番外編 シオリの場合
日間現実世界〔恋愛〕ランキング11位!?
驚きです。
嬉しさのあまり、衝動的に番外編を書いてしまいました。
読んでくださった皆様、ありがとうございます!
リコちゃんのご実家は普通のいえだけど、お祖父様のご実家は豪邸だって聞いてる。だけど、その事をリコちゃん自身は知らないって。
わたしがリコちゃんのお父さんのお仕事を知ったのは偶然だったわ。親しくなってリコちゃんのうちに遊びにいったとき、予定より早くいったのがきっかけ。
リコちゃんの家の呼び鈴をならそうとしたらいきなりドアが開いて、男の人が出てきたの。その人も驚いたみたいで、うっかり落とした書類を一緒に拾ってて気がついたわ。
……この書類が吉祥グループのもので、一番したの署名欄のサイン、吉祥って書いてあったけど、前に見たことがあったおじさんの字だったから。
思わず凝視しちゃって、その男の人が慌てて、おじさんが出てきて、そしてわたしにせつめいをしてくれたの。
日本に戻ってくるまでは、吉祥とは関係のない会社で、サラリーマンをしていて、いまはリコちゃんのお祖父様、吉祥グループの会長さんの後を継ぐための勉強をしているって。
リコちゃんの安全のためにも、その事は隠しているって。
お仕事は、外回り以外はご自宅でネットを利用してしているんだっていってた。だけど、今回みたいにサインが必要な書類とかは届けられるんだって。そのために、リコちゃんはいまお使いにいっているって。
わたしは内緒にすることを約束した。吉祥グループの偉い人の娘だって知られて危険になるよりも、いまの一般人としてある方が安全だっていわれたし、わたしも、リコちゃんが遠い人になっちゃうのはいやだったから。
こうしてリコちゃんのうちの秘密を知っちゃって、だけど毎週、同じ時間に遊びに来るようにしちゃったの。
理由は、ふたつ。ひとつはリコちゃんのお母さんの紅茶。趣味で色々集めているそうで、淹れるのもすごく上手で美味しいの。リコちゃんもお茶を淹れるのは上手で、どうしてって訊いたら、なんでか遠い目をしていたけれど……? とにかく、すごく美味しい紅茶に釣られちゃったのがひとつ。
もうひとつは、あのときあった男の人。桜井月夜さんっていうんだって。桜井さんと話すのが楽しくて、ついつい来るようになっちゃたわ。
……この感情が幼い恋だとはすぐに気がついたけど、それを口にするつもりもなかったの。少くても、高校を卒業してからじゃないとね。いまはまだ子供だから、ちゃんと好きになってもらえるような大人にならないとって、そのための努力はすることにしたんだけれど。ちゃんと、内面を磨かないとつりあわないものね。
そうしてのんびりと過ごしていくうちに、あの事件があったの。
……リコちゃんがストーカーに付きまとわれるようになっちゃったの。
最初はリコちゃんが学校の女の子を庇っただけだったわ。怯えている女の子を庇うリコちゃんは格好よかったけど、だからその男の人がリコちゃんに執着しちゃったの。
いろいろな噂をながしたり、つけ回したり、どんどんリコちゃんが憔悴していったのを間近で見ているしかできなくて……。おじさんやおばさんには心配をかけたくないって意地をはって……。だから、わたしはリコちゃんのために動くことにしたの。
いつも通りリコちゃんのうちにいって、桜井さんが帰る時、わたしも一緒に行かせてもらったの。リコちゃんには今日は用事があるっていっておいたし、おじさんやおばさんには、桜井さんに告白したいからって、嘘でもあり、本当でもあることをいって、協力してもらって。内容はともかく、告白には違いないわよね。
桜井さんは困った様子をしながらも、わたしを連れていってくれて、そこでリコちゃんのことをお願いしたの。『ストーカーに付きまとわれている、相手は権力を利用している、リコちゃんはご両親に心配をかけたくないって言ってる』このことを伝えたの。……わたしは子供で、リコちゃんのそばにいることしか出来なくて、できることは他に思い付かなくて……。
桜井さんはわたしの話を聞くと、少し考える様子を見せて、そのあとわたしに笑ってくれたわ。
「大丈夫。正確なところを調べて対処をする。教えてくれてありがとう」
