パラレル・情報の炎&重なる思考1
秀に一声かけて体育館を出た俺は、未来と斎の会話をキューブを使って盗み聞きしながら
「谷川氏は……勘が鋭いね」
俺の横に座って一言も発さずただじっと会話の流れを聞いていた凪さんは、
「ええ。どちらかというと、推理に近いようにも思いますけど」
観察眼が鋭いのは前々から知ってはいたのだが、今回の件ほど異次元だと痛感した経験はない。逆に言えば、そんな常人離れした目と思考の持ち主でないと、未来あいつの真意を洗い出せないって話なんだろう。
「ごめんなさい。本当なら、俺がきちんと気付いてやらなきゃいけなかったんですけど」
「仕方ないよ。あの子は隠すのが上手だから」
再度仕方ないよと静かな言葉をかけられた俺は、そのまま押し黙ってしまった。それ以上悔いるなという凪さんの無言の圧を感じたから。
「……今日ね。昼頃、珍しく未来からメールがきたんだよ」
「え、未来がですか?」
「うん。『本部の電波を一時的に絶ってほしい』ってね」
「本部に連絡が通じなかったのって……」
「うん、まぁ……そういうこと。あの子から僕にお願いなんて、滅多に……というか、全くと言っていいほどしないじゃない? だからつい手を回しちゃってね」
「そんなのどうやって?」
「顔が効くからね。上に掛け合ってみたら、今回だけって条件で手を打ってくれたよ」
「一応、呼吸をしないはずの死人が息を乱すなんて初めてだな、とは思ってたんです。でも……まさか未来だとは思わなくて」
「未来が自分の力で【明治】から脱出していなければ、明治時代から戻ってこられなかったかもしれないね」
「はい。多分【接木】で移動したんだと思います。話してる最中、確か木に手をついてました」
泣き声しか聞こえなくなってから少し経って、落ち着いたらしい未来は斎へ補足する。
数日前に死人化したあの子に会って、あんまり危険じゃなさそうだったのと、生前を知っていたからついキューブ内の空間に家を作ってしまったのだと。
そしたらすごく懐かれて。
だからお願いして力を借りることができた、と。
「未来が子どもの姿になってたのはそのせいだね。ガラス玉割って能力使うだけならあんまり見た目は変わらないけど、直接死人に頼んで乗り移ってもらえばそっちに寄っていくから」
「それこそ、俺の意思が死人化したときみたいにですよね」
要はそこまで計算してたわけだ。
「お仕事、大変な時にごめんなさい。でも……知っていてもらった方がいいと思って」




