハッとして口を開く、


「昨日の…… 」

「確か1年4組の千場美鈴ちゃんだぜ」


 美鈴を見て秀輝が頬を緩める。

 腫れた頬を見せるのが恥ずかしかったのか、それとも痛かったのか、美鈴は俯きながら顔を手で押さえていたので昨晩はハッキリと見ていない、英二と秀輝も酷く腫らした女の子の顔をまじまじと見るのも失礼だと思ったのか覚えていなかった。

 だが可愛い声は覚えていた。髪型と声で昨晩助けた千場美鈴だと直ぐにわかった。


「私が作ったチーズケーキです。よかったら食べてください、昨日は本当にありがとうございました」


 美鈴がペコッと頭を下げた。


「御礼なんていいのに……頬の腫れは引いたんだね、よかった」

「美鈴ちゃんって可愛かったんだな、傷が残ったりしなくてよかったぜ」


 慌てる英二の横で秀輝が可愛い美鈴に見惚れている。


「はい、先輩たちの御陰です」


 美鈴が英二の手を取って顔を近付ける。


「本当にありがとうございました。英二先輩格好良かったです」

「いや……そんな事ないよ」


 間近にある可愛い美鈴の顔に英二は照れて頬が赤く染まっている。

 英二の手を離すと美鈴は秀輝の手を握り締めた。

 同じように顔を近付けて礼を言う、


「秀輝先輩も格好良かったです。ジャンパーは洗濯して返しますね」

「洗濯なんていいよ、汚いジャンパーだし、美鈴ちゃんが無事でよかったぜ」


 秀輝は格好つけながらデレデレだ。


「心を込めて作りましたからチーズケーキ食べてくださいね」


 美鈴が箱の蓋を開けるとチーズケーキが4切れ入っていた。


「おぅ、旨そうだ。遠慮なく貰っとくぜ」


 早速1つ取り出す秀輝を見て美鈴が目を細める。


「私お菓子作りが趣味なのでこれからちょくちょく作って持ってきますね、英二先輩と秀輝先輩のために作るって思ったら張り合いが出ますから」

「そんな……無理しなくてもいいよ、たまたま通りかかって助けただけだからさ」


 がっつく秀輝とは対照に遠慮がちな英二を見て美鈴が微笑む、


「2人に食べてもらいたいんです。先輩たちは私の恩人です。私に出来ることなら何でもしたいんです」


 美鈴がフッと拗ねたような顔に変わる。


「それとも迷惑ですか? 私が作ったお菓子なんて食べれないって言うなら…… 」


 英二が慌てて顔の前で手を振った。


「違う、違う、迷惑なんて思ってないから、態々お菓子作るなんて大変だなって思っただけだから」


 ブンブンと振る英二の手を美鈴が挟むようにして両手で握り締める。


「大変じゃないです。英二先輩のことを思って作るととても楽しいです。お菓子作りは趣味なんです。英二先輩と秀輝先輩が食べてくれると私も嬉しいです」


 潤んだ瞳で見つめられて英二が真っ赤な顔で口を開く、


「美鈴ちゃんがいいなら別に…… 」

「はい、私は英二先輩と秀輝先輩に食べてもらいたいです。作るのが趣味で1人じゃ食べきれないから食べてくれる人が居てくれた方が作りがいがありますから」


 にぱっと可愛い顔で笑う美鈴の前で英二は顔どころか全身真っ赤だ。

 隣で秀輝がチーズケーキを一口食べる。


「マジで旨いぜ、このチーズケーキ、食べる相手が居ないなら俺たちでよければ喜んで食うぜ、なっ英二」

「本当ですか? 嬉しい、英二先輩も食べてくださいね」


 美鈴が黒板の上の時計をちらっと見る。


「次、体育なんで戻りますね、明日も何か作りますね、英二先輩」


