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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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夜を越えてきた者

ルナの過去に触れる回です。


強さと孤独。


壊さない強さを知った夜。

月は高く、森は静かだった。


王女リシェリアは、再び丘の端に立つ。


昨夜と同じ場所。


だが空気は少し違う。


「また夜を選びましたね」


背後から、ルナの声。


銀の髪が月光を受けて揺れる。


「昼より、夜の方が本音が聞こえる気がします」


王女の言葉に、ルナは小さく笑う。


「夜は隠せませんから」


ヴァンパイアにとって、夜は本来の時間。


隠れない時間。


「あなたは、なぜ森に?」


王女が問う。


単純だが核心の問い。


ルナはしばらく空を見上げる。


「昔は、居場所がありませんでした」


静かな声。


感情を誇張しない。


だが重みはある。


「夜の種族は、恐れられます」


「力があればなおさら」


ルナは笑う。


「若い頃は、強くなれば居場所ができると思っていました」


だが違った。


強さは恐れを増やすだけ。


支配は孤独を増やすだけ。


「壊さない強さを、知らなかった」


森で初めて知った。


急がない。


奪わない。


囲わない。


それでも守れる。


ハルが、森が、それを示した。


「ハルに救われたのですか?」


王女の問い。


ルナは首を傾ける。


「救われた、というより」


少しだけ微笑む。


「止められた」


壊れる方向に進みかけた夜を。


止められた。


「森は、私を恐れませんでした」


それが全て。


精霊が距離を取らなかった。


子どもが泣かなかった。


それだけで、夜は柔らいだ。


王女は静かに聞く。


王都にも夜はある。


だが恐れが多い。


力で制御する夜。


森の夜は違う。


「だから守るのですね」


ルナは頷く。


「奪われないように」


「急がされないように」


森が壊れれば、自分も壊れる。


「王都は、あなたにとって何ですか?」


逆に問われる。


王女は少し考える。


「責任です」


「逃げられない場所」


ルナは優しく笑う。


「逃げなくていい夜を、ひとつ持っていてください」


それは忠告ではない。


願いでもない。


経験から出た言葉。


丘の下。


ソラが眠りながら小さく笑う。


精霊が穏やかに揺れる。


夜は、壊れていない。


「森を守るのは、恩返しですか?」


王女の最後の問い。


ルナは首を振る。


「違います」


月を見上げる。


「好きだからです」


それだけ。


単純で、強い理由。


王女は胸の奥が少し軽くなるのを感じる。


守る理由は、理屈だけでなくていい。


好きだから守る。


その単純さが、森を壊れにくくしている。


夜は静かに更ける。


王女とルナは並んで立つ。


過去を越えてきた者と、未来を背負う者。


森は何も言わない。


だが、揺れは穏やかだった。

守る理由は、理屈だけでは続きません。


好きだから守る。


それが森の芯です。


―― 月灯り庵

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