そういってくれたの。だから、ついわたしは言っちゃったの。
「表向きはわたしが桜井さんに告白するために、今日はくっついてきたっていうことになってるんです。わたしが桜井さんを好きなのも本当です。だから、この気持ちが高校を卒業しても変わらなかったら、わたしと付き合ってくれませんか?」
桜井さんは驚いたようだったわ。上司の娘の友人、しかもまだ子供のわたしに言われたらとうぜんよね。だけど、ちゃんと頷いてくれたの。
「詩織ちゃんが、高校を卒業するまで、だね。それまでに私に好きな人ができたら断らせてもらうけど、そうでないなら、ちゃんと卒業したときに返事をするよ。それでいいかな?」
「はい」
桜井さんは子供の思い込みとは言わず、ちゃんとわたしの心を受け止めてくれたと、本当に嬉しくなって、その日はずっとご機嫌になっちゃった。うちの両親にも不審がられちゃったし。
それから、いろいろと調べて、ちゃんと証拠もつかんで、その男の人は逮捕されたの。
権力も、吉祥グループの方が上だったし、すごくあっさりとすべてが終わったわ。
だけど、リコちゃんは深く傷ついてしまっていたの。自分が傷つけられたことではなくて、まわりを巻き込んでしまったことを。おまけにわたしは中学を卒業後、隣の県に引っ越すことにもなって、リコちゃんと離れないとならなくなったの。
離れる、とそのときは思っていたのよね。実際は両親の仕事関係の引っ越しと、リコちゃんのメンタルケアはセットになっていたのよね。引っ越し先の高校っていうのが、セキュリティーなどがしっかりしていて寮も完備されていて、リコちゃんはそこに入学することになったから。
うちの両親が勤めている会社って、吉祥グループ関係だったなんて知らなかったもの、驚いたわ。
そして変わらずに、リコちゃんの親友としてそばにいることができてすごく嬉しかった。
ただ、桜井さんとは話せなくなったのは寂しく思ったのだけど……。休日に訪ねてきたのは驚いたわ。
リコちゃんのご両親とお祖父様が、客観的にリコちゃんの様子を知りたいからって、わたしに訊きにきたの。桜井さんはわたしの知り合いだし、リコちゃんのことも尽力してくれたから、ちょうどいいだろうって。月に一度、必ず会えることになって、浮かれたわ。……おかげで、両親にもばれちゃったけど、桜井さんならいいっていってくれたの。もともと知り合いだったみたい。
だけど、報告はちょっと辛いところもあったの。……リコちゃんは自分を隠すようになっちゃったから。目立たない方がまわりを巻き込まないって……。そのことを、わたしも、桜井さんも、みんな、気にしていたわ。リコちゃんが本当の自分でいられるように、どうしたらなるんだろうって……。
それを叶えてくれたのがリュウくんこと、生徒会長の青塚竜斗くんだったの。リコちゃんに一目惚れしたからって、本性を出せるようにって計画してくれて、リコちゃんは時間をかけて本来の自分でいるようになってくれたわ。だから、すっごく感謝しているの。リコちゃんとの恋を応援しようって思えるくらいに。もっとも、もう必要ないようなきもするのよね。リコちゃん、リュウくんにちゃんとなついているもの。
文化祭でリコちゃんのご両親とお祖父様の正体も知られて、リコちゃんももう大丈夫になったから、桜井さんと会うのもお仕舞いかな……。それだけはとっても寂しかったけれど、しょうがないことだものね。
そうして、最後の報告会になったとき、桜井さんは言ってくれたの。
「お疲れさま、詩織ちゃん」
「わたしは対したことはできませんでしたから。リュウくんに感謝ですね」
「そうだね。それで、もう報告は必要なくなったから、次からはどこかへ出掛けようか?」
「え、いいんですか?」
「構わないよ。近場になるだろうけど、遊びに行こう?」
「はい!」
そういうことになって、月に一度だけデートしてくれるようになりました。
わたしはまだ高校二年だから、あと一年でがんばって自分磨きをして、桜井さんに好きになってもらうの。
うん、がんばろう。
というわけで、シオリはカズヤのことは、最初から眼中にありません。
仲の良い友人位置です。
改めまして、読んでくださった方々に感謝を!




