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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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海の味

御用商人に海鮮を頼む回です。


森は自給自足ですが、閉じてはいません。


外と繋がる“豊かさ”を描きました。

「魚が食べたい」


ぽつりとルナが言った。


畑の手入れを終えた夕方。


森は実りに満ちている。


穀物も、果実も、野菜も豊かだ。


だが――


「森に海はない」


レイナが笑う。


「当たり前だろ」


ハルは少し考えた。


森は自給自足。


だが閉じてはいない。


「頼むか」


「誰に?」


「御用商人」


数日後。


森の入口に馬車が止まる。


ダリオが降りてくる。


「また甘い依頼ですか?」


口元は笑っている。


だが目は商人のそれ。


「海鮮だ」


ハルが言う。


ダリオが目を瞬く。


「海の?」


「干物でもいい」


「新鮮ならなおいい」


無茶を言う。


だが森の作物は王都で高値。


交換条件は成立する。


「運搬に時間がかかります」


「氷魔法は?」


エリシアが小さく提案する。


ダリオが笑う。


「本気ですね」


交渉は短い。


森は値切らない。


ダリオも吹っかけない。


信頼の上の商売。


数日後。


再び馬車が現れる。


箱が運び込まれる。


子どもたちが目を輝かせる。


「これが海?」


カイがそっと覗く。


中には氷に包まれた魚。


貝。


干物。


見慣れない色。


「……匂い、強いな」


レイナが眉をひそめる。


ルナは慎重に触れる。


「命の匂いね」


森とは違う。


だが同じ“循環”。


調理は盛り上がった。


エルフが包丁を握り。


ドワーフが火を整え。


ルナが味を整える。


ユリウスが驚く。


「王都の料理より丁寧だ」


ハルは笑う。


「腹が減るからな」


焼ける音。


立ち上る香り。


森の子どもたちは、少し緊張している。


「いただきます」


最初の一口。


沈黙。


そして。


「……うまい!」


バルドが叫ぶ。


カイが目を丸くする。


ミナが小さく笑う。


ソラが「あ」と声を出す。


精霊が揺れる。


森と海が、交わる。


ダリオはその光景を見ていた。


「森は、閉じていない」


小さく呟く。


広げない。


だが拒まない。


必要なものは、取り入れる。


それが強さ。


夕暮れ。


丘の上。


ハルが空を見る。


「海か」


行ったことはない。


だが、遠くない。


森は森。


だが世界は広い。


ソラが小さく声を出す。


「あい」


甘い味と、塩の味。


精霊の森は、また一つ広がった。

森にないものも、拒まない。


広げなくても、世界は繋がっています。


甘さは、孤立ではありません。


―― 月灯り庵

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