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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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はじめてのことば

ソラの初めての言葉回です。


力ではなく、感情のはじまりを描きました。

朝の光が、やわらかく差し込んでいた。


揺り籠の中で、ソラは目をぱちぱちと瞬かせている。


精霊が、いつものようにふわりと漂う。


ミナが隣で本を読んでいる。


カイは少し離れた場所で、光との距離を測っている。


穏やかな日常。


ソラが小さく声を上げた。


「あ……」


ルナが振り向く。


「今、なにか」


ハルも顔を上げる。


ソラは空を見ている。


手を伸ばす。


精霊が近づく。


だが暴れない。


優しく揺れる。


「……あい」


小さな、かすれた声。


ルナが息を止める。


「今……」


ハルが近づく。


「もう一回、言ってみろ」


無理にではない。


願うように。


ソラはハルを見る。


じっと見つめる。


そして。


「……あい」


今度は、少しはっきり。


精霊がふわりと光る。


暴走しない。


ただ、祝福のように。


ルナが静かに涙をこぼす。


「“あい”……?」


エリシアが微笑む。


「共鳴しています」


ミナが小さく言う。


「好きってこと……?」


ハルは言葉が出ない。


胸の奥が、静かに震える。


「誰に言ったんだ?」


ハルが聞く。


ソラは、ハルを見ている。


そして、ルナを見る。


精霊が二人の間で揺れる。


「あい」


三度目。


今度は、迷いなく。


レイナが笑う。


「最初の言葉がそれかよ」


リリアが目を細める。


「森らしいですね」


カイがそっと呟く。


「怖く、ない」


光が、怖くない。


言葉が、怖くない。


森は、優しい。


ハルはそっとソラを抱き上げる。


小さい。


軽い。


でも、確かに重い。


「……あい、か」


ルナが寄り添う。


「森が教えたのかしら」


エリシアが首を振る。


「森が感じたのでしょう」


丘の上。


ハルは空を見る。


ソラが胸の中で小さく笑う。


「あい」


その音は、森全体に広がるわけではない。


だが、確実に届く。


家族に。


仲間に。


この森に。


強さよりも先に。


凪よりも先に。


恐れよりも先に。


生まれた言葉。


精霊の森は、今日も甘い。


だがその甘さは、もう“選択”ではない。


受け継がれている。

最初の言葉は、森らしく。


派手な奇跡ではなく、静かな喜びを描きました。


ここからソラは、少しずつ自分の言葉を持ち始めます。


―― 月灯り庵

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