あるある
待つこと10分。
流石、数年前に開発され安全性も確認されたばかりの最新システム専用ゲーム。
脳内電波通信は、電磁波によって脳内に作られた仮想世界の中で自由に動き回れる夢のような技術ではあるものの、その容量はなんと1PB!
※キロ(K)→メガ(M)→ギガ(G)→テラ(T)→ペタ(P)
ここで言っても仕方がないことだが、ここ10年、処理速度や記憶媒体の進化は激しいものの、通信速度については全くと言ってよいほど追い付けていないため、どうしても苛立ちが募ってしまう。
「やっと33%。34、35……まだか。早く進めっ!」
今使っている通信環境は個人で持つには確実にオーバースペック……の筈。
1フレーム単位を争う廃人ゲーマーでもない限りは絶対に必要としないほど高価な代物だ。
「色々とメッチャ無理したんだからお前も頑張れ!」
しかし、どんなに時代が変わろうと、AIがどんなに進化をしようと、命令を与えない限りは機械は同調してくれない。
理由は簡単。
機械に自立機能を持たせるのは危険すぎるから。
「49、50。やっと半分か……」
ゆっくりとだが確実に進みつつあるダウンロードのゲージに同調するかの様に、高鳴り続ける鼓動と心の焦り。
入手できる最高の物を揃えて挑んではいるが、世界を探せば更に上を行く者は五万と居ることも知っているため、1分1秒が何時間にも感じてしまう。
「まだか、まだなのか?」
しかし機械は淡々と与えられた仕事を熟していくだけ。
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が、ここで奇跡が起こる。
「64、65、66……やっと三分の二か……って、うぉぉぉぉ!」
奇跡でも何でもなく、何時の時代であってもインストールやダウンロード中によく見る現象。
ダウンロードゲージの超加速。
ギュイーーーーーンと伸び、今までの遅さが嘘かの様に一気に100%へと到達する。
「キタコレ、マジか!」
画面に表示されるクレジット。
初めて目にするドラクエ3フルダイブのタイトル画面すらもそっち退け。
急いでマウスを手に取った俺は、光の速さで開始ボタンをクリック連打する。
実際は、現役時代の高橋名人の半分程度の速度だが、一度でいいのに何度も何度もクリックする。
今の俺なら、スイカは無理でも蜜柑くらいなら人差し指で割れそうだ。
ほどなくして、ブラックアウトした画面の中央にシンプルな文字が表示される。
【Congratulations‼】
次の一文を目にした俺は、震える体と暴れる鼓動を抑えつつ、無言で拳を握りしめる。
【参加資格を取得しました(9人目/9人中)】
たったの9人。
見事、宝くじの当選資格を自力で掴み取る事に成功した俺は……
【参加者順に登録しますので、そのまましばらくお待ち下さい】
自分は最後の参加者のため、時間がかかるだろうと思った俺は安心しきったせいもあってか、今この瞬間まで我慢し続けていた尿意が突如押し寄せてきたため、それを解消するために席を立ち、急いで一階へと降りて行った。
前置きは、もう少し続きます・・・