作戦成功(運動部門)
会長視点。
「うまくいってよかったよ」
「……渡辺さんって、以外と単純だったのな」
「槙原さんの協力もあったからね」
ここのところ、うまく隙をついて追いかける毎日が続いていた。おかげで、渡辺さんの運動能力は周知され、運動部からの勧誘とファンが増えた。……ここは別に要らなかったんだけどね。
そして今日。槙原さんに頼んだ、渡辺さんの生徒会への勧誘の日。実はここにもしかけがあったりする。
「来てくれたんだ」
「……どうも」
「お約束通り、一緒に来ました。それで、わたしとリコちゃんが生徒会に入るというお話し、ですよね」
「は⁉」
「うん。そうだよ。君たちのどちらかに庶務をやってほしいんだよ。彼女は来月には転校するから」
「そういうわけなの。後任よろしくね」
「はああああー⁉」
サプライズは成功かな。
「なんで、あたしが⁉」
「もちろん、僕が一緒に居たいから、だけど?」
「職権濫用かよ!」
「実際の能力と人望を買ってでもあるけどね槙原さんは学年上位で、人気者。君ももともと入試は首席、だったでしょう? 今は手抜きしてるみたいだけど」
「ぐぬぬ……」
「まあ、いきなりだったしね。ここは僕と勝負しない?」
「勝負?」
「そう。次の中間テストで、僕に勝ったらもう学校で追い回すことはしないよ。その上で、君と槙原さんの順位が下だった方が庶務、上だった方には生徒会補佐を頼むということで、どうかな?」
「……つまり、あたしがシオリと会長の順位を越えれば、庶務もしなくていいし、会長も追い回さない、ってことだよね?」
「そう」
「……わかった。話はそれだけだよね。じゃ、あたしはもういく」
「失礼しました」
渡辺さんと槙原さんが部屋から出ていった。……ほんと、上手くいった。
「……ほんとに単純だな。生徒会補佐をするってことは、お前により近づくってことだろ?」
庶務と違って、直接僕を手伝って貰えるからね。
「まあ、手抜きするつもりもないよ。渡辺さんとのおいかけっこも楽しいし?」
「さよか」
呆れる回りを無視して、仕事を始めた。
さて、今後が楽しみだ。
作戦その2開始。……すでに網は張られている。




