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第7章:疑わしき者、執務室にて

 ダルが何を考えているのかは知らないが、とにかく悪魔探し…と言うか正体を暴くために、今度は第3王位継承者であり、宮廷魔道士長でもあるカンヅの寝室に来た。

 アポを取っていたとは言え、真夜中だと言うのに部屋の主は平然とした表情で私たちを迎え入れた。

「いやあ、ようこそ。夜中までご苦労様です。ダル殿、ルフィ殿。」

「いえいえ。僕たちなんてぜんぜん苦労していませんよ。…なあ、ルフィ?」

 …そこで同意を求められても。一応私、さっきから何かあったときのためにずっと臨戦態勢整えてるから精神的に疲れてるんだけど。

 まあ、頷いてはおくけどね。

「カンヅ殿もお疲れでしょうから、単刀直入に伺いますね。」

 にこっと笑い、ダルは何気なく近くにあった宝玉に手をかける。

 魔法なんかに使う道具なのだろう。ダルが手をかけた瞬間に淡い青色の光を放った。

「…このオーブで、悪魔の探知ができるって…ご存知でした?」

「は?はあ…一応私も魔道士ですからね。それくらいは存じておりますが…まさか!」

「ええ。お察しの通り、この宮殿の中に…それも陛下に近しい者が、悪魔に成り代わられている。」

「そんな!では早速調べなくては!」

 ダルに言われ、心底慌てた様にいい、カンヅは宝玉…オーブって呼んでたけど…に手をかける。同時にそれは光を放つのをやめた。

 …なんで光らなくなったんだ…?

「…私の魔力は微弱ですから、オーブの反応も微弱なのです。」

 うわ、心読まれた!?何で私の考えてることわかったの、この人!?

「ルフィって、考えてることが意外と顔に出るんだな。…それでよく傭兵が務まるな。」

「うっさい。」

 戦ってるときは表情に出さないようにしてるけど、普段のときは気が緩むのよ!

「そんな事よりも、早く悪魔を探さないと!」

「そうですね、僕も蒼神官としてお手伝いいたします。」

「おお、それはありがたい!われら魔道士の間でも名高き蒼神官殿のお力添えを頂けるとは。」

 …私、魔法に関しては専門外なんだけど。

 第3の魔法たる混沌魔法は使えるけど、神聖魔法と暗黒魔法に関しては一般的な知識程度しか知らないし。

「…ダル、私帰るわ。何も手伝えそうにないし。」

 ひらひらと手を振りつつ、私はその場でターンし歩き…出せなかった。

 しっかり、がっしりとダルが私の肩に手を置いている。しかも、かなりの馬鹿力で。

「何言ってるんだルフィ、君の仕事はこれからだろう?」

「……はあ?」

 訳がわからないまま、ダルの手を振りほどきもう1度彼らの方に向き直る。

「見つけた悪魔を退治するのは、君の役目じゃないか。」

 …そりゃ、そうだけど。

「その悪魔が見つかったら声かけてよ。」

「だから。もう見つかったって。」

 ……何言ってるんだこいつは。

 訝る私とカンヅ。一方でダルは、探偵を気取っているかのごとく取り澄ました表情で立っている。

「だ、誰が悪魔なのです!?私もお手伝いさせて頂きます!」

 近くにあったのだろう、カンヅはちゃきりと杖…魔道士の場合はワンドって言うんだっけ?…を構え、かなりやる気である。

「いやいや。あなたのお手伝いは必要ありませんよ。僕とルフィで何とかしますから。あ、あとラギス君も。」

 にこやかに魔道士長殿の申し出を却下し、ダルは錫杖を窓に向け…何かの光線をその先から打ち出した!

 当然、窓は割れるわ爆音は響くわ。おまけに今度はその錫杖の先をカンヅに向けるわ。

 こいつ!何を考えて…

「な、何を考えておいでなのです、蒼神官・ダル殿!まさか、あなたが悪魔という話では!?」

 うわ、すごい説得力。でも、ダルが今回の黒幕のはずがない。なぜなら今回の一件は、私達がこの国に来る前から始まっていたのだから。

 …って…ん?

「ダル、こんな時になんだけど。あんたの二つ名って確か『蒼神官』じゃなくて『海神官』じゃなかったっけ?」

 おまけにダルは「蒼神官」と呼ばれることを忌み嫌っている。以前悪魔に「蒼神官」と呼ばれた時、いちいちそれを訂正してた気が…

「そう。僕の正式な称号は『海神官』。ダッシャーさんは一発で僕の二つ名…称号を『海神官』だとわかっただろう?」

「そうだったわね。私としては、『蒼神官』でも良いような気がするけど。」

「いけないんだよ。神官の称号に『蒼』、『紅』、『黄』を使うのは、魔王を連想させるから絶対にしないんだ。この事は神聖魔法の使い手…つまり神官や魔道士なら誰でも知っていること。」

 ところが、カンヅはダルの鎌かけに乗ってしまった。ダルが自分のことを「蒼神官」と言ったことで、それがダルの称号であると勘違いした。

 そんな勘違いをするのは…

「そう。カンヅ。あなたが悪魔だ。」


「く…くくっ。まさかね。そんな事でばれてしまうとは思いませんでしたよ。蒼神官殿。」

 どうやらもう隠す気はないらしい。悪魔特有の血色の眼球に金色の瞳をらんらんと輝かせ、カンヅは肩をすくめた。

「この男に成りすまし、王家の人間の間に不信感を募らせ、世界中に邪気を撒こうという私の計画。こんな所でダメになるとは。」

「悪いが、君を野放しにすることはできない。」

 ダルが言うと同時に、私も剣を抜き払い、構える。

「一応聞くわ。…本物のカンヅはどうしたの。」

「決まっているでしょう?私は悪魔なのですよ、ルフィ殿。」

「…殺したのね。」

「恐怖という名の邪気を搾り取って、ね。あれはなかなか美味でしたよ。」

 …私は…この悪魔の演じた「カンヅ」しか見ていない。だけど、それでも…許せない。

「さて。予定とは大幅に違いますが…この国を、消しましょうかね。」

「何!?」

「…一夜で小国とは言え、国が消える。…他国にとったら、そりゃあ脅威でしょうね。でも…」

 一拍おいて、私は相手に向かって宣言する。

「そんなこと、させないわよ。…海将軍の名にかけて、ね。」

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