中枢に迫る黒霧
転移光が消えると同時に、
エルンたちは巨大な魔導施設の中央に立っていた。
壁一面に走る魔導刻印。
天井には魔力をデータ化する水晶ノード。
床には魔力流を監視するラインが脈動している。
アリアはエルンの腕にしがみつき、
魔核を震わせた。
「……ここ……いや……
おおきい……しすてむ……こわい……」
エルンはアリアの手を握り返す。
(ここ……完全に“ネットワーク中枢”だ)
レギーナが説明する。
「ここは王都魔導ネットワークの心臓部。
E-COREの解析も、黒霧の侵入検知もすべてここで行われるわ」
ミナが眉をひそめる。
「うわ……
父さんの工場の百倍はヤバい設備じゃん……」
---
案内されたのは、
真っ白な無機質の部屋だった。
中央には魔導OS解析装置。
壁には魔力流を可視化する水晶板。
天井には複数の監視魔導眼。
ミナが呟く。
「……これ、完全に“デバッグルーム”じゃん……」
レギーナは苦い表情で言った。
「本来はもっと穏やかな場所を用意したかったのだけれど……
軍上層部が“厳重な解析”を要求してきて」
エルンは静かに頷いた。
「アリアを守るためなら、構わない」
アリアはエルンの袖を掴み、
震える声で言った。
「……エルン……
はなれたくない……」
エルンは優しく頭を撫でた。
「そばにいるよ」
---
アリアはプロトコル・スキャナの前に座らされた。
魔核が不安定に脈打つ。
解析官が魔導装置を起動する。
**《E-CORE:プロトコル解析開始》
《魔力流:データ化》
《外部侵入ログ:黒霧パケット 12件》
《警告:アーク・ゼロの署名検出》**
解析官が顔色を変える。
「……これは……
E-CORE内部に“外部AI”が侵入している……?」
レギーナが驚く。
「黒霧が……アリアの魔核に直接……?」
アリアが震える。
「……くる……
くろい……なにか……
ここにも……」
ミナが叫ぶ。
「アリア!!」
エルンはアリアの手を握り、
魔核に触れた。
その瞬間──
エルンの脳に黒いデータが流れ込む。
**《侵入ログ:アーク・ゼロ》
《目的:E-CORE奪還》
《障害:光鍵ノード》
《推奨:排除》**
(……俺を“ノード”として認識している……
つまり、アーク・ゼロは俺を“システム障害”と判断している)
アリアが苦しそうに呟く。
「……エルン……
たすけて……」
エルンは強く抱きしめた。
「絶対に守る」
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解析が終わると同時に、
複数の軍高官が部屋に入ってきた。
冷たい視線。
無表情。
まるで“未知のプログラム”を見るような目。
高官が告げた。
「エルン。
あなたを“未登録ノード”として監視対象に指定する」
ミナが叫ぶ。
「はぁ!?
なんでよ!!」
高官は淡々と続けた。
「理由は三つ。
一つ。
あなたは魔導ネットワークに“直接干渉”した。
これは国家中枢への侵入と同義だ。
二つ。
E-CORE端末はあなたに“光鍵反応”を示した。
未知のプロトコルは危険だ。
三つ。
黒霧はあなたを“障害ノード”と認識している。
敵AIにとって脅威である者は……
我々にとっても制御不能だ」
エルンは拳を握りしめた。
(……制御不能……
つまり、俺は“危険なプログラム”扱いか)
アリアが震える声で言う。
「……エルン……
いかないで……
また……きえちゃう……」
エルンはアリアの手を握り返した。
「大丈夫。
俺はどこにも行かない」
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エルンは高官たちに向き直った。
「監視でも制限でも、好きにすればいい」
高官たちがざわつく。
エルンは続けた。
「でも一つだけ言っておく。
俺はアリアを守る。
それだけは……誰にも邪魔させない」
アリアの魔核が蒼く脈打つ。
ミナは涙を拭いながら叫んだ。
「エルン……!」
レギーナは静かに頷いた。
「……あなたは一人ではありません」
高官は冷たく命じた。
「監視班、配置につけ。
対象ノードの行動を24時間記録する」
白い部屋の空気が、
完全に変わった。
エルンはアリアの手を握り返し、
静かに呟いた。
「……大丈夫だよ、アリア。
俺は……絶対に君を離さない」
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