#23 楽しんでんじゃねーよ
明星の不良達の意識はすべて翔に向けられ、璃祢の存在はほぼ忘れ去られているも同然になっていた。未だ両手は縛られたまま、なんとか座っていた璃祢は目の前の喧嘩に、呆然としていた。
怒り任せに喧嘩のさなかにいる翔だったが、彼だって人間だ。さらに多勢を相手にしている今回は、いつもの喧嘩とは違い、体力の消耗が激しい。圧倒的な強さを見せていた翔の頬には殴られた跡が見られるようになり、体に受ける攻撃も徐々に増えてきていた。
(つか……どんだけいやがんだよ。うっぜぇな、くそ!!)
「チッ……――――っ!?」
(しまっ!?)
そろそろ限界に近いのか、翔の膝の力がガクリと抜けた。その瞬間を逃すほど相手も馬鹿ではなかったようで、一斉に翔に向かって拳を振り下ろしてくるのが見えた。
(やっべ……避けきれねぇ……!?)
「翔君!!」
「馬鹿っ璃祢!!」
目の前に飛び出してきた、小柄な体を翔はすぐに庇うように抱きしめた。おかげで振り下ろされていた拳すべてを食らう羽目になった。それでも小さく震える璃祢を離すまいと、痛みに耐えながらさらに抱きしめた。
(僕は……何をしてるんですか……)
思い返せば、何も考えずに行っていた。ただ璃祢から見ても翔の限界は歴然で、なんとかしないとと焦った末の行動だったのかもしれない。だが今となって、それはいかに愚かな行いだったかを思い知らされた。
翔の体を通じて伝わってくる攻撃の振動。苦痛から漏れる声。
なおもやまない攻撃に、璃祢の体はさらに恐怖に震え上がった。じわりじわりと涙が浮かびあがる。何もできない自分に、絶望すら感じる。
(なんで……どうしてこんなことになっちゃったんですか……。翔君がなにかしたんですか?絢斗先輩を呼びたかったんじゃなかったんですか?なんで?どうしてこんなやり方……)
「翔……く……」
小さな其の声は、周りの音にかき消されすぐそばにいる翔にすら届かない。
(翔君……っ。ごめんなさい……、僕何もできないです……。こんなふうに庇わなくていいです……だから……だから僕を置いて……逃げてください。お願いです……これ以上、痛い思いしないで……)
痛みがひどいのか、翔は無意識に歯を食いしばった。さらに璃祢を抱く腕に力を込める。その行動が、璃祢の心情を揺さぶる。
(僕は……翔くんに守ってもらう資格なんかないです。だって……今守ってくれてるのは翔君なのに……。……それなのに、浮かぶのが絢斗先輩だなんて。最低ですよね。ごめんなさい。こんなにも……大切に守ってくれてる、翔君の気持ちに……僕は応えることができないんです……)
今まで抱いてきた悩みが、璃祢のなかでキレイに晴れた瞬間だった。
「呼び出しやがって、出迎えもせず楽しんでんじゃねーよ」
その声を境に、翔たちに向かっていた攻撃がやんだ。
時間があったので投稿。




