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スターダスト・オーヴァドライヴ  作者: 多咲 朔夜
chapter1
22/32

DIVE6「シックスウォー」1

 白い壁で覆われた無機質な要塞、それがレンの抱いたPT社データベースの印象だった。

 電脳に没入した4人はすぐさまヴァーチャロイドへの換装を済ませ、件のワームホールを通って難なくPT社内に潜り込むことに成功した。

 以前侵入しようとした際はイヴのいた別の電脳空間へと飛ばされてしまったため、レンからするとはじめて訪れる場所だ。スミカにとっても然り、


「なんか殺風景な場所だね」と適切な感想を漏らしている。


 そのスミカのヴァーチャロイドは、〈フェアリーフェザー〉という。白と橙を基調とした女性らしいスマートで流線的なフォルムを持つ、スピード特化型の機体である。


「デジタルダンジョンですからね。もともとアバターやヴァーチャロイドの活動を想定していない空間を、それらが活動するにあたって最低限支障のないよう体裁を整えているだけ、といった感じなんです。飾り気がないのはご愛嬌ですよ」


「スミカはデジタルダンジョンにくるのははじめてだったな。ここではムーヴもログアウトもできないし、デリートは死に連なるダメージを脳に与える。充分気を受けろよ」


「うん、分かってる」


 レンの警告に、スミカは神妙な面持ちで首肯した。


「一つ取り決めをしておこう。HPが3割切ったらアボートするんだ。そうすれば最悪の事態だけは避けられる」


 アボートは分子電脳変換機ニューロントランスミッターと端末とを中継しているエントリデバイスの機能を停止することで、脳と端末の間に築かれた回線を強制的に遮断し、意識を現実に緊急避難させる非常プロトコルだ。この方法でならデジタルダンジョンから生きて脱出することができる。

 ただし、アボートはあくまで非常手段であり、言うなれば端末のコンセントを引き抜いて電源を落とすようなもので、頭痛や吐き気、ひどいときには記憶の欠損などといった副作用を人体に与える。とはいえ、デリートの際の被害に比べれば可愛いものだ。

 レンの提案に全員が賛同した。寝たきりになった仲間の介護などぞっとしない。


「で、潜り込んでみたはいいが、これからどうする? 手分けしてイヴちゃんを捜すか?」


「まさか、ナンセンスです。どれだけの広さなのか見当もつきませんし、警備も厳重でしょうから戦力を割くのは利口とはいえません」


「ならどうする?」


「事前のハッキングでセキュリティエリアの場所だけは調査済みです。そこに到達してデータにアクセスできれば、このダンジョンのどこに誰がいるのか調べることができます」


「じゃあ最初の目的地はそのセキュリティエリアってわけだ」


 方針が定まり、4人はウィスパーを先頭に移動を開始する。

 しばらくは細い一本道が続き、敵と遭遇することもなかった。まるで病院の廊下のような不気味な静けさで、ここが本当に大企業の巣窟の中なのか疑わしくなる。

 やがて眼前に逆光が差し込んだ回廊の出口が見えてくる。すると〈ウィルオ・ウィスプ〉が緩やかに減速し、


「聞いてください、レン、スミカ。あの先で巨大なフロアと合流します。そこには無人機オートマタが大量に配備されていて、侵入者の姿を発見すると一斉に襲い掛かってきます」


「前回おれ達が二人できたときはここで引き返したんだよな。見つからずに通過するのは難しそうだってんで」


 さらに近づいていくと、向こう側の光景が目視できるようになる。どうやら自分達のいるこの廊下はフロアの高所と合流しているようで、眼下には無数の無人機の姿が窺える。

 キャタピラで移動する、ヴァーチャロイドの胸あたりの体長の戦車型無人機で、単眼のメインカメラに二丁の銃座を備えている。


「強いのか?」


「いえ、はっきり言ってゴミです」ウィスパーはすげなく言い切り、動きは鈍重で、AI操作なので照準も甘い、HPもヴァーチャロイドの10分の1以下です。ただし、それは単体での話。これだけ数が多くなると流れ弾をもらう確率も増えますし、なによりヴァーチャロイドと違って人間が絡まない単なるデータなので、無限に複製できます」


「半永久的に沸いてくるRPGのザコキャラみたいなもんか。で、どうする?」


「先制攻撃を叩きこんで正面突破さ」


「B・B、真面目に考えようよ。そんなことしたらあっという間に敵に囲まれちゃうよ」


 B・Bの短絡的な提案をスミカが即座に却下するが、意外にもウィスパーが賛同した。


「ふむ、もしかしたらそれが正解なのかも。セキュリティエリアに近づけば近づくほど警戒はきつくなるわけで、見つからずに到達するのは不可能です。どのみち交戦が避けられないなら、初撃で相手を混乱させて少しでも対応を遅らせたほうがいい」


「だろ? おれはそれが言いたかったんだ。考えなしに提案したわけじゃないぜ。こそこそしてるのは性に合わんしな」


 むしろ彼の本音は後半の部分に集約されている気もしたが、レンはあえて突っ込まなかった。隠密行動ってガラじゃないのは、自分も同じだったからだ。


「よし、じゃあ派手な花火をぶちあげてやろうぜ。富裕層トップス共に、俺達貧困層(アンダーズ)が乗り込んできたってことを報せてやるんだ。かませ、B・B!」


「おおとも、任せろ!」


〈バスターアームズ〉がバーニアを噴かしてフロアへと勢いよく飛び出す。無人機たちの視線が〈バスターアームズ〉に集中し、銃口が一斉に向けられる。しかし、すでに〈バスターアームズ〉は体中に搭載されたミサイルキャリアを全て開放していた。


「『インフィニットブラスト』!」


 B・Bが叫ぶのと同時、開け放たれたミサイルキャリアから次々とミサイルが射出されてフロアに降り注ぐ。その場を警備していた無人機の大半が砕け散って吹き飛んだ。


「今だ、行くぞ!」


 レンの号令と共に3人もフロアにまろび出て、それぞれ武装をアップし残った無人機を掃討していく。

 ある程度まで数を減らしたところでフロアを縦断し、奥へ続く通路へと進行する。と、ダンジョン内にアラート音が響き、電子音声のアナウンスが流れる。


『データベース内に不正アクセスあり。侵入者を直ちに駆逐せよ。繰り返す――』


 直後、レン達の眼前に幾条もの光の柱が出現し、大量の無人機がアップされる。


「おいでなすったな。ここからは長い戦いになる、気を引き締めていくぞ、みんな!」


 ビームソードを構えた〈ブレイヴ・ゼロ〉が先陣を切り、戦いの幕が上がった。

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