実は………
「なるほど、『永遠の約束』の話を聞きましたか。それはおめでとうございます」
ミラは感慨深そうに頷いた。先程まで「うわぉあああん先輩よかったですぅ~っ!」と飛び付いてきてヒロイン失格なくらい顔面を台無しにしていたのだけれど。
ちなみにアルギュロスは私の悲鳴を聞いて飛んできたアントニオとシルヴァに連れて行かれた。よって現在ミラと二人きり。
「むむむ……、ありがとう? その反応だと、ゲームには出てきたのね。ちなみにどんな感じなの?」
「ふむぅ、詳しい描写はないんですよね。暗転して数ヶ月後になるんです。なんか儀式的なものとかあるんです?」
「いや、魔力を流すっていうんだけど……。なんていうか言葉にしにくいから手を貸してくれる?」
素直に差し出されたミラの手を握る。ゲート・アインの人は魔力操作が苦手なようだけれど、私は好奇心に任せてあれこれやったりアレキサンドライトに鍛えられたりしたので、割とできる方だ。深呼吸して、そっと魔力を流す。
「お、なんか温かいですね。ぽかぽかします」
「うん。それはいいのよ。……強めるわよ」
「はい。もっとぽかぽかします」
「………? なんか、気持ちよくなってこない?」
「特にしませんけど……あ」
ミラが察したようなのでやめる。ニヤニヤするかと思ったのだけれど、真顔で訊いてきた。
「さっきの悲鳴はこれですか」
私は静かに頷いた。みんな勘違いしているが、さっきの悲鳴は痛かったのではない。びっくりするほど気持ちよかったのだ。私昇天した? 生きてる? と思う程。温めた蜂蜜に浸かって電気をぴりぴり流されてる気分と言いますか。盆と正月とクリスマスと誕生日が一緒に来たような……私の貧弱な語彙ではもう例えようがない。
「たぶんですけど、魔力の相性の問題じゃないでしょうかね? 私はあんまり魔力の扱いは上手くないですけど……えい!」
ミラから魔力が流れてくる。私は勢いよく手を払ってしまった。
「冷たっ!?」
「あー、やっぱり。むふふー。いいこと教えてもらっちゃいました」
「ちょ、ちょっと! 私が恥ずかしい思いしただけじゃない!?」
「まあまあ。私がそんなお相手見つけた時は先輩に真っ先にお知らせしますから。……それで、魔力を流してどうするんです?」
脱線しかかった話が元に戻り、私はんんっと咳払いした。
「魔力を流して繋げる? 別の生物として生まれ直す? とかなんとか……。今は調整してるから気持ちいいけど、どっと魔力を流したら反発し合って死ぬかも的な……」
茶化してソフトに説明してみたけれど、ミラは渋面を作った。
「全身の骨を粉砕して組み直す、みたいな認識で合ってます?」
「あー、なんかそんくらい痛そうなイメージはしてる。だから慣らそうっていうアルギュロスの考えもわかるんだけど」
「気持ちいいってのはなんか危ない気もします」
その通り。にへらにへらする顔を見られるのはちょっと。けど痛いのもちょっと。うーんと考えていると、アントニオとシルヴァが戻ってきた。アルギュロスは、と視線を走らせると、シルヴァの手からなにか飛んだ。思わず受け止めると、私の手の中で白銀の小鳥が首を傾げた。
「か、可愛い……」
「姉上、アルギュロスはしばらく部屋に置いておくことにしました」
「代わりに使い魔を一匹作っていただきました。護衛兼通信兼慣れ用だとか」
なるほど確かにほわほわと温かい。高純度の魔力の塊であるみたいだ。アントニオは眉をハの字に曲げる。
「アルギュロスから大まかなことは聞きましたけど、大丈夫なのですか」
「あら、貴方はてっきり物凄く反対すると思っていたのですけれど」
アントニオは難しい顔のまま指を組み替えた。
「いえ……なんとなく予感はしてましたから。あんな怠惰な人を放っておける性格ではないでしょう。お節介で世話焼きで、はちゃめちゃで。なのにあまり自分を大切にしない人ですから、そこだけは心配していたのですが」
そこで一度言葉を切って、仕方ないなという風に笑う。
「僕は、姉上が幸せになればそれでいいです。滅多にない姉上のワガママですし、僕も協力しますよ」
「そんなこと言って、実は自分のこともちょっと考えて」
「そんなことありません!」
むきになるところが少し怪しいが、そこはあえて突っ込まないでおこう。さて、と改めて三人を見る。
「とんでもない夏期休暇になってしまいましたけれど、どうか愛想を尽かさずに一緒に楽しんでくださいね」
で、エスプリッサはどうなの?
って話ですが、そこはアレクシアは知らない部分なのでしばらく触れるつもりはありません。アンケート取ったら「生かすか殺すかは事情によりけり」の意見が多かったですね。難しいなぁ。




