表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

クリスマスってなあに?

『クリスマス』

 

 それは一種の祭事である。日本からはるか遠く、ある西の国で偉大な聖人が生まれた事を記念する日である。


 名はイエス・キリスト。


 彼はキリスト教をと言う宗教を創った聖人だ。キリストの偉大さは今も世界中で見受けられる。世界中に存在する彼の信者がそれだ。

 

そして、彼が生まれた場所からあまりにも遠いここ日本でも、毎年国中で「メリークリスマス」と、盛大に祝われている。


***


唐突であるがここで少し、道行く人にクリスマスが一体なんであるかを聞いてみよう。


毎年町中にきらびやかな装飾を施し、聖人を祝っているのだ。おそらく即答であろう。本来ならばこの様な事、まったく意味をなさないのだが、まあ簡単なクイズの様なものだ。


おっと、前から人が歩いて来た。まずは一人目だ。それでは張り切って行こう!


***

 

 ……では次…………、192人目。


 ……今度の人はどうだろうか。もしかすると間違えるかもしれない……。


 そんな事を思いながら質問を投げかけた。


 「すみませーん。街かどインタビューなんですけど。クリスマスの起源は何かご存知ですか?」

 

 相手は答えた。


 「クリスマスの起源? さあ、ヨーロッパの偉い人が告白した日とかじゃないんすかね? つーか俺ら、これから『クリデー』なんで、もういいっすか?」

 「もう行こうよ、ヒデチン。こんなクリボッチほっといてさー。早くしないとホテルうまっちゃうよ~」


 そう言いながら、イカツイ兄ちゃんとガラの悪い姉ちゃんは去って行った。


補足しておくと『クリデー』とは『クリスマスデート』の略だそうだ。


「これで192人連続……か」


クリスマスの起源を聞いてから192人.未だ誰一人として正解を言えたものはいない。


東で若い女性に答えを聞けば「さあ、ヨーロッパの風習ですかね?」と惜しい事を言われて、西で子供に尋ねてみれば「サンタさんが、おもちゃをくれる日!」と自信満々にハズレを言われ、南でリーマン風の人に聞いてみれば「あんなの商業業界の在庫一掃セールですよね」と無慈悲な言葉が私の心に突き刺さり、北では一人で歩いていた若者に「クリスマス」と尋ねるだけで奇声を上げながら逃げられる始末であった。


何故この様な事態になってしまったのであろうか。


私はこの街かどインタビューを始める前に言った。


『即答だろう』と。


しかし現実はどうであろうか。


この日本と言う極東の国ではクリスマスが恋人と仲睦まじく過ごす行事と、はたまた年末前に在庫商品を一斉に売り出す、クリスマス商品をぼったくり価格で売り飛ばす産業の一環として処理されているではないか。


これでは天に召されたかの聖人も浮かばれまい。

きっと草葉の陰で、いや、天国の門の前で顔を赤くさせながら「おお、神よ……」と嘆いているに違いない。


考えてもみたまえ、かの聖人は生涯結婚をしなかった。彼は博愛を教えとしてきた。つまりはすべての人を愛すると言う事だ。まあ、彼が神であったから結婚などできるはずもなかったのだが、とにかくできなかった。


そして、ここで一度覚えておいてほしい。博愛は、愛であって、恋ではないのだと。


それがいまや、生涯一度も足を踏み入れたことのない極東の国で、自分の出生が恋する者のためのイベントになってしまっていることに嘆かない訳がない。


というか、それを一度自分に置き換えて考えたまえ。どっかの行った事も無い遠い国で、自分の誕生日が愛を伝える日になっている事を想像してみたまえ。


……、なんか悲しくなって来ないか? あと猛烈にハズイだろ?


だからこそ、だからこそ言いたい!

君たちは大いに間違えていると!

クリスマスは本来、家族とひっそりと過ごすものだと!


決して、恋人とホテルで楽しく睦言を交わす日ではないと!


私はこの時、心に決めたのだ。


「この国のクリスマスとリア充をとりあえず、ぶっ●してやるぜ! ヒャッハ――!!!」


今年で彼女いない歴=年齢、二十年目に突入していた、いたいけな大学生の決心で合った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