プロローグ:皮の下の継承
【警告:低能な異世界信者への引導】
本作は、脳を停止させて「異世界転生」のぬるま湯に浸かっている方々のための娯楽ではありません。
京都の静寂の裏で繰り広げられるのは、皮を剥ぎ、アイデンティティを奪い合う、吐き気をもよおすような解剖学的な地獄です。
都合の良い救済も、無双できるチート能力もここには存在しません。
もしあなたが、文字を読むだけで嘔吐し、鏡を見るのが怖くなる程度の精神力しか持ち合わせていないのなら、今すぐブラウザを閉じ、安っぽいファンタジーの世界へ逃げ帰ることをお勧めします。
「……準備はいいですか? あなたのその『顔』が、他人のものに変わる前に。」
POV: 犬神 栞 (Inugami Shiori)
京都の夜は、湿った重い絹の布に包まれているようだ。
古い京町家の奥、鏡の前で母・朱里が私の髪を梳いている。16歳の私と、22歳の母。
私たちは親子というより、年の離れた姉妹、あるいは「出荷を待つ標本」のように見える。
「栞、動かないで。あなたの肌は、この家で最も高価な資産なのよ」
母の指先が私の頬をなぞる。その指は氷のように冷たく、どこか「作り物」のような違和感があった。ふと、母の耳の後ろに、引きつれたような赤い線が見えた。
それは、皮膚を無理やり引き剥がし、別の誰かの顔を貼り付けた痕跡――。
「お母さん、痛くないの?」
私が尋ねると、母は鏡越しに不気味な微笑みを浮かべた。その笑顔は左右が完璧に非対称で、頬の筋肉が動くたびに、皮の下で何かがピチャピチャと音を立てていた。
「痛みなんて、美しさの前では無意味よ。もうすぐ、あなたも『朱里』になる日が来るわ。そして私は、次の『祖母』の皮を被るの」
部屋の隅では、25歳の父・江戸が、銀のトレイに載った「薬品」を整理している。父の顔もまた、あまりにも整いすぎていて、感情が死んでいる。父が瞬きをするたびに、瞼の裏から黄色い粘液が滲み出していた。
「江戸さん、準備は?」母が問う。
「ああ。新しい麻酔薬だ。これなら、意識を保ったまま、剥離の感覚を鮮明に味わえる」
父は冷笑を浮かべ、俺の方を見た。
「なろうの読者諸君。君たちが夢見ている異世界の魔法は、失った肉体を治癒するんだろう? だが、この現実の京都には、魔法なんてない。あるのは、他人の皮を剥ぎ、自分の老化を隠すための、血生臭い工芸技術だけだ」
俺は足元にあるゴミ箱を見た。
そこには、昨日まで母の顔の一部だったはずの、生々しい「肉の残骸」が、腐った果実のように捨てられていた。
「さあ、栞。晩餐の時間よ」
父が差し出したスープの中には、誰のものか分からない「指の先端」が、具材のように浮いていた。
異世界で不老不死を手に入れる? 笑わせるな。本当の不老不死は、こうやって他人の肉を継ぎ接ぎして手に入れるんだよ。君の肌も、いつか誰かの『顔』になるかもしれないね。……あ、今、耳の後ろが痒くないかい?




