表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

教育

社会契約論前半はルソーで後半はロックのものを意識しています。

 一応補足として述べておくと、こう言った紆余曲折を経てこの世界に生まれ落ちた私には弟がいるのだ。ちなみ、攻略対象。

 いつかは私のもとを離れていくとなると感慨深い。もっとも、私のほうが離れていくのは先だろうけど。

 しかし、乙女ゲームの断罪イベントで、悪役側の兄とか弟とかが断罪する側に立つというのはよく見られるが、まったく理解ができない。

 前世で一人っ子だったせいか、弟に甘く、家族というつながりを強く感じているのは否定できない。

 また、そいつら(親兄弟)は止められる立場にあったのではないかと思ってしまうのだ。

 中国の思想の上で非常に重要な役割を担った儒教において家族という関係性が最も尊ばれたというのはよく知られた事実だ。

 孔子は家族という輪を国家にも当てはめ理想の社会を作ろうとしたのだが、西洋文明においては、こうした家族という重要性は薄まるが、あくまで思想的な面で、中華と比較した場合に過ぎない。


 むしろ、私は家族にすら断罪される彼らを非常に気の毒な存在と考えてしまう。

 家庭の中ですらここまでいがみ合っているのだ、それで、他人に優しくなんてできるはずもない。

 であるにもかかわらず、その家族が後ろ指を指してあざ笑うのはどうしても許しがたい。

 やがて家族に断罪される予定の私が言うんだから間違いない。


 こうした思いが浮かんだのは、単に、私の弟の地位が家族内において低いからだ。

 なんでも父が外で作った子らしい。私がまだ子供という事もあって周囲から詳しい話は教えてもらえない。

 それでも、ゲームの設定を知っているのでおおよそのことは理解できるのだ。


 私は誰かのことを可哀想と思うのは大嫌いだ。

 必然的にその人物を下に見るという行為だと思っているから。この世界には運命が存在し、神の下に位置するというのに、これ以上人が人を縛ってどうするというのだ。

 そのような道理はあっていいはずがない。


 だからこそ、私は彼に教育を施さねばならない。


 無知とは罪だ。だが、知ることができない環境にあってはそうも言ってられない。

 時として人は教育によって人を家畜として貶める。


 社会主義をみろ、世界的惨劇である文化大革命などはその代表例に違いない。

 

 技術力の向上に失敗し、批判をこうむった毛沢東が執り行ったナチズムを凌駕する大量虐殺。

 空前絶後の規模で行われたそれは、歴史の中において永遠と繰り返されてきた、国家による民衆の思想に介入の延長にしか過ぎない。

 キリスト教における魔女裁判や禁書目録。中国で始皇帝が執り行った焚書。ざっと挙げるだけできりがない。

 自分自身で考える事が出来るというのは、支配者側にとって不都合が生じることは珍しいことではない。 そのために、教育が制限されることも多い。


 しかし、逆説的に、逆らう意思があるのならば、支配下におかれずに、また、考える力があるのならば物事の善悪を判断できるということに他ならない。


 だからこそ、この子()にはしっかりと学んでほしい。

 自分の足でしっかりと立ってほしい物だ。

 

「社会契約論という考えを多分知らないだろう。でもね、とても面白い話なんだ」

「しゃかいけーやくろん?」


 昼下がり、弟が活用している粗末な部屋へと、時間が空いたらではあるが通うのがここ最近の日課の一つだ。

 ここでする話は子供にとって非常に難解な話だ。私はすぐに消え去る予定なのでできるだけ小難しい話をしているのだが、子供らしい感性からくる答えには時に私をもうならせるものがあるのだ。


「そう、社会契約論。この考えの中では人間という存在は本来自由な存在であるという前提で成り立っているんだ」

「じゆーって、なーに」

「そうだね。各個人が独立した存在であること、自分がやりたいことを自分がやりたいようにできる状態と言ったらいいかな」

「うん、わかった」


 相手が子供ということもあって、最初の表現から噛み砕いたものに変えたがどうやら分かってくれたらしい。


「でもね、社会の中で、この自由が脅かされてしまうことが実に多いんだ」

「それって、どんなときー」

「今の君だね。でもまぁ、気にしないほうがいい。だからこそ自分の身を守るためには他人と協力しなければならないのさ。各人が自分勝手に行動すれば、目も当てられない状況になるからね。わかったかな」

「う~んと、みんなできょうりょくすることがだいじだってことはしってる」

「ふむ、そうだね。と言ってもこの説自体いろんな人が時代時代で考えたものだから、いろいろと食い違いがあるんだ。たとえばロックの考えならば、社会契約は理性の法なんだよ」

「けいやくなのに、りせいってへん」

「フフ、確かにね。他人を侵害しないという理由はね、各人が持つ良心からくるんだ。弟よ、君だってやっていいことと悪いことくらいわかるだろう」

「うん、わかるよ」


 もっとも、私自身で踏みにじることになるから非常に心苦しい。


「そして、その理性からくる所有権を保護するために、つまり、自分の持ち物が他人に勝手にとられないようにするために法律が作られるべきなんだ」

「ようは、どろぼうさんはだめってこと」

「ちょっとちがうけど、今はその認識でも構わないさ。そしてこれからがこの説の肝なんだが、この自然権が上の立場の人間が保証しないと、それに対して抵抗することや、場合によっては革命を執り行うことを認めているんだ」

「う~んと、よくわかんない」

「ふむ、最終的にはここに落ち着いたか。まぁ、いいさ。要するに君は一人の人間なんだ。たとえ何があろうともね」


 だから、檻のの外へと羽ばたいて

もし、説に間違いがあればごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