まさか、の展開だった
リュート視点。
窓からリコのいる方を見ると、男がリコに手を伸ばしているところだった。
僕はあわてて両手に持つジュースをそばにいた生徒に預けて走り出す。窓を越えるのは危険(窓の下は花壇だった)なので、急いで近くの出入り口から外に出る。そして人混みを掻き分けてリコのそばに駆け寄った。
……そして思わず抱き締めていた。見たところ怪我はないようだったけれど、どうしても無事を実感したくて、自分を止められなかった。
そのまま、リコのご家族と挨拶をした。
……本当に驚いた。リコの祖父は吉祥グループの現総帥。父親はその後継と目されている人物。母親はある国の王家の血をひくと言われている、日本人とのハーフ。
……なるほど。この家族がいれば、リコのとんでもなさは納得できるな。
「えっと、リュート? いい加減離してくんない?」
驚いている間にリコが腕のなかで真っ赤になってた。……人前でこれは確かに恥ずかしいか。まあ、僕としてはまわりに牽制できたからよかったけど。……リコの素顔に見とれている連中は大勢いたからね。
リコから離れると、話しかけられた。
「真理子のことをよろしく頼むよ。君にはずいぶん心を許しているようだ」
「そうね。いやな相手だったら、とっくに投げ飛ばしているもの」
「……青塚か。覚えておこう」
最後の父親には、宣戦布告された気分だけど。まあ、とりあえず。
「これからも、よろしくお願いします」
リコから離れて、にっこりと笑っておいた。
「たしかこのあと、君のイベントがなにかあるんだったかな」
「はい。僕と真理子さんのおいかけっこですね。もともとは彼女に本性を出させるために始めたんですけど、なんか好評と言うか、娯楽になっちゃってまして……」
そんなつもりなかったからね。
「そうなの。ありがとうね、竜斗君。中学の時のせいで、このこずっと自分を圧し殺してきたから」
「そんなこと……」
「はたからそう見えていたということだ」
「うー」
リコがうなる。本人はトラウマのせいだったとしても、やっぱり自然体の方がいいと思うものだからね。
「おいかけっこの舞台は、学校全体になります。よろしければ楽しんでください」
「……そうするが、真理子に怪我をさせたら……」
「責任とって、お嫁にもらってね♪」
「おい!」
「なーに?」
「やれやれ」
仲がいいご夫婦だね。
「それでは私たちは失礼するよ。仕事中すまなかったね」
「いえ、こちらこそ助かりました」
さっきの迷惑男はおそらく吉祥さんの護衛の方が連れていっていた。そちらは任せてもいいようだし、僕たちは文化祭を楽しむべきだろうね。
「かいちょー。はい、ジュース」
「ああ、ありがとう」
ジュースを預けた生徒が、わざわざ届けに来てくれた。……目的はどうやらリコの素顔を間近でみるためのようだけど。
「はあ、疲れた」
「すこしここで休んでいこう」
「うん」
僕たちはすこしの間、ふたりでベンチに座ってのんびりした。
……注目を集めまくってたけれどね。
このあと、リコはシオリと人気を二分することに。
ただし、リコはリュートのものという認識も無事広まったようです。




