二章複製2
俺はもう一度、未来の手を強く握った。
「……なぁ、加藤」
「おう?」
「球技大会の時にさ、お前のチームだった……えっと」
「友人AとBか?」
「覚えてやれよ……」
「冗談じゃ。檀野と田川じゃな。どうした?」
「そう。あいつらにさ、礼言いたいから今度クラス行くの一緒に来てくれ」
「ふ、なんじゃ。他学年のクラスに一人で行く勇気はないんか?」
「うっせぇな……」
「承知した。体を治してからじゃぞ」
【台風の目】 無害な場所、無敵の場所
「秋月、こっち来て!」
いちか、ばちか。
「台風の目」
周りからの攻撃風に取り込まれて周り、上へ吹き飛んでいく。きえた瞬間、静寂が広がった。
生きる。
絶対に、またみんなと日常を過ごしたいから。
「さぁて……血祭り再開といきましょうか」
「あなたは、一体何者なんだろう」
言葉にできない、話せないものたち。
その哀しみをわかってやることはできるだろうか。
幼い子供が自分の言葉で表現できなくても親ならわかるように、何も言わなくてもわかってやれないのだろうか。
涙。涙。……涙。
「ごめんね、わかってあげられなくて。だけど、信じて。あなたの哀しみを解りたいと思っていること」
『なぜ、そんな顔をするの』
悲しい顔をする未来へ
「あなたにも、きっと何か哀しいことがあったんでしょう」
「人間を恨んで、恨んで……何が哀しかったのかさえ、わからなくなってしまうほどに」
「ごめんね」
「ごめんね……」
⤵︎ ︎卯月
『相沢未来。お前の行為は正しい』
『メイたち死人と、人間が共に暮らせるのなら。お互いが本当にわかりあえるのだとしたら。メイたちはっ、幸せだ……!』
『だけど、現実はそうはいかないだろう。人間を恨み、襲う者がいるのだから』
『だかど、メイたちは……! お前の言う通り、哀しかったことをわかってほしいだけだ!』
『誰一人、殺すために生まれてきたりなんかしない。ただ、哀しいと伝えようとして、全力でぶつかって、そうして人間を殺す!』
『殺したあとに感じる快楽が、感動が、恨みを晴らしてやったという達成感が! 次に人間を襲うきっかけとなる』
『そうして……快楽に溺れる』
『いつしか、死人として生まれたことに喜びを感じるようになる。そうなったら、もう……お前たち人間では、太刀打ちできなくなるだろう』
『どんな武器を作ろうと、どんなにお前たちが頭を柔軟に使おうと。きっと……』
「あなたたちがそう思ってくれるなら、私は頑張る。どんなにーーな道のりでも、弱音なんて吐かない。絶対にーー!!」
「」
『──ありがとう』
鍵が閉じそうになる
まだだ。戻ってこさなきゃ。
「ヘンメイ! お前の主を思い出せ!!」
能力出なくなる
『はーん……』
『ナイト君……キミさぁ、疲れてきたね?』
『動きが無いのは結構キツかったけど、想像出来なくなってきた場合はまた別問題だね』
頭の中だけで想像できなくなってる。
今まで浮かべられていた技のイメージが、頭に出てこない。
昼食は後で食べる予定だったから朝メシ以降、口に入れたのは瀬戸にもらったチョコひとつ。
足りない。頭を使うための糖分と水分が、現実の俺の中で足りていない。
ーーで、リミットが早まった!?
