俺の名は……
単に用を足すだけだった。
直ぐに部屋に戻れる筈だった。
しかし世間は俺の都合で動いてはくれない。
先に入ってた親父がトイレに長居したり。
親父が出たあとメッチャ臭かったり。
換気扇が壊れてたり。
消臭剤が切れてたり。
消臭剤を取りに行く時間が勿体ないから我慢して入ったり。
よく見たら紙も無かったり。
結局はトイレットペーパーのついでに消臭剤も取りに行ったり。
その最中に、初詣に向かうご近所さんが代わる代わる新年の挨拶に来たり。
そのまま長話に付き合わされたり。
消臭剤の場所を母に聞いたら、新年早々「まだ食べてないのか」「洗い物が終わらないから早く食べろ」と怒鳴られたり。
親に監視されながら、冷えきった年越え蕎麦を、無理やり胃の中に流し込んだり。
アレコレしてたせいで尿意が無くなり、後々不安になりそうなほど少ししか出せなかったりと、散々な目に合った俺は、やっとの思いで部屋に戻ることに成功したのだが……
【キャラクター名を入力して下さい】
【(残り時間:7秒/30分】
【※時間を過ぎた場合、参加権を放棄したものとします】
残り7秒で何かを正しく入力するのは不可能と判断した俺は、今日まで色々と考え、考え、考えまくって決めた名前「零羽の越後屋十三世Jr」を諦め、適当にキーボードを叩いたのだが……
「ようこそ『ゆい』さん」
「……」
三本の指が触れたのは横に並んだ三つのキー。
「Y」「U」「I」
「『ちゅ』とか『ういお』とか、謎めいた記号だらけの変な名前にならなかっただけでもマシな方か……」
少しだけ肩を落とした俺は、気を取り直してモニターに目を移した。