 座っている英二をギュッと抱き締めると美鈴は早足で教室を出て行った。

 美鈴の意外に大きなおっぱいに顔を挟まれて英二は気持ち良くて何も考えられない。


「いいなぁ~英二は、明日は俺がそっちに座るからな」


 羨ましそうに言うと秀輝がチーズケーキにパクついた。


「何言ってんだよ秀輝…… 」


 幸せそうな顔で言い返そうとした英二の目にサンレイとガルルンとハチマルと小乃子の顔が映った。


「ちっ、違う……違うから………… 」


 英二の顔が一瞬で真っ青になっていく、


「にっひっひっひっ、言いたいことはそれだけか? 」


 サンレイが口を横に大きく開けてニタリと笑う、瞬きをしなくなった目が怖い。


「がっひっひっひっひっ、浮気がお、既に抱き締め合う関係がう」


 鼻に掛かった笑い声を出すガルルンの口元には何時もの八重歯ではなく鋭い牙がキラリと光る。

 サンレイとガルルンの向かいで小乃子が冷たい目で英二をじっと見つめる。


「へえぇ~~、1年に手を出すなんて英二も偉くなったもんだなぁ~ 」

「なんの御礼か知らないけど、只の関係じゃなさそうね」


 小乃子の隣で委員長が軽蔑の視線を秀輝に送った。


「なんのバイトをしておったのか? じっくりと問い質さんといかんのぅ」


 まだ3分の1ほど残っている弁当箱にハチマルが蓋をする。


「違うから……浮気とかじゃないから…… 」

「そっ、そうだぜ、英二の言う通りだ。俺たちは何も疚しいことなんてしてないからな」


 真っ青な英二の隣で秀輝が顔を引き攣らせる。

 弁当を持つと宗哉が無言で席から離れていく、サンレイとガルルンがにこやかな笑みを湛えて近寄ってきた。


「何怯えてんだ? おらちっとも怒ってないぞ」

「がふふふっ、ガルは何時でも英二の味方がお、だから本当のことを全部話すがお」

「やべぇ…… 」


 逸速く逃げようとした秀輝の手を英二が掴む、


「ズルいぞ秀輝! 」

「放せ! とばっちりは御免だ」


 英二の手を振り解こうとした秀輝の前にガルルンが立つ、


「獲物は逃がさないがお」

「今日は英二だけじゃなくて秀輝にも色々聞かないとダメだぞ」


 サンレイがバチッと英二の後ろに現われた。


「ひぃっ…… 」

「違うから…… 」


 怯える2人の正面にハチマルがやって来る。


「違うか違わんかは儂らが決める事じゃ、お主らは儂らの質問に嘘偽り無くこたえるのじゃ、よいな英二、秀輝もじゃぞ」


 顔を引き攣らせて英二と秀輝がうんうん頷いた。

 サンレイが両手を伸ばして英二と秀輝の頬を撫でる。


「もし嘘だったらおらのお仕置きフルコースが待ってるぞ」

「ガルは英二を信じてるがお、でも裏切られたら…… 」


 最後まで話さないガルルンの目からフッと光が消え代わりに伸ばした爪に炎が灯る。


「ひぃぃ…… 」


 ヤンデレのような表情に英二と秀輝がガタガタ震える。

 ハチマルの左右に小乃子と委員長が立つ、


「あたしらにも聞かせて貰うよ、サンレイたちと一緒に住むようになって女慣れでもしたか? まさかオタの英二が下級生を誑し込むなんてな」

「伊東のこと見直してたんだけどね、新入生に手を出すとは思わなかったわよ、硬派に見えて案外チャラ男だったのね」


 小乃子と委員長に蔑んだ目で睨まれても英二と秀輝は文句も言わない、というか言えない、後ろにサンレイ、右にガルルン、正面にハチマルと小乃子と委員長、左は運動場が見える窓だ。

 周り全て敵といった状況で逃げ場など無い。

 退避していた宗哉がやってくる。


「まぁまぁ、そんなに怖がらせたら英二くんも話せなくなるよ、ここは落ち着いて話し合おうよ」


 宗哉の隣で晴美も味方に付いてくれた。


「うん、私も宗哉くんに賛成だな、あの1年生御礼だって言ってたよ、高野くんと伊東くんが御礼されるような事したんだよ」


 英二と秀輝がバッと晴美を指差す。


「そうそう、それそれ! 」

「そうだぜ、話しを聞いてくれ」


 急に元気を取り戻した2人の頭を後ろからサンレイがガシッと掴む、


「んじゃ、話しを聞いてやるぞ」

「わかったがお、殺すのは話しを聞いてからでも遅くないがお」


 ガルルンがさらっと怖いことを吐いた。


「そうじゃな、では話してみい、いつ美鈴と知りおうた。礼とは何のことじゃ」


 近くの机の上にハチマルが腰を掛けると小乃子と委員長も傍にあった椅子に座った。


「わかった。順序立てて話すよ」


 英二が昨晩の出来事を話し始める。秀輝が所々で付け足すように話しに入ってくる。

 2人で庇い合いながら必死で説明を終えた。


「そうだったがお、助けた御礼だったがお」


 ガルルンの目が元の輝きに戻っている。

 サンレイが英二と秀輝の頭をポンポン叩く、


「にゃははははっ、英二がモテるなんておかしいと思ったぞ」


 委員長の顔に安堵が浮ぶ、


「そうならそうと早く言いなさいよね」

「まったくだ。勘違いして疲れたよな」


 誤魔化すようにふて腐れた態度を見せる小乃子の前で英二が弱り切った顔で口を開く、


「勘違いも何も違うって言ってただろ…… 」

「話す前から犯人扱いだったぜ」


 秀輝も珍しく弱り顔で言い返しもしない。

 騒動が収まったのを見て宗哉が一安心だ。


「女の子を助けるなんて流石英二くんだよ」

「うん、1年の娘、無事でよかったね」


 宗哉の隣で晴美が嬉しそうに微笑んだ。


「美鈴がのぅ…… 」


 ハチマル1人だけが浮かない顔だ。



 次の日から美鈴がちょくちょく顔を出すようになる。


「今日はシュークリームを作って来ました」


 昼休み、英二が弁当を食べ終わるのに合わせるかのように美鈴がやって来る。


「そんなに気を使わなくてもいいからね」

「だな、礼なんていいからな」


 好意で持ってきてくれる美鈴に来るなとも言えずに弱り顔の英二の隣で秀輝はいいと言いながら箱の中のシュークリームが気になってそわそわしている。


「4つあるので英二先輩と秀輝先輩だけじゃなくて先輩たちもどうぞ」


 美鈴はシュークリームを取り出すと机を囲んで弁当を食べていた中川と浅井の前に1つずつ置いた。


「俺たちも貰ってもいいのか? 」

「美鈴ちゃんの手作りなんだろ? 美味しそうだ」


 中川と浅井に遠慮などいう言葉は無い、美人の美鈴の手作りなら尚更だ。


「もちろんです。英二先輩と秀輝先輩にはお世話になりましたから」


 にこっと可愛らしい笑みを見せる美鈴の前で秀輝がシュークリームを口元に運ぶ、


「お前らラッキーだぜ、美鈴ちゃんの手作りのお菓子が食えるなんてな、俺と英二に感謝しろよ」


 恩着せがましく言うとシュークリームに齧り付く、


「旨い、マジで旨いぜ、美鈴ちゃんは料理上手なんだな」

「えへへっ、料理って言うか、お菓子は昔から作ってるから」


 可愛く照れながら美鈴が英二の前にシュークリームを置いた。


「英二先輩も食べてください、美味しかったらまた作ってきますから」

「えっ、あっ、うん…… 」


 急かされるようにして英二がシュークリームを一口食べる。


「うん、美味しいよ、カスタードが専門店みたいな感じで……凄く美味しいよ」


 本当に美味しかったので二口目を齧り付くとカスタードクリームがムニュッと出て口の周りに付いた。


「あっ、英二先輩動かないで」


 美鈴が英二の口元に指を持っていくとカスタードクリームを指で掬うようにして取ってそのままぺろっと嘗めた。


「美鈴ちゃん…… 」


 驚く英二の前で美鈴が恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「あっ、えへへ……英二先輩のクリーム嘗めちゃった」

