取材です
遅刻ギリギリという具合のところで、ルシアと合流した。なんとか普通に歩けるくらいまでになっていたはずだけれど、ルシアは半眼でアルギュロスを睨んでいたので彼女にはバレていそうだ。
レナス、ルシア、アルビレオについていき、辿り着いたのはアルバース領の北に広がる森の中の遺跡だ。私も何回か調査に来たことがある。
「レナス様、本当にありがとうございます」
道中、レナスに改めてお礼を言った。というのも『永遠の約束』について話を聞いたレナスは、参考になればと実際に『永遠の約束』をした人を探し出してアポを取ってくれたのだ。
「別に、いい。『永遠の約束』……に、ついては、おれも知りたかった」
丁度レナスが立ち止まったのでキョロキョロと辺りを見回す。が、人影はない。まだ来ていないのかと思いきや、アルギュロスが呟いた。
「なるほど、ルーツを使うのか」
「ルーツ?」
「魔族が作る異相空間。塒のようなものだ。アレクシアも私のルーツを見たことがあるだろう」
「もしかして、学園の裏庭に作ってたきらきらほわほわの森です?」
「きらきら……。まあそうだ。だがルーツは強い魔族にしか作れない。しかも遠方から道を繋ぐのはレナスという導き手がいてもかなり難しい」
ではこれから会う魔族はそれだけ強いということだ。背筋を伸ばして気合いを入れると、周囲の景色も切り替わる。辺りは真っ暗に、足元は草原に。そして目の前には淡く光る桜の木。それと……。
「やめい! くっつくな暑苦しい!」
「ごめん! でも好き!」
スパァン!
なにやら痴話喧嘩中の男女だった。扇で男性の頭を打ち付けた女性は、艶やかな黒髪を結い上げた着物に袴の美しい人。抱きついている男性はというと、対照的に柔らかそうな金髪を背で一つに括った美青年。並び立てば絵になりそうだけれど、行動が完全にコントというか。
と、女性の紫の瞳がこちらを捉えた。次の瞬間、閃いた扇がパシィン! といい音を立てて男性を打った。
「客人が来ておるじゃろ!?」
「え」
『ごほん』とルシアが大きめの咳払いをすると、二人はさっと離れた。男性はなにごともなかったかのようにニコニコしているが、女性は扇を開いて口元を隠しながらも男性を睨んでいた。
『ええと、ご紹介しますね。こちらはアルギュロス様とアレクサンドラ・アルバース公爵令嬢。そしてあちらがエルシオン・ウェルターナ卿と奥方のスバルさんです』
「はじめまして! よろしくお願いします」
元気なエルシオンさんだけれど、所作は非の打ち所のない貴族のものだった。私も倣って貴族として礼をする。アルギュロスとスバルさんはというと、黙ったままお互いの間でぱちんと魔力を爆ぜさせた。
「……なるほど。君はセイルの家系か」
「セイルは祖母の名じゃ。アルギュロス殿は祖母をご存知か」
「同僚、といったところか。だが良好な関係だったとは言い難い」
セイル、って確か魔王四天王の一人だよね? という視線をアルギュロスに向けると、僅かに頷いた。スバルさんは目を伏せる。
「そうか……。して、アレクサンドラ殿。少々アルギュロス殿をお借りしてもよろしいか?」
「どうぞ、と私が言うのも変ですけれど。アルギュロス様、お話をなさったらいかが?」
「……使い魔をちゃんと連れておけ」
ピーちゃんとはどうしても言いたくないらしい。アルギュロス、スバルさん、ルシアとアルビレオが少し離れた。いわゆる魔族グループだ。残ったのは私とエルシオンさん、レナス。
「……おれも、離れる。聞かれたくないだろうし」
と、レナスが離れようとすると、エルシオンさんが「えー?」と残念そうな声を上げた。
「僕はスバルのこと、みんなに話すの楽しいよ?」
「他人の、惚気を、聞く趣味はない……」
ばっさり言い捨てて、レナスは書き物を始めてしまった。もう、とばかりに頬を膨らませたエルシオンさんは、それじゃあと私に向き直る。
「しょうがないな。二人でお話しよっか。さっきも言った通り、僕は話すの好きだからなんでも訊いてね?」
「え、ええ……。でもなにから訊けばいいものか……
「じゃあおまかせコースでいい?」
「なんですかそれ……」
「僕がスバルとの馴れ初めとかべらべら~っと喋るから、疑問があったら君が質問していくって形式」
「では、それで……」
なんか有無を言わせぬ感じだった。エルシオンさんは満面の笑みで話し始めた。
エルシオンとスバルは大陸北のカディルワースという国に住んでます。というどうでもいい裏情報。




