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覚醒

 体力、魔力共に底を突いたクロエに竜が迫る。ゆっくりだが確実に、クロエを嘲笑うように向かってくる竜。


(ぐ……動け、動け動け!! 動いてくれ私身体ぁ!)


「ぐぐっ、くあっ……あああああああああ!!!」


  腱が切れ、肉が裂けてそこから血が噴き出す。しかしそれでもクロエは立つ事を諦めずに渾身の力を以って立ち上がる。立つ事だけで精一杯、意識を保つ事だけで一杯一杯だったがクロエの闘志はまだ燃え尽きてなかった。


「はぁ、はっ、 ぜぇ、ぜぇ……私が、私がマシロを守るんだ!! 邪魔をするなぁぁぁ!!」


  クロエが空に向かって咆哮を上げる。するとクロエの姿が光に包まれ、クロエを中心に暴風が吹き荒れた。衝撃波が雲を掻き消し、地面を抉り、消し飛ばす。

 視野が晴れてクロエが姿を現わす。


「……これは?」


  クロエは自身の姿に目を疑う。黒いオーラを全身に纏っており、傷も完治していた。


「覚醒……?」


  自分の両手に視線を落とし呟く。身体が嘘のように軽くなっており身体の奥底から力が湧き出てくるようだった。


「まさか私が覚醒するなんてね……。 これなら……」


  拳を握り締め、竜を睨む。次の瞬間には竜の巨体が大きく仰け反っていた。遅れて響く轟音。腹に強烈な拳を捻りながらめり込ませる。 竜の巨体が浮き上がる程の威力にクロエ自身も目を見張った。空中へ移動すると手を竜の方向へ突き出す。


「"ダークインフェルノ"」


  その言葉に呼応して竜の足下の地面から黒い炎が出現し瞬く間に竜の身体を包み込む。

 竜は悲鳴を上げ地面をのたうち回っている。


「良い力だ。 これなら負ける気がしないね。

 "黒い雷神"」


  黒い雷がクロエの身体を侵食するように絡み付く。右腕の雷を螺旋状にさせると未だのたうち回っている竜の身体に拳をめり込ませる。 竜の身体に触れた瞬間に雷が竜の全身に回り感電させる。 黒い稲妻が縦横無尽に駆け巡った。


「これで止めだ。さっさとくたばりなさい亡霊が!」


  魔力を練り上げ魔法を発動させようとしたクロエだが突然の虚脱感に襲われた。


「っ!?」


 さらにめまいがし、思わず片膝をつく。


「くそっ、もう限界か。 あと少しなのに……っ!」


  この虚脱感が何なのかを理解したクロエは歯噛みする。 同時にクロエの纏っていた全ての力が失われ、竜の身体を侵食していた炎や黒い雷も消えてしまう。これを好機と感じた竜はおもむろに立ち上がると腕を振り上げる。

 クロエは膝をつくのも限界だったのか地に伏している。


(ごめんマシロ……ここまでみたい)


  段々と薄れてく意識の中でクロエの一番大切な存在であるマシロが脳裏をよぎる。

 そして無情にも竜の鋭い爪がクロエに振り下ろされる筈だった。


「これ以上、私のお姉ちゃんに手を出さないで。ケダモノが」


  そんな聞き慣れた声が聞こえ、クロエは身体を起こすのも辛かったが思わず顔を声の方に顔を上げる。


「マ、マシロ・・・?」


  地に伏すクロエを守るようにしてマシロがそこに立っていた。竜の振り下ろされた腕は何かの力に阻まれているかのような、中途半端な位置で止まっていた。片腕を前に突き出しており、視線は竜を射抜いていた。その目は冷酷でとても冷めた目だった。


「消えろ」


  何度も聞いている筈の声だったがクロエの背筋が凍る程冷たい声だった。竜の全身が揺らぐ。 その時クロエは目を見張った。何故なら竜の半身と翼の大部分が何かに抉り取られたように綺麗に無くなっていた。

  竜の振り上げられていた腕が地面に落ちる。

 竜は未だ何が起きたか分からないような表情をしていたが次の瞬間には踵を返してクロエ達から離れて行った。


「大丈夫!? クロエちゃん!」


  ハッとしたようにマシロが振り向いてクロエの側にしゃがみ込む。 その目は潤んでいるように見えた。


(マシロ……記憶が……)


  そう発したつもりだったが声にならず、口を開閉しただけだった。


「もう大丈夫だから。私がおぶってあげるね……」


(ああ、マシロ……結局守られちゃったなぁ)


  薄れゆく意識の中でマシロの暖かさと感謝の気持ちがクロエの中を満たし、クロエは意識を手放した。


 *


  クロエをおぶっているマシロは至極ゆっくりとした速度で歩き、やっとの事でライズ達と合流した。


「マシロ! お前、いつの間にあんな所にいたんだ!? それに何故クロエをおぶってるんだ?」


「クロエちゃんは命の恩人ですよ!?

 そんな言い方は無いんじゃないんですか?ライズさん」


  ライズの言葉に珍しく怒気を含んだ口調で返し、ライズはマシロの迫力にたじろいだ。


「ラスクさん、クロエちゃんも一緒に連れてって下さい。お願いします!」


「ああ、良いよ。僕らも感謝してるし、実際彼女がいなかったら僕達はこの世にいなかっただろう。 しかし、何か言おうとしたけど忘れちゃったな」


  マシロの提案を快く受けたラスクが思い出すように言った。それに反応したライズも頷く。


「なんだ、お前もかラスク。実は俺も何か考えてたけど忘れたんだよ。 奇遇だな」


  ライズがラスクの肩を叩く。 それに難色を示したラスクは無視し、マシロが背負っているクロエを見やった。


「彼女、重いだろ? 僕が持とうか?」


「いえ、大丈夫です。気持ちだけ受け取っておきますね!」


  首を振って断って、少しの間三人で歩く。

 そして頃合いを見てラスクの転移魔法でギルドに帰還した。

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