「いや……あの……ごめん」


 どう言えば分からないのか真っ赤な顔で謝る英二に美鈴が抱き付く、


「謝らないでください、英二先輩なら厭じゃないですよ」


 胸に顔を埋めている英二の耳に美鈴の可愛い声が聞こえた。

 おっぱいが気持ち良くて本当に聞こえたのか英二にはわからなかった。


「またかよ、羨ましいぜ」


 秀輝だけでなく中川と浅井も羨むように英二を見ている。



 後ろで机を囲んで弁当を食べていたサンレイとガルルンと小乃子の顔に怒りが広がっていく、


「ぺろってしたがお、英二の口に手を付けてぺろってしたがう」


 ガルルンが持っていた箸を握り締めてバキッと割った。


「あの泥棒猫……あたしの英二に…… 」


 小乃子が悔しそうに机を引っ掻いた。


「ひへへへへっ、英二も英二だぞ、嬉しそうにデレデレしてるぞ」


 悪い顔でニタリと笑うサンレイの頭や肩からパチパチと細い雷光が走っている。

 小乃子の隣で食べていた委員長が口を開く、


「美鈴ちゃんだっけ? あの1年、高野が狙いみたいね」


 秀輝が狙いではないとわかって内心安心していた。


「そのようじゃな、一度話しをせんといかんな」


 ハチマルが食べ終わった弁当を仕舞いながら言った。



 抱き付いていた美鈴が離れ際に英二の頬にチュッとキスをした。


「また何か作ってきますね、英二先輩」

「え!? あっ、ああ…… 」


 ニッコリと微笑む美鈴の前で英二がキスされた頬に手を当てる。

 抱き付かれておっぱいに挟まれて気持ち良くて何も考えられなくなっている所に突然キスされたのだ。

 英二は状況判断が出来ていない。


「英二先輩のために心を込めて作りますね、楽しみにしててください、じゃあ帰ります」


 頬を赤くして可愛い笑みを見せると美鈴は教室を出て行った。

 秀輝が肘で英二を突っつく、


「英二のためって……マジかよ、羨ましすぎるぜ」


 向かいに座っていた浅井と中川が妬むように話し出す。


「美鈴ちゃん、英二に気があるのかよ」

「お前だけモテてズルいぞ高野」


 キスされた頬に手を当ててぼーっとしていた英二がハッとして口を開く、


「違うからな、助けた御礼だろ、前に話しただろが」

「何言ってんだ。抱き付くのもキスしたのもお前だけだぜ、俺も一緒に助けたのによ」

「そんなんじゃないからな、助けた御礼だって…… 」


 秀輝たちに必死で弁解を始めた英二は後ろで席を囲んで食べていたサンレイたちに気付かない。


「チューがお、あいつ英二にチューしたがお」

「あの女ぁ~~ 」


 折れた箸を握り締めるガルルンの向かいで小乃子が怒りに目を吊り上げる。


「チュー……英二にチュー………… 」


 呆然とした様子で言った後でサンレイが今まで見たことも無いような顔でニヘラと笑う、


「見たなガルルン」

「見たがお、チューがお」

「あたしも仲間に入れてくれ」


 サンレイとガルルンと小乃子が邪悪な笑みを湛えた顔を見合わせる。


「にっひっひっひ、浮気と本気どっちが強いか教えてやるぞ、おらの本気の電撃でな、いっひっひっひっひ」

「がひひひひっ、あの女がチューしたほっぺ、ガルが焼いて消毒してやるがお」

「マジでぶん殴ってやる。あたしの胸の方が大きくて気持ち良いに決まってるのに英二の野郎……マジでボコボコだ」


 何時もの冗談で怒っている顔ではない3人とも目を吊り上げたマジの怒り顔だ。


「ちょっと…… 」


 止めようとした委員長がハチマルに向き直る。


「済まん、儂はトイレじゃ」


 助けを求めようとした委員長の前でハチマルがフッと姿を消した。


「ハチマル……私、知~らない」


 1人では止められないと委員長が傍観に回る。


「わっ、私……宗哉くんの所に行ってくるね」


 困り顔の晴美が助けを求めるように自分たちの後ろで食べている宗哉の元へ向かう、


「宗哉くん、どうしようガルちゃんたち本気で怒ってるよ」

「英二くんは油断しすぎだよ、今止めてもとばっちりが来るだけさ、英二くんには悪いけど暫くサンレイちゃんの好きにさせてから止めた方がいいね」


 弁当を食べ終わった宗哉がお茶を飲みながらこたえた。

 普段なら英二たちの後ろで食べている宗哉だが美鈴が来るのを見越して今日からはサーシャの席で食べる事にしていた。


「うん、そうだね、今のガルちゃんは話し聞いてくれそうもないもんね」


 ほっと安心する晴美にサーシャの前席のララミが自分の椅子を持ってくる。


「晴美さん、お座りください、ここで小娘どものバカ騒ぎを見物するとよいですよ」

「ありがとうララミさん」


 相変わらず口の悪いララミに礼を言うと晴美は宗哉の隣に座った。


「僕でダメならハチマルさんに……あれ? ハチマルさんは? 」


 自分で止めることが出来なければハチマルに頼もうと振り向くが何処へ行ったのか姿が見えない。


「ハチマル様なら先程スッと消えましたデスよ」


 姿を消すところを見ていたサーシャが報告した。


「そうか……仕方無い、いざとなったらサーシャとララミに止めさせよう」


 ハチマルが何をしに行ったのか感付いた様子で宗哉が言った。

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