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#25 もう来るな



 痛む体に鞭をうち、翔はとある場所を目指し歩いていた。静かに倉庫を出た時ある一人の人物にメールを送り呼び出した。


(あの時から、その可能性はもちろん考えついてた。多分それは間違ってない。絢斗すら視野に入れて動いてただろう。だが確定的なことがわからなかった。今の今まで)


 その人物が浮かび上がったのは、ほんとに些細なことだった。だがそう考えれば今回のことも全てつじつまがあう。

 璃祢と顔を合わせなかった期間、翔はそこそこ内部事情に詳しそうな明星の不良に喧嘩を売りまくった。喧嘩してはとある情報を聞き出すのを繰り返していた。ようやく欲しい情報が手に入った矢先璃祢が攫われた。

 翔が動く前にその人物が先に行動を起こしたのだ。


 だがそれはこちらにとって好都合であった。もちろん璃祢を危険な目に遭わせた点で、素直にはよろこべないことになっているのだが。


 着いたのは倉庫から少し離れた住宅街にある公園だ。公園といっても遊具がほとんどなく、それによってなのか遊んでいる子供は見受けられない。そんな公園に既に呼び出した相手がいた。


 なにか電話しているようで、苛立った声が聞こえてくる。翔は一歩一歩その人物に近づいた。数メートルほどの距離になったところで相手は通話を終えた。


「随分イラついてんな」

「おっそいよ。ちょっとドジ踏んだだけ。で?俺に何か用?」

「気づかなかったぜ。まさかお前が俺らの情報を真野のやつに流してたとはな」

「は?」

「隆平も真っ青になるほどの情報通……ね。まさかお前中学時代は情報屋だったとは知らなかったわ、明星中学だったのもな」

「何……言ってんの?」


 あからさまに焦りの表情を浮かべるその人物は、それでもシラをきるつもりなのかなかなかぼろを出さない。


「いい加減諦めろよ。計画は失敗だろ?」

「ッ……はぁ?わけわかんないんだけど、何言ってんの?」

「お前だろ?あの倉庫に璃祢をさらわせたのは。でもまぁ……絢斗をよびだすにしちゃ生ぬるいもんがあったしな。あれにはマジ頭きてんだよね。いいかげんにしろよ」

「そっちこそいいかげんにしてよ。流石に俺でもキレるよ?ていうか、こんな話するために呼び出したんなら、もういい。俺行くとこあるから」

「どこにだ?わりぃが、俺の家にはもう来るな」

「な……なんで」

「真野!?」


 知らぬ間に現れた泰明は、なぜか翔の傍らに立ち止まった。ちらっと翔の顔を一瞥した泰明はそのまま前に視線を戻す。


「お前は確かに優れた情報屋だ。それは認める。だけど……結局お前は、俺の真の狙いを知ることはできなかったみてぇだけどな。つけあがんのもいい加減にしやがれ、美咲」


 鋭い睨みに、野中美咲は言葉を失った

 なにか言葉を発せようとするが、ただ口を餌を欲しがる鯉のようにするだけしかできなかった。美咲を呼び出した翔ですら今の状況が飲み込めないでいた。唯一泰明だけが変わらずにいた。


「言ったろ……欲しいもんは手に入れる。どんな手を使ってもってな」


 そういった泰明は、傍らに立っていた翔を自分の方に抱き寄せた。





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