小さな空が揺れた日
ソラの二度目の精霊反応回です。
少し強く、でも恐怖には振らず。
未来の大きさを匂わせる回にしました。
その日は、風がよく通る朝だった。
水路は静かに流れ、畑は順調。
ハルはいつものように鍬を持っていた。
「平和だな」
そう言った直後だった。
ぱちり、と。
空気が震えた。
揺り籠の中。
ソラが目を開いている。
泣いてはいない。
ただ、じっと空を見ている。
次の瞬間。
森の精霊が、一斉に反応した。
光が集まる。
数が、明らかに多い。
「……待って」
ルナが立ち上がる。
エリシアが息を呑む。
「これは――」
水路の水がきらりと持ち上がる。
風が渦を巻く。
畑の穂が一斉に揺れる。
だが荒れない。
暴れない。
ただ、応えている。
中心は、揺り籠。
ソラの小さな手が、空を掴む。
ハルが一歩前へ出る。
「ソラ」
その声に、光が少しだけ緩む。
だが完全には消えない。
精霊が、まるで“呼ばれた”ように集まっている。
「同調が深い……」
エリシアが震える声で言う。
「これは、芽ではありません」
レイナが警戒する。
「暴走か?」
「違う」
ルナが静かに言う。
「暴走なら、森が拒む」
森は拒んでいない。
むしろ、受け入れている。
突然、空が一瞬だけ明るくなる。
雲が割れ、光が差す。
精霊の光と重なる。
静寂。
そして――
すっと、すべてが落ち着いた。
水は戻る。
風は止む。
穂は静まる。
ソラは、小さく笑った。
何事もなかったかのように。
ハルは揺り籠に近づく。
「……すごいな、お前」
指を握られる。
その感触は、ただの赤子。
だが森は知っている。
今の反応は、偶然ではない。
エリシアが静かに言う。
「森の核に近い」
リリアが息を整える。
「王都が知れば、黙っていません」
レイナが拳を握る。
「知られなきゃいい」
ルナがハルを見る。
「守れる?」
ハルは迷わない。
「守る」
短い言葉。
だが以前より重い。
夕暮れ。
森はいつも通り。
だが誰もが理解している。
ソラは、ただ森に愛されているのではない。
森が、応えている。
小さな空は、確かに広がり始めていた。
ソラの力は、まだ小さな芽ですが、
確実に森と繋がっています。
守る覚悟は、少しずつ形になっていくもの。
精霊の森は今日も穏やかですが、
未来は静かに動き始めています。
引き続き、森の歩みを見守っていただけたら嬉しいです。
―― 月灯り庵