『……酷いだろう?当て字なんだよ。だけど、主人の意図を汲んでくれたことが嬉しくて……ボクは泣いた』
嘘だ。そう言いたかった。
味方なわけがない。もう既に三人殺された。
残酷無慈悲なやり方で、奴は
「なんだよ、これ……」
HPが0になったから……ここで死んだから、現実でも死んだ。そう、言いたいのか。
……無理もない。
阿部が傷を治す力を持っていると奴に知られなければ、おそらく狙われることはなかっただろう。
ヘンメイの言っていた、教えてくれてありがとうの言葉が、秀の心を抉っているんだ。
「しかし、あなたがたは違う」
「実績……今までの戦闘のデータを見ても、あなたたちなら希望があります。未来さんーー、あなたたちには、ヘンメイ討伐にぜひご協力いただきたい」
すると、国生先生から「お待ちください」と制止の言葉がかかる。
「谷川君。あなたはこちらへお戻りください」
俺たちの中で、唯一。斎だけが呼び戻された。
「あなたはキューブの創設者です。そして、今その完成に最も近づいている。この状態で、もしもあなたが、死んでしまったら。この国はどうなるとお思いですか?」
一言ひとこと区切りながら、宥めるのではなく強引にわからせようとする声が、更に強くなってくる。
「よく考えてください。あなたのその手に、技術に、脳に。どれほどの人の命がかかっているのかを」
睨んでいた目が少しずつ大きくなる。目を見開いて、斎の視線が迷い出す。
「あなたを失うことは、この国の滅亡を意味します。危険とわかっていながらあなたを死線へ送り出すなど、わたしはしませんしお願いされても承諾しません」
「お戻りください。谷川斎博士」
「バカ、未来!!」
「あのアホ……ッ! 【火柱】!」
「なんでなんだろな」
「去年もそうだった。相沢は……一人でどうにかしようとする」
「変わったと、思ってたのに」
他の人に手を出す必要はないよね
「異常はありませんか」
デスゲームからリタイアして、先に死の訓練場へ戻ってきた斎はすぐに確認の言葉をかけられた。
「体感では、特に何も」
「そうですか。なら良かったです」
ほっとするわけでもなく、あくまで事務的に告げるあいかの言葉に斎は唇を噛む。
「俺が、みんなみたいに強ければ。あの場に残してくださったんですか」
「タラレバを言っている暇はありません。どうか気持ちを切り替えてください」
「なにも、見ているだけにしろと言っているわけではないのです。むしろ、あなたには酷なお願いをしようとしている」
「酷?」
「ええ」
変わらず抑揚の無い声で あいかが、急に膝をついた。指をそろえ、頭を下げる。
「今この場で、新たなキューブを完成させてください」
「やめてください先生。どうか姿勢を戻して」
「説明してください。今必要だというのは、どういう?」
「あなたが作っている新たなキューブとは、以前作った赤いキューブと似ているとお聞きしています。細かな点は知る由もありませんが.......もしやそれは、他人に能力を付与できるタイプの代物なのではありませんか?」
あいかが
「わたしは、ヘンメイがこの後…… で、ここを襲うと予想しています。その場合、失礼ですがわたしとあなただけではここにいる皆を守れない。協力できる方が必要です」
ちらりと、眠ったケトとおキクを抱え、加奈子の横に佇む優をあいかは見る。
「……誰か、他にマダーは呼べないんですか」
「先ほど申し上げた通り、わたしはその辺のマダーがヘンメイに勝てるとは思いません。能力で生み出した も、かなりの力を持ちます」
立ち上がりながら、
「最悪の事態を考えると、マダーの数を増やすというのは良策ではないでしょう。向かわせた分、殺されてしまっては夜の討伐に多大な影響ガデます」
「本当なら、凪君に戻ってくるよう司令官が指示するはずだったんです。しかしいざ連絡をしてみると、ノーと返事がきたそうで」
「え……それって、弥重先輩自身が、帰らないと言ったってことですか?」
あいかは無言で頷いた。
「どのような意図があるのかはわかりません。彼のことですから、他の精鋭部隊が任務中なのは知っているはず。なのにそう言うのであれば、きっと考えがあるのでしょう」
「とにかく、今回は力を借りられないのです」
「だからお願いします。ここで、彼らを助ける手伝いを。皆を守るために、あなたの頭脳を貸してください」
「……予想で構いません。先生の中での『この後』とは、どれくらい先を指しますか」
「……よくて、二時間かと。彼らが進むのが早ければもう少し早くなると思います」
「ヘンメイは、『CPを作る能力』を持つ死人です。中にいる彼らがこちらの助けに入れない時間……つまり終盤かと」
「誰かが倒れて、誰もリタイアできない。そんな状態まで追い込んでから……ということですか」
「わかりました」
「集中します。話しかけないでください」
「ええ」
「よろしくお願いします」
「どこへ?」
「電話をします」
「彼女も呼んでおく方が、いいと思うので」
さぁね、教えてあげないよ』
『だけどそうだなぁ、言えるとすれば……』
死人が、未来を指さした。
『ハズレを殺せば、次の段階へ進む』
「なぜですか。俺も戦えます」
「あなたは自分が何者であるかを理解していますか」
同じように低い声。本部の時に聞いた、ケトに襲われた時を思い出す、殺気に似たものを纏った声が、斎に容赦なく浴びせられる。
「あなたはキューブの創設者です。そして、今その完成に最も近づいている状態ですね」
「だから、なんですか」
「その状態で。もしもあなたが、死んでしまったら。……この国はどうなるとお思いですか?」
一言ひとこと区切りながら、宥めるのではなく強引にわからせようとする声が、更に強くなってくる。
「よく考えてください。あなたのその手に、技術に、脳に。どれほどの人の命がかかっているのかを」
睨んでいた目が少しずつ大きくなる。目を見開いて、斎の視線が迷い出す。
「あなたを失うことは、この国の滅亡を意味します。危険とわかっていながらあなたを死線へ送り出すなど、わたしはしませんしお願いされても承諾しません」
「お戻りください。谷川斎博士」




