#17 <華焔> vs ベルガッセ――②
「なっ・・・・・・・!?」
祐太はとっさに防御態勢をとる。
その背後に未奈をかばいながら。
そして、祐太の平均的身長と同等の直径はあろうかという風撃をその身に受けた。
歯を食いしばり、全身に力を入れて、風撃を耐えきる。
祐太がそこで耐えられなければ、未奈もろとも吹っ飛んでいただろう。
「なんの・・・・・つもりだッ!」
祐太は肩で息をしながらも、ステイルを鋭く睨み、叫ぶ。
「祐太・・・・・・」
祐太の後ろから、困惑が混じった声がした。
所詮は汎用楽譜だ、さっきの風撃の余波で"縛"が砕けたのだろう。祐太の後ろには、揺らぐ瞳で彼を見つめる未奈がいた。
祐太は、未奈に一瞬視線を返し、そして再びステイルに向き直った。
「なんのつもり?そんなものは決まっている」
ステイルは、口元をわずかに笑みの形に歪めながら、告げた。
「九重未奈に埋め込まれた、特殊改変プログラム。俺の目的は最初からそれひとつだ」
「特殊改変プログラム・・・・・」
祐太は、オウム返しにその単語を呟く。
「そうだ。九重未奈に埋め込まれたそれは、本来不可能なはずの魔術複数保持をもたらす」
魔術複数保持――つまり、二つ以上の属性の魔術を扱えるようになる、ということだ。
そこまで思考して、祐太は一つの疑問を抱いた。
そしてそれは、この場にいる全員が抱いたであろう疑問だ。
「そのプログラムのことをどこで知ったんだ?」
祐太の知る限り、未奈とステイルは全く接点がなかった。
さらに言えば、未奈は護姫の隊に入ったのだから、そのようなプログラムがあれば護姫側が把握しているはずだ。
護姫である栗原綾が驚いているところを見ると、そんなプログラムは確認されなかったということだろう。
「ソースを喋るわけないだろう。そんなことより、お前ら全員倒してでも奪わせてもらうぞ」
「そんなことさせるかよ!」
「言ったはずだ、この場の全員を倒し手でもってな。そのためになら、ギルドの総戦力を躊躇なくぶつけるよ、俺は」
ステイルがそう言うのと同時に、術師が次々と転送してきた。
そうして集まったのは、祐太がよく知る面々、ギルド"ベルガッセ"総戦力――マスターであるステイル含めて45人の術師。
「このっ・・・・・!悪いな、ステイル。俺には、何よりも大切なもの・・・・・いや、人がいる。そいつを傷つけるっていうなら、俺はギルドを抜ける」
「好きにしろ。お前が敵にまわったところで、結果は変わらない」
祐太は、かつての仲間、そして今は敵となったギルドメンバーを見渡し、開戦の合図のようにその言葉を口にする。
「電子魔術、起動」