捕まえました
「おいこらちょっと待てや」
「ひぃっ!?」
その後、私はミラを数日かけて捕まえた。というのも、ミラは私を徹底的に避けていて普通に話すことができなかったのだ。
なので、強行手段に出た。
私はアレキサンドライトを使ってミラを捜索。貴族令嬢にあるまじきダッシュでミラを校舎裏で追い詰めた。
「ごめんなさいごめんなさい。お願いだから許してください」
「そうよね。謝るのが筋ってもんよね。悪役令嬢だからって逃げていい訳じゃないからね」
「あくやく……れいじょう?」
「あれ違った? こうまでして徹底的に避けるなんて、貴女が転生者で私が悪役令嬢だと知っていたからではないの?」
「そ、そうです……」
やっぱりそうだった。私は震える彼女の横によっこいしょと腰を下ろす。
「ひどいことをするつもりはないから安心して。なんなら貴女の攻略を応援してもいい。……あんまり八方美人するのはどうかと思うけど。だからひとつだけ教えてくれない? 魔界への行き方を」
とりあえず交渉を試みると、ミラはカッと目を見開いた。震えていたのが嘘のように、こちらへ詰め寄って来る。
「え、魔界ルート行ったんですかっ!? 悪役令嬢なのに!?」
「あっはいソウミタイデス」
ミラが言うには、魔界ルートは悪役令嬢が邪魔をしてこない唯一のルートらしい。ミラはこのゲームのファンなのでしょう。頬に手を当ててうっとりと目を細める。
「ああ……いいですよねアルギュロス様……。あの怠惰に私も溺れてしまいたい……」
「そうかなぁ? なんか生きるの楽しく無さそうで」
「あ、それアルギュロス様に言っちゃ駄目ですよ。殺されてバッドエンドです」
「え、言っちゃった」
「なんで生きてるんですか」
「なんでだろうね?」
「むう。まあいいですけどぉ。魔界に行く方法ですかー。私はヒロイン補正で守護獣が元魔王なので、楽々パスなんですけど」
「ヒロイン補正スゲー」
ミラはうんうん悩んでいたが「あっ」と叫んでぴこんと人差し指を立てた。
「悪役令嬢本気モードなら行けるんじゃないでしょうか」
「なんじゃそりゃ」
「アレクサンドラがミラに罪を着せるシーンがあるんです。その方法がですね――」
ミラから詳細を聞いてふんふんへーと頷く。それにしても。
「貴女、私の後輩ちゃんみたいな性格してるわね」
「貴女もですよ。後輩ちゃんって言い方、佐野先輩みたいです」
「えっ」
「はい?」
なんとびっくり。ヒロインのミラは私に乙女ゲームを押しつけていた後輩のいずみちゃんだった。つまりはまあ……死んでしまったということなのだが、けろっとしたもので気にしておらず、第二の人生を謳歌する気満々だ。ちなみに彼女が目指しているのは大団円エンドなんだそうで、特定のキャラを攻略しようとは思っていないらしい。
「攻略じゃなくて恋愛は自由にしたいです!」
逞しいもんだ。お互いに。




