#24 泣くんじゃねえよ
上着のポケットに手を突っ込みながら、絢斗はゆっくりと倉庫内を進んでいった。そして不良たちが固まっているそばまで来て立ち止まった。
「んで?俺に何か用か?」
そう言い放ち、絢斗は眼前の不良たちを睨む。その眼力にそこにいた不良たちは怯みあがった。数人の不良は知らず知らずのうちに後ずさったほどだ。
対する絢斗はそんな不良たちのメンツを見て、ここに来るまでの仮説が正しいものだったと確信した。
さっきまでの喧騒が嘘の如く、静まり返った倉庫内に一歩足を踏み出した絢斗の足音が響いた。徐々に璃祢達から離れていく不良達。
(俺ひとりだっつうのに、何ビビってやがんだろうな。一斉にかかってくれば勝てんじゃねーの。ま、所詮群れてる中に埋もれてるだけの奴らばっかだからな。……見事に知ってる顔いねーしな)
だがいつまでもこうしているわけにも行かないと、絢斗は渋々不良たちに向かっていった。
振るわれる拳に、不良たちは反射的に動き、再び倉庫内は喧騒に包まれた。だが先程までとは違い、たとえ未だ璃祢と翔がいるのにも関わらず、絢斗一人が圧倒していた。それはただ単純に実力の差と言えばそれまでなのだが。
先ほどの不良たちからの暴力のせいでダメージを負った翔に抱かれながら、璃祢は不良たちと喧嘩する絢斗の姿を見つめていた。
(やっぱり……絢斗先輩、強くてかっこいいです)
今まで怯えて涙すら浮かべていた璃祢の表情が自然に緩んだ。そんな表情を浮かべる璃祢の視線の先を真上から見ていた翔は、すべてを悟った。
(もう……手遅れ、なんだな……璃祢)
そっと翔は璃祢を抱きしめていた腕の力を抜き、徐々に璃祢から離れた。だがそのことに気づかないほど璃祢は絢斗の姿に夢中になっていた。離れて見て、璃祢には最初に殴られた時以外、どこにも外傷はなかった。それを見て、翔はホッと胸をなでおろした。
(好きでいるだけで……幸せだった……。なのに今は……そんな顔してるお前を見れてるだけで、幸せだよ……)
◆
それから明星の不良たちが逃げ出すのに、そう時間はかからなかった。絢斗は全くの無傷で、逃げていく不良たちを見送っいた。だが途中で飽きたのかぽつんと一人座り込んでいる璃祢の方に振り向くと、そばへと向かった。
璃祢の目の前にしゃがみこむと、璃祢の背中の方へと手を回し、縛られていた手を解放した。赤い痕がくっきりと残り痛々しい。
「一発やられたな」
「んっ……触っちゃダメです。ヒリヒリ痛いです」
「お前、また後先考えずになんか言ったんだろ。……もう大丈夫だから泣くんじゃねえよ」
「泣……いてなんかっ……うっく……ないで……ぅっ」
いつの間にか泣き出していたことが、信じられなかったようで自分の目元を拭い驚く璃祢。そんな璃祢を絢斗は自分の方に抱き寄せた。抱きしめられた温もりに安心したのか、璃祢の瞳からさらに涙が溢れだした。




